第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-06] ポスター(地域)P06

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-06-1] 在宅高齢者に対するBerg Balance Scaleの有用性に関する検討
―生活機能との関連性に着目して―

久野 智史1, 坂野 裕洋2 (1.医療法人利靖会前原訪問看護・リハビリステーション豊明, 2.日本福祉大学健康科学部)

キーワード:在宅高齢者, Berg Balance Scale, 生活機能

【はじめに】

Berg Balance Scale(以下,BBS)は,日常生活と関連したバランス機能を必要とする14動作について,その遂行状況を5段階で評価する評価表であり,高齢者のバランス機能評価を目的に1989年にBerg Kらによって開発され,国際的に用いられている評価表のひとつである。BBSと生活機能に関する先行研究では,BBS得点と日常生活能力や生活範囲の広がりとの間に相関が認められること,BBS得点が自己効力感や転倒恐怖感と関連していることなどが報告されている。しかしながら,BBSの各動作項目と在宅高齢者の自己効力感や転倒恐怖感,日常生活能力や活動範囲といった生活機能に関わる諸要因との関連性やその貢献度については明らかでない。そこで本研究では,在宅高齢者に対するBBSの有用性について明らかにすることを目的に,生活機能との関連性に着目して検討した。

【方法】

対象は当事業所の訪問リハビリテーション利用者のうち,調査協力の得られた56名(平均年齢77.3±9.8歳)である。評価項目はBBS,FIM,GSES,LSA,MFESとし,バランス機能,日常生活(セルフケア,排泄,移乗,移動)の機能的自立度,自己効力感,生活範囲,転倒恐怖感を評価した。統計学的解析は,BBSの各項目の得点とFIM,GSES,LSA,MFESの得点の相関をSpearmanの順位相関係数,FIM,GSES,LSA,MFESの得点を従属変数としBBSの各項目の得点を独立変数として重回帰分析を行った。なお,有意水準は5%未満とした。

【結果】

BBS項目の「立ち上がり」「着座」「移乗」「閉脚立位」「リーチ動作」「床から物を拾う」「後ろを振り向く」「360°回転」「段差踏み換え」「継ぎ足立位」「片足立位」はセルフケア,排泄,移乗,移動,LSA,MFESと有意な相関を認めた。また,「立位保持」「閉眼立位」はセルフケア,排泄,移乗,移動,MFESと有意な相関を認めた。重回帰分析では,セルフケアを従属変数としBBS各項目を独立変数として抽出された項目は「閉眼立位」と「移乗」,排泄を従属変数として抽出された項目は「閉眼立位」「移乗」「立ち上がり」「着座」,移乗を従属変数として抽出された項目は「床から物を拾う」「移乗」「立位保持」,移動を従属変数として抽出された項目は「移乗」と「片脚立位」,LSAを従属変数として抽出された項目は「片脚立位」,MFESを従属変数として抽出された項目は「360°回転」と「着座」であった。

【結論】

本研究結果から,BBSは日常生活における機能的自立度や活動範囲といった生活機能,および自己効力感や転倒恐怖感といった日常生活や生活の質と関連する自己認知的な側面と関連しており,特にBBS項目の「移乗」や「閉眼立位」は在宅生活における機能的自立度を評価するうえで有益な情報となりうる可能性が示唆される。