第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-08] ポスター(地域)P08

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-08-1] 退院後の家屋改修フォローアップ調査の新たな取り組み
―人工膝関節全置換術後の症例を通して学んだこと―

安藤 可織1, 志摩 雅昭1, 竹原 典子1, 宮下 広大1, 廣川 晴美2 (1.独立行政法人国立病院機構岡山市立金川病院, 2.独立行政法人国立病院機構岡山医療センター)

キーワード:家屋改修, 退院後フォローアップ調査, 地域連携

【はじめに,目的】



家屋評価は退院先での生活を見据えた家屋改修に対する提案や指導に不可欠である。しかし,退院後に家屋改修の適正を確認することはできていない。当院では2016年4月より,入院中に家屋調査を行い同意が得られた症例に対して退院1~3週間後に担当PT/OTと看護師,MSW,ケアマネージャーのチームで再度自宅に訪問し,生活状況の把握や家屋改修の適正を確認するフォローアップ調査を開始した。今回,フォローアップ調査を行い,反省すべき事例があったので報告する。

【方法】



症例は70歳代,男性,身長156.3cm,体重55.7kg。介護度は要支援1,軽度認知症を有するものの,入院前のADLは自立,独歩で散歩及び畑仕事等を行っていた。今回,他病院で左変性性膝関節症に対して左人工膝関節全置換術を施行し,術後12病日に当院へ転院し,リハビリを開始した。介入当初,左膝可動域屈曲135°,伸展-15°,大腿四頭筋力MMT4,FIM85点,杖歩行速度は極めて遅く,体幹の左右への動揺がみられた。入院時の地域カンファレンスで自宅退院希望の確認を行い,術後32日目に家屋調査及び動作確認を実施した。指導内容及び家屋改修は,現在利用している段差が多くある屋外トイレから新たに手摺りを設置した屋内トイレの利用に変更し,勝手口と風呂場と脱衣所に手摺りと段差スロープを設置した。田畑に行くまでの道のりに足場の悪い段差が多数あり,畑仕事は行わないよう指導した。家屋改修終了し術後58日目に自宅退院した。退院時の評価では膝伸展可動域―5°,FIM100点まで改善しているものの,動作能力は2本杖使用でTUG40秒,10m歩行44秒と時間を要する状態であった。そして,退院後18日目に再び自宅を訪問し生活状況及び動作確認を行った。

【結果】



フォローアップ調査では入浴や勝手口の出入りなどは設置した手すりを使用し問題なく経過していた。しかし,段差もない廊下に2か所出血痕を発見し転倒したのではないかと予測した。トイレでは日中は住宅改修を行っていない屋外トイレを使用していた。また,田畑には行かないよう指導していたが,毎日田畑にいっていた。

【結論】



今回,退院後のフォローアップ調査を行うことで退院後も入院前の生活を継続していたことが判明した。このように生活スタイルを変更することが難しい場合,入院前の生活を考慮した上での安全な環境設定を構築する必要があった。家屋改修フォローアップ調査は,その適正を確認し,不足していた要素を知ることができると共に地域連携を築き,地域全体のサービス向上に繋がると考える。