[P-TK-06-3] Honda製歩行アシストがデイサービス利用者の歩行機能にもたらす効果について
Keywords:歩行アシスト, デイサービス, 歩行機能
【はじめに,目的】
Honda製歩行アシスト(以下,歩行アシストと略)は,対象者の股関節の屈曲・伸展運動をアシストするトルクを発生させることで,理想的な歩行に誘導する装着型装置である。
近年,脳血管疾患後片麻痺患者の歩行再建など,治療を目的とした歩行アシストに関する報告は散見されるが,デイサービス利用者を対象に介入した報告はみられない。
本研究の目的は,歩行アシストがデイサービス利用者の歩行機能に与える効果について検証することである。
【方法】
対象は,当デイサービス利用者で,著しい認知機能の低下,歩行に影響を及ぼすような麻痺・整形外科的な問題を有さず,平地歩行を見守りで連続6分間行える7名(平均年齢86.9±6.3歳,女性7名)とした。
方法は,歩行アシストを装着して1回20分の歩行練習を週1~2回,計20回実施した。
評価は,介入前・20回の介入後に,アシストトルクを発生していない状態で10m歩行テストおよび6分間歩行テストを施行し,最大歩行速度,歩幅,歩行率(歩数/分),6分間歩行距離を検討項目として抽出した。
また,介入後に,歩行アシストトレーニングについての感想を自由記載方法で調査した。
統計学的解析は,対応のあるt検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
最大歩行速度は介入前1.1±0.3m/秒から介入後1.4±0.2m/秒へ,歩幅は介入前49.7±9.3cmから介入後59.0±7.3cmへと有意に向上した(p<0.01)。6分間歩行距離は介入前315.7±73.3mから介入後378.6±37.2mへと有意に向上した(p<0.05)。一方,歩行率には有意差はみられなかった。
介入後に行ったアンケート調査では,「歩くことに自信がついた」「若い頃の歩き方に戻ったみたい」など,対象者自身が歩行機能の向上を実感していたほか,「外出の機会が増えた」など,生活に変化が生じていると答えた対象者もいた。
【結論】
歩行アシストは歩行比(歩幅/歩行率)を増すように,すなわち歩行率より歩幅を大きく誘導することで歩行速度を向上させる特徴がある。本研究において,歩行速度が向上した主たる要因は,歩行率ではなく,有意に拡大した歩幅の影響であることが示唆され,今回の結果は機器の特徴を反映した結果であったといえる。
また,これまでに脳卒中片麻痺患者や,転倒歴のある高齢者を対象に歩行アシストが使用され,歩行速度が向上することが報告されている。今回,デイサービス利用者を対象にした介入においても,先行研究と同様の結果が得られた。これらのことから,生活期にあるデイサービス利用者にとっても,歩行機能を改善し,生活範囲を広げる手段と成り得る効果的な介入方法であることが示唆された。
今後は対照群を設定し,より大規模標本による無作為化比較試験を行っていくことで,理学療法の発展に寄与するものと思われる。
Honda製歩行アシスト(以下,歩行アシストと略)は,対象者の股関節の屈曲・伸展運動をアシストするトルクを発生させることで,理想的な歩行に誘導する装着型装置である。
近年,脳血管疾患後片麻痺患者の歩行再建など,治療を目的とした歩行アシストに関する報告は散見されるが,デイサービス利用者を対象に介入した報告はみられない。
本研究の目的は,歩行アシストがデイサービス利用者の歩行機能に与える効果について検証することである。
【方法】
対象は,当デイサービス利用者で,著しい認知機能の低下,歩行に影響を及ぼすような麻痺・整形外科的な問題を有さず,平地歩行を見守りで連続6分間行える7名(平均年齢86.9±6.3歳,女性7名)とした。
方法は,歩行アシストを装着して1回20分の歩行練習を週1~2回,計20回実施した。
評価は,介入前・20回の介入後に,アシストトルクを発生していない状態で10m歩行テストおよび6分間歩行テストを施行し,最大歩行速度,歩幅,歩行率(歩数/分),6分間歩行距離を検討項目として抽出した。
また,介入後に,歩行アシストトレーニングについての感想を自由記載方法で調査した。
統計学的解析は,対応のあるt検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
最大歩行速度は介入前1.1±0.3m/秒から介入後1.4±0.2m/秒へ,歩幅は介入前49.7±9.3cmから介入後59.0±7.3cmへと有意に向上した(p<0.01)。6分間歩行距離は介入前315.7±73.3mから介入後378.6±37.2mへと有意に向上した(p<0.05)。一方,歩行率には有意差はみられなかった。
介入後に行ったアンケート調査では,「歩くことに自信がついた」「若い頃の歩き方に戻ったみたい」など,対象者自身が歩行機能の向上を実感していたほか,「外出の機会が増えた」など,生活に変化が生じていると答えた対象者もいた。
【結論】
歩行アシストは歩行比(歩幅/歩行率)を増すように,すなわち歩行率より歩幅を大きく誘導することで歩行速度を向上させる特徴がある。本研究において,歩行速度が向上した主たる要因は,歩行率ではなく,有意に拡大した歩幅の影響であることが示唆され,今回の結果は機器の特徴を反映した結果であったといえる。
また,これまでに脳卒中片麻痺患者や,転倒歴のある高齢者を対象に歩行アシストが使用され,歩行速度が向上することが報告されている。今回,デイサービス利用者を対象にした介入においても,先行研究と同様の結果が得られた。これらのことから,生活期にあるデイサービス利用者にとっても,歩行機能を改善し,生活範囲を広げる手段と成り得る効果的な介入方法であることが示唆された。
今後は対照群を設定し,より大規模標本による無作為化比較試験を行っていくことで,理学療法の発展に寄与するものと思われる。