The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-08] ポスター(地域)P08

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-08-4] ADL維持向上等体制加算からみた急性期リハビリテーションの実施促進効果
―診療報酬からの分析―

江口 雅彦1, 黒澤 和生2 (1.国際医療福祉大学福岡保健医療学部, 2.国際医療福祉大学小田原保健医療学部)

Keywords:ADL維持向上等体制加算, 急性期リハビリテーション, 診療報酬

【はじめに】

平成26年度の診療報酬改定で,急性期病棟におけるリハビリテーション(以下リハ)専門職の人員配置に対する評価として,ADL維持向上等体制加算(25点)が新設された。ADL維持向上等体制加算の目的は,入院患者のADLの維持・向上等を図るため,病棟における定期的なADL評価,ADLの維持・向上等を目的とした指導,患者・家族への情報提供,カンファレンスの開催などであり,急性期リハの重要性に対する評価といえる。また,平成28年度の診療報酬改定で,その評価が25点から80点へ大幅な増点が行われ,急性期リハの実施促進が診療報酬制度の運用によって推し進められている。本研究の目的は,ADL維持向上等体制加算が新設され,急性期リハ実施促進策が取られているものの,依然として届出施設数は限られていることから,その要因について診療報酬の面から分析することである。

【方法】

ADL維持向上等体制加算の算定状況については,厚生労働省「社会医療診療行為別統計(各年)」を用いて算出した。また,ADL維持向上等体制加算を算定しない理由として「減収となる」「マンパワー不足」などがあげられており[日本理学療法士協会(2014)],診療報酬面からの分析も行った。

【結果】

ADL維持向上等体制加算の算定回数は,平成26年度が84,185回(約210万点),平成27年度が145,293回(約363万点)であり,算定回数は1年で1.73倍増加した。一方,入院におけるリハ関連診療費全体(7,234億)に占める割合は平成27年度においてもわずか0.005%に過ぎなかった。現在,ADL維持向上等体制加算は患者1人につき1日80点であるから,50床規模の病棟で仮に全ての患者に算定したとすると,週28,000点となる。しかし,300床規模の医療機関でのリハ実施率は28.15%[民医連(2012)]であり,その数値を算定率にすると,週7,840点となった。

【結論】

病棟専属の理学療法士を配置した場合の効果については,ADLの早期回復,入院日数の短縮など,その効果がすでに報告されている[平田ほか(2010),平野・加藤(2015)]。急性期リハの評価であるADL維持向上等体制加算の新設は,医療機関に急性期リハの実施を促すインセンティブを与えるものである。しかしながら,算定要件の問題や理学療法士1人が1週間あたり算定可能な点数が疾患別リハ(心大血管リハ30,240点,脳血管リハ34,560点など ※早期リハ加算,初期加算含む)と比較すると大幅に低いことから,その届出医療機関数は32(2014年7月)とごく一部の医療機関に限られている。今後,さらに急性期からのリハを充実・促進させる観点から,急性期病棟においても休日におけるリハ実施体制など,質や密度の充実を図っている届出医療機関については,ADL維持向上等体制加算の評価を引き上げ,急性期リハの充実をさらに促す施策を早急に検討する必要があろう。