[P-TK-07-1] 回復期リハビリテーションにおいて理学療法士・作業療法士が認識する脳卒中介護者の介護負担感の要因とその対応策:半構造化面接法を用いた質的研究
Keywords:介護うつ, 家族介護者, テーマ分析
【はじめに,目的】
脳卒中者を介護する家族(家族介護者)の介護負担感に関連する主な要因は,主に介護の協力・相談相手の乏しさ,将来への不安といった身体的・精神的要因である(杉田ら,理学療法科学,2016)。しかし,理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の介護負担感に対する認識や介入の意思決定がそのような先行研究の証拠を元にしているか不明である。そこで本研究では,脳卒中者の家族介護者について介護負担感の要因に対するPT・OTの認識と,その要因に対する対応策について調査することとした。
【方法】
対象は,回復期リハビリテーション病棟に所属するPT・OT 16名(PT・OT各8名,平均経験年数5.8年,範囲2-11年)とし,事前に作成したインタビューガイドに沿って半構造化面接を行った。面接の内容は,1)家族介護者の介護負担感が強くなると感じた脳卒中患者の特徴,2)退院後に家族介護者が介護負担を感じる状況,3)介護負担感を軽減させるために行っている対応策の3点とし,目的とする内容把握の聴取に努めた。なお,面接は個室で個別に行い,聴取した内容は,ICレコーダー(ICD-PX440;SONY製)にて録音した。
得られたデータについて,帰納的テーマ分析を行った。まず,録音した音声から逐語録を作成した。逐語録から介護負担感の要因と,介護負担感への対応策に関する語句を抽出し,コードを割り当てた。次に,類似したコードをまとめ一次カテゴリを作成した。さらに一次カテゴリのうち類似したものをまとめ,二次カテゴリを作成した。分析は,2名の医療者が独立して行い,妥当性の担保に努めた。2名の意見が一致しなかった場合は,第三者を含む医療者4名のディスカッションを踏まえ,カテゴリを決定した。なお,分析はインタビュー実施毎に行い,カテゴリが理論的飽和に達するまで行った。
【結果】
データを分析した結果,PT・OTが挙げた介護負担感の要因は,「身体的な介助量」「入院中と在宅生活での能力の差」「介護者に合わせた家族指導」などの身体的要因と「介護者への必要以上の依存」が抽出された。身体的要因の対応策として,「福祉用具の提案」,「在宅を想定したリハビリテーション」,「レスパイトケアの情報提供」が挙げられたが,「介護者への必要以上の依存」への対応策は抽出されなかった。
【結論】
PT・OTは,介護負担感に関して身体的な介助量に着目し,介助方法や福祉サービスの情報提供を行っていた。先行研究では介護負担感と日常生活能力の関連については一定の見解がなく,家族介護者に相談相手がいないこと,不安といった精神状態と強く関連していることが示されている(杉田ら,理学療法科学,2016)。つまり,PT・OTと脳卒中者の家族介護者には,介護負担感に関する認識と対応策に乖離がある可能性が示唆された。ただし,本研究デザインは質的研究を用いており量的な側面の把握に限界があるため,今後の課題としたい。
脳卒中者を介護する家族(家族介護者)の介護負担感に関連する主な要因は,主に介護の協力・相談相手の乏しさ,将来への不安といった身体的・精神的要因である(杉田ら,理学療法科学,2016)。しかし,理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の介護負担感に対する認識や介入の意思決定がそのような先行研究の証拠を元にしているか不明である。そこで本研究では,脳卒中者の家族介護者について介護負担感の要因に対するPT・OTの認識と,その要因に対する対応策について調査することとした。
【方法】
対象は,回復期リハビリテーション病棟に所属するPT・OT 16名(PT・OT各8名,平均経験年数5.8年,範囲2-11年)とし,事前に作成したインタビューガイドに沿って半構造化面接を行った。面接の内容は,1)家族介護者の介護負担感が強くなると感じた脳卒中患者の特徴,2)退院後に家族介護者が介護負担を感じる状況,3)介護負担感を軽減させるために行っている対応策の3点とし,目的とする内容把握の聴取に努めた。なお,面接は個室で個別に行い,聴取した内容は,ICレコーダー(ICD-PX440;SONY製)にて録音した。
得られたデータについて,帰納的テーマ分析を行った。まず,録音した音声から逐語録を作成した。逐語録から介護負担感の要因と,介護負担感への対応策に関する語句を抽出し,コードを割り当てた。次に,類似したコードをまとめ一次カテゴリを作成した。さらに一次カテゴリのうち類似したものをまとめ,二次カテゴリを作成した。分析は,2名の医療者が独立して行い,妥当性の担保に努めた。2名の意見が一致しなかった場合は,第三者を含む医療者4名のディスカッションを踏まえ,カテゴリを決定した。なお,分析はインタビュー実施毎に行い,カテゴリが理論的飽和に達するまで行った。
【結果】
データを分析した結果,PT・OTが挙げた介護負担感の要因は,「身体的な介助量」「入院中と在宅生活での能力の差」「介護者に合わせた家族指導」などの身体的要因と「介護者への必要以上の依存」が抽出された。身体的要因の対応策として,「福祉用具の提案」,「在宅を想定したリハビリテーション」,「レスパイトケアの情報提供」が挙げられたが,「介護者への必要以上の依存」への対応策は抽出されなかった。
【結論】
PT・OTは,介護負担感に関して身体的な介助量に着目し,介助方法や福祉サービスの情報提供を行っていた。先行研究では介護負担感と日常生活能力の関連については一定の見解がなく,家族介護者に相談相手がいないこと,不安といった精神状態と強く関連していることが示されている(杉田ら,理学療法科学,2016)。つまり,PT・OTと脳卒中者の家族介護者には,介護負担感に関する認識と対応策に乖離がある可能性が示唆された。ただし,本研究デザインは質的研究を用いており量的な側面の把握に限界があるため,今後の課題としたい。