[P-TK-05-2] 脳卒中後遺症者における生活空間と運動能力,日常生活活動能力および転倒関連自己効力感の関係
Keywords:脳卒中, 生活空間, 予防
【はじめに,目的】
生活空間の拡大は日常生活活動(ADL)能力の低下を予防するために重要であるが,脳卒中後遺症者の生活空間に関連する要因は明らかでない。脳卒中による様々な機能障害や活動制限により生活空間が狭小化している脳卒中後遺症者では,歩行速度やバランス課題の遂行能力といった運動能力やADL能力が生活空間と関連すると考えられる一方,転倒関連自己効力感が地域での活動や参加を抑制する可能性があることが報告されている。そこで本研究の目的は,脳卒中後遺症者の生活空間と運動能力,ADL能力および転倒関連自己効力感の関係を検討することとした。
【方法】
通所型介護サービスを利用する脳卒中後遺症者39名(年齢74.1±5.7歳,男性21名,女性18名,発症後74.6±64.9ヶ月)を対象とした。対象者は年齢が65歳以上で,脳卒中発症後6ヶ月以上が経過し,少なくとも屋内歩行が自立した者とした。また,指示の理解が困難な者,脳卒中以外の神経疾患や整形疾患による歩行障害を有する者,重篤な心疾患や呼吸器疾患を有するものは除外した。生活空間の指標としてLife-Space Assessment(LSA),運動能力の指標として最大歩行速度,Mini-Balance Evaluation Systems Test(Mini-BESTest),Timed Up and Go test(TUG),転倒関連自己効力感の指標としてFall Efficacy Scale International(FES-I),ADL能力の指標としてBarthel Index(BI)を評価,測定した。統計学的解析は,LSAと基本属性および各評価指標の関連を明らかにする目的でPearsonの相関係数もしくはSpearmanの順位相関係数を求めた。続いて,LSAを従属変数,単変量解析にてp<0.10であった変数を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行なった。有意水準は5%未満とした。
【結果】
LSAと最大歩行速度,Mini-BESTest,TUG,BIは有意な相関を認めた(p<0.01)。LSAと年齢(p=0.31),性別(p=0.15),診断名(p=0.18),麻痺側(p=0.27),発症後期間(p=0.82),FES-I(p=0.06)は有意な相関を認めなかった。重回帰分析の結果,LSAと関連する要因として最大歩行速度[β(標準化偏回帰係数)=0.465,p<0.01],BI(β=0.348,p=0.01),FES-I(β=-0.222,p=0.04)が抽出された。回帰式はLSA=-7.102+18.823×最大歩行速度+0.539×BI-0.283×FES-I(一元配置分散分析p<0.01,調整済み決定係数R2=0.589)であった。
【結論】
本研究の結果から,脳卒中後遺症者では歩行速度やADL能力が高いことが生活空間の拡大と関連し,転倒関連自己効力感が低いことが生活空間の狭小化と関連する可能性が示された。また,得られた回帰式の適合性が高いことから,脳卒中後遺症者において,歩行速度,ADL能力,転倒関連自己効力感が生活空間を決定づける重要な要因であることが示唆された。
生活空間の拡大は日常生活活動(ADL)能力の低下を予防するために重要であるが,脳卒中後遺症者の生活空間に関連する要因は明らかでない。脳卒中による様々な機能障害や活動制限により生活空間が狭小化している脳卒中後遺症者では,歩行速度やバランス課題の遂行能力といった運動能力やADL能力が生活空間と関連すると考えられる一方,転倒関連自己効力感が地域での活動や参加を抑制する可能性があることが報告されている。そこで本研究の目的は,脳卒中後遺症者の生活空間と運動能力,ADL能力および転倒関連自己効力感の関係を検討することとした。
【方法】
通所型介護サービスを利用する脳卒中後遺症者39名(年齢74.1±5.7歳,男性21名,女性18名,発症後74.6±64.9ヶ月)を対象とした。対象者は年齢が65歳以上で,脳卒中発症後6ヶ月以上が経過し,少なくとも屋内歩行が自立した者とした。また,指示の理解が困難な者,脳卒中以外の神経疾患や整形疾患による歩行障害を有する者,重篤な心疾患や呼吸器疾患を有するものは除外した。生活空間の指標としてLife-Space Assessment(LSA),運動能力の指標として最大歩行速度,Mini-Balance Evaluation Systems Test(Mini-BESTest),Timed Up and Go test(TUG),転倒関連自己効力感の指標としてFall Efficacy Scale International(FES-I),ADL能力の指標としてBarthel Index(BI)を評価,測定した。統計学的解析は,LSAと基本属性および各評価指標の関連を明らかにする目的でPearsonの相関係数もしくはSpearmanの順位相関係数を求めた。続いて,LSAを従属変数,単変量解析にてp<0.10であった変数を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行なった。有意水準は5%未満とした。
【結果】
LSAと最大歩行速度,Mini-BESTest,TUG,BIは有意な相関を認めた(p<0.01)。LSAと年齢(p=0.31),性別(p=0.15),診断名(p=0.18),麻痺側(p=0.27),発症後期間(p=0.82),FES-I(p=0.06)は有意な相関を認めなかった。重回帰分析の結果,LSAと関連する要因として最大歩行速度[β(標準化偏回帰係数)=0.465,p<0.01],BI(β=0.348,p=0.01),FES-I(β=-0.222,p=0.04)が抽出された。回帰式はLSA=-7.102+18.823×最大歩行速度+0.539×BI-0.283×FES-I(一元配置分散分析p<0.01,調整済み決定係数R2=0.589)であった。
【結論】
本研究の結果から,脳卒中後遺症者では歩行速度やADL能力が高いことが生活空間の拡大と関連し,転倒関連自己効力感が低いことが生活空間の狭小化と関連する可能性が示された。また,得られた回帰式の適合性が高いことから,脳卒中後遺症者において,歩行速度,ADL能力,転倒関連自己効力感が生活空間を決定づける重要な要因であることが示唆された。