The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-06] ポスター(地域)P06

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-06-2] 14年ぶりに主目標を達成した高齢腰部脊柱管狭窄症患者の理学療法の経験

高岡 克宜, 田野 聡, 田岡 祐二 (橋本病院)

Keywords:主目標, 通所リハビリテーション, 腰部脊柱管狭窄症

【はじめに,目的】

腰部脊柱管狭窄症Lumber spiral Canal Stenosis(以下,LCS)は腰椎において神経組織と血管のスペースが減少することにより殿部痛や下肢痛等がみられる症候群であり,関与する因子によって症状が増悪したり軽快し,運動や特定の体位により神経性跛行が惹起される(North American Spine Society)。また50歳以上のLCS60例を対象としたRCT研究において殿部痛や下肢痛の緩和に理学療法(以下,PT)が有効であることを報告している(Whitman JM, et al.)。一方で,高齢LCS患者や様々な症状の改善に確立されたPTは未だないのが現状である。そこで今回,高齢LCS患者の主目標を達成するためにPTを行った結果,良好な結果が得られたので報告する。

【方法】

対象は80代男性,独居。診断名はLCS(保存療法),変形性腰椎症。既往は腹部大動脈瘤ステントグラフト術施行(2007年)。キーパーソンは姪。ADLは入浴動作のみに介助が必要で,IADLは掃除や洗濯,調理等に週3回程度の姪や訪問介護士の訪問にて対応している。社会参加としては55年間バレエ研究所の主宰を務めており月に3回程度のレッスン指導を行っていた。経過として2008年より当院通所リハビリテーション(以下,デイケア)を利用していたが,徐々に腰痛等の悪化を訴えることが多く,特に2014年2月頃から立ち上がり時の腰痛による活動制限やレッスンへの参加に支障を来たすことが多くなってきたため,本人と相談しレッスン指導の再開と以前から熱望していた14年ぶりの舞台への出演を主目標としたリハビリテーションを展開することとした。PT評価としてはL4からS1領域までの神経学的所見の一致はなく,足背動脈や後脛骨動脈の触知も可能であった。しかしながらLCSサポートツールは12点,5回立ち座りテスト(以下,5CST)30秒,動作時Numeric Rating Scale(以下,NRS)は6/10と高値を示していた。そこで主目標に対するmain outcomeを5CSTとNRSとし立ち上がり動作改善に焦点をあてた20分間のPTを週2回の頻度で4か月間実施した。

【結果】

PT直後の5CSTは20秒,1か月後19秒,2か月後18秒,3か月後18秒,4か月後16秒となった。また治療直後のNRSは0/10となり,治療を継続していた4か月間はほぼ腰痛の出現を留めることが可能であった。さらにPT1か月後にはレッスン再開,4か月後には主目標を達成することが可能であった。

【結論】

高齢LCS患者の立ち上がり動作時の腰痛改善には,動作改善に焦点をあてたPTを一定期間継続して実施することが効果的であると示唆された。近年,デイケアにおいては活動,参加に着目したPTが必要であるとされ,臨床推論の中で可能な限りその要因である身体,環境,個人因子等を把握することが極めて重要である。今後はいかに個々の症例に応じたオーダーメイド化されたPTを提供できるかを考える必要がある。