The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-13] ポスター(地域)P13

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-13-5] 中山間過疎地域における広域連合や町村と連携したスタッフ派遣事業の試み

柳澤 俊史, 鶴田 哲也, 木下 絵梨奈, 小松 昌久, 大田 雄也, 下野 由紀 (地方独立行政法人長野県立病院機構長野県立木曽病院リハビリテーション技術科)

Keywords:中山間地域, 事業報告, 地域在住高齢者

【はじめに,目的】団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて,地域包括ケアシステムの構築が急務となっており,その推進にはリハビリテーション(以下,リハ)専門職種の関与が不可欠である。しかし市街地に比べ中山間地域においては,リハ専門職種が在籍する施設が少なく,地域のニーズに十分応えるうるリハ資源の確保が困難な場合が多い。そういった状況の中,当院では,平成27年度より広域連合と協力し,「地域巡回リハ」と銘打ってリハスタッフの派遣事業を開始した。当院は郡内唯一の有床病院であり,リハ専門職種が在籍する数少ない施設のひとつである。町村との連携ついての現状の課題や今後の展開について検討したので報告する。

【方法】木曽郡は全6町村で構成され,ほぼ香川県の広さに匹敵する一方で,人口は30,000人弱という中山間過疎地域である。木曽病院リハ技術科の人員体制は,理学療法士(以下,PT)12名,作業療法士(以下,OT)5名,言語聴覚士(以下,ST)3名の計20名である。地域巡回リハを実施するに当たり,年度当初に木曽広域連合健康福祉課が主体となり,郡内町村から住民を対象とした介護予防やリハに関連する事業の取りまとめが行なわれる。集約結果は当院に連絡され,その後は事業内容に応じて適当な担当スタッフが選定され,担当スタッフが町村と個別に数回の打ち合わせの後派遣される。各町村原則年2回,派遣スタッフは2名までと設定した。

【結果】平成27年度は,4町村計11回の派遣となった。参加人数は,1回につき11名~280名であり,延べ約500名であった。派遣職種は1回につき1~2名を派遣し,PT-延べ12名,OT-延べ7名,ST-延べ2名の派遣であった。派遣事業のテーマは,集団体操指導,誤嚥性肺炎予防の講義及び実技,介護予防を目的とした講演など,多岐に渡っていた。平成28年度は,5町村12回の派遣予定となっている。各町村からは,来年度以降も継続してほしいと声があった一方,対象事業が無い,あるいはリハ専門職以外の職種が既に事業展開しているという理由から,派遣が出来なかった町村もあった。

【結論】中山間過疎地域においては,リハ専門職の地域に存在する病院は重要なリハ資源である。特に病院規模が中規模以下であったとしても,積極的なリハ専門職の派遣により,地域におけるリハ専門職や病院の存在意義を高めることが,地域格差のない地域包括ケアシステム構築に向けた重要な働きかけになると考える。また派遣できなかった町村については,リハ専門職以外の職種が既に事業展開している場合や,介護予防事業自体が積極的になされていないといった町村による取り組みの差がみられた。それらに対しては,改めて啓発活動を行なうことや,聞き取りやアンケート等による実態調査をする必要があると考える。リハ専門職は,その専門性を活かし,自治体の様々な活動に積極的に,かつ継続的に関わっていく必要があると考える。