[P-TK-09-4] 決して「維持・慢性」期ではない老健リハビリテーション
~介入時間・内容の変更で長期間身体機能の変化を認めなかった入所者が機能改善した症例より~
Keywords:介護老人保健施設, 維持期, 慢性期
【はじめに,目的】
介護老人保健施設(以下老健)にてセラピスト増員によりリハビリテーション(以下リハビリ)の介入時間・内容の変更が可能となり,入所から2年半以上身体機能の変化を認めなかった入所者が機能改善した症例を経験した。維持・慢性期とされる老健だが,介入方法の量と質が確保できれば決して「維持・慢性」ではないと考える。
【方法】
50歳代男性,H24年1月クモ膜下出血,H24年1月,同年8月多発性脳動脈瘤クリッピング術,H24年12月入所,左麻痺StageII-II-II,高次脳機能障害,車いす生活,円背,仙骨座り,頚部右側屈・体幹左傾斜し自己修正や体幹回旋困難,麻痺側及び非麻痺側上下肢の筋緊張亢進に伴い麻痺側屈曲パターン拘縮を呈し他動的に伸展困難,両側股関節屈曲位拘縮,起立移乗時に麻痺側下肢の接地困難でバランス不良かつ動作性急。入所~H27年8月の間に転倒4回。
セラピスト増員によるリハビリ介入方法の変更(H27年9月~);介入時間:最低20分→1時間以上(週2回は変更なし),介入環境:車いす座位→プラットホーム・ティルトテーブルも使用,介入内容:①頚部・体幹・非麻痺側への重点的アプローチ ②ティルトテーブルによる体幹へのアプローチ・麻痺側荷重位での正しいアライメントの経験 ③短下肢装具使用
【結果】
変更後約6か月で身体各所のROM拡大傾向を認め,約1年後に枕を使用せず頭部接地可能なまで円背が改善,骨盤回旋の自動運動やブリッジ運動,頚部体幹アライメントの自己修正が可能,麻痺側上下肢及び両股関節伸展ROM拡大,下肢StageIIIに変化,座位・立位姿勢改善,起立移乗時に麻痺側下肢の接地可能,動作性急が軽減,短下肢装具で4点杖歩行練習が可能。変更後の転倒なし。
【結論】
維持期は廃用部分にアプローチすれば機能変化する可能性が非常に高いと思われる。今回は廃用を起こしていた頚部・体幹・非麻痺側への介入,ティルトテーブルや下肢装具の使用により機能改善を認めたと考える。当症例は入院中に実用歩行困難と評価され下肢装具は作製されなかった。維持期での機能改善のためには実用歩行の有無に関わらず入院中の下肢装具作製が望まれる。
施設や在宅等は「維持・慢性」期と呼ばれ「それ以上の回復がなく,維持が目標」という認識があるように思われる。また老健は集団生活であり,マンパワーの量でADLやQOLが制限される事もあり,あえて機能回復が図られない場合も経験する。そしてセラピスト自身老健リハビリを臨床の最前線ではないかのように捉えている場合もある。しかし真摯に1人1人の身体機能を評価し個別的プログラムで介入できれば,維持・慢性期でも機能改善しうると考える。そして老健におけるセラピストの十分な人員配置も必要だと考える。
今後は老健で回復期病院のような機能を担うケースが更に増える可能性があり,また在宅復帰の知識も必要である。老健リハビリに対する卒前卒後教育もより充実されるべきだろう。
介護老人保健施設(以下老健)にてセラピスト増員によりリハビリテーション(以下リハビリ)の介入時間・内容の変更が可能となり,入所から2年半以上身体機能の変化を認めなかった入所者が機能改善した症例を経験した。維持・慢性期とされる老健だが,介入方法の量と質が確保できれば決して「維持・慢性」ではないと考える。
【方法】
50歳代男性,H24年1月クモ膜下出血,H24年1月,同年8月多発性脳動脈瘤クリッピング術,H24年12月入所,左麻痺StageII-II-II,高次脳機能障害,車いす生活,円背,仙骨座り,頚部右側屈・体幹左傾斜し自己修正や体幹回旋困難,麻痺側及び非麻痺側上下肢の筋緊張亢進に伴い麻痺側屈曲パターン拘縮を呈し他動的に伸展困難,両側股関節屈曲位拘縮,起立移乗時に麻痺側下肢の接地困難でバランス不良かつ動作性急。入所~H27年8月の間に転倒4回。
セラピスト増員によるリハビリ介入方法の変更(H27年9月~);介入時間:最低20分→1時間以上(週2回は変更なし),介入環境:車いす座位→プラットホーム・ティルトテーブルも使用,介入内容:①頚部・体幹・非麻痺側への重点的アプローチ ②ティルトテーブルによる体幹へのアプローチ・麻痺側荷重位での正しいアライメントの経験 ③短下肢装具使用
【結果】
変更後約6か月で身体各所のROM拡大傾向を認め,約1年後に枕を使用せず頭部接地可能なまで円背が改善,骨盤回旋の自動運動やブリッジ運動,頚部体幹アライメントの自己修正が可能,麻痺側上下肢及び両股関節伸展ROM拡大,下肢StageIIIに変化,座位・立位姿勢改善,起立移乗時に麻痺側下肢の接地可能,動作性急が軽減,短下肢装具で4点杖歩行練習が可能。変更後の転倒なし。
【結論】
維持期は廃用部分にアプローチすれば機能変化する可能性が非常に高いと思われる。今回は廃用を起こしていた頚部・体幹・非麻痺側への介入,ティルトテーブルや下肢装具の使用により機能改善を認めたと考える。当症例は入院中に実用歩行困難と評価され下肢装具は作製されなかった。維持期での機能改善のためには実用歩行の有無に関わらず入院中の下肢装具作製が望まれる。
施設や在宅等は「維持・慢性」期と呼ばれ「それ以上の回復がなく,維持が目標」という認識があるように思われる。また老健は集団生活であり,マンパワーの量でADLやQOLが制限される事もあり,あえて機能回復が図られない場合も経験する。そしてセラピスト自身老健リハビリを臨床の最前線ではないかのように捉えている場合もある。しかし真摯に1人1人の身体機能を評価し個別的プログラムで介入できれば,維持・慢性期でも機能改善しうると考える。そして老健におけるセラピストの十分な人員配置も必要だと考える。
今後は老健で回復期病院のような機能を担うケースが更に増える可能性があり,また在宅復帰の知識も必要である。老健リハビリに対する卒前卒後教育もより充実されるべきだろう。