The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-09] ポスター(地域)P09

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-09-5] 介護老人保健施設入所者における複数回転倒に関連する要因

加古川 直己, 大門 恭平, 渕上 健 (岸和田盈進会病院リハビリテーションセンター)

Keywords:施設入所者, 転倒, 複数回転倒

【はじめに,目的】

高齢者の転倒は,行動制限や寝たきりなどQOLを低下させる主な要因である。その中で,施設入所者の転倒発生率は,地域在住高齢者と比較して2~3倍高く(Rubenstein;1994),介護場面において最も多い事故と報告されている(三田寺;2013)。近年,施設入所者における転倒要因については多数調査されており,身体機能低下や環境及び服薬による影響が示唆されている(角田;2008)。また,2回以上の転倒(以下,複数回転倒)経験者は,転倒後の1年間で再び複数回転倒する可能性が高く,リスク要因を明確にする必要性が示唆されている(Nevitt MC;1989)。しかしながら,施設内における転倒者のみを対象とした,複数回転倒に関連する要因に焦点を当てた報告は少ない。

よって,本研究の目的は,施設入所者における複数回転倒に関連する要因を検討することである。

【方法】

対象は,2012年10月から2015年9月の期間に転倒した介護老人保健施設入所中の高齢者とした。調査方法として,事故報告書から転倒記録を抽出し,転倒状況を後ろ向きに調査した。転倒基準としては,「本人の意思からではなく,床などのより低い面に身体が接触すること」(Gibson;1990)とした。

調査内容として,転倒数,転倒場所,転倒時の行動目的(臥床,離床,食事,排泄,物を取る,不明),移動能力としてBarthel Index(椅子とベッド間の移乗,移動項目),理解力の有無,疼痛の有無といった項目を抽出した。

統計解析は,対象者の転倒数とその他の項目の関係性についてSpearmanの順位相関係数を算出し,転倒数を目的変数,転倒数と相関のある因子を説明変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。有意水準は1%とした。

【結果】

調査期間中における転倒者数は91名(男性28名,女性63名)で,総転倒数は218回,複数回転倒数は最も多い者で8回であった。転倒数は相関分析の結果,居室(ρ=.75,p<.01),トイレ(ρ=.27,p<.01),排泄目的(ρ=.59,p<.01),離床目的(ρ=.38,p<.01)に正の相関関係を認めた。また,重回帰分析の結果,転倒数に影響する要因として,居室と排泄目的が選択され(修正R2:0.84),標準偏回帰係数と有意確率は,居室が0.48,p<.01,排泄目的が0.63,p<.01であった。

【結論】

介護施設における複数回転倒には,居室と排泄目的が関連していることが明らかとなった。つまり,居室における排泄目的での行動が複数回転倒リスクを増加させる可能性が考えられる。よって,複数回転倒リスクを減少させるためには,入所者の排泄時の行動観察や環境調整を実施していくことが複数回転倒を予防する有効な手段となることが示唆された。今後は詳細な転倒状況を把握し,より効果的な転倒予防対策の立案に繋げていく必要性がある。