第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-14] ポスター(地域)P14

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-14-5] 尿失禁に対する老健式活動能力指標各項目の関連性について
尿失禁から考える社会参加

講内 源太1, 菊池 奏恵2, 佐藤 斎3, 高島 恵4 (1.医療法人社団愛友会訪問看護ステーションゆーらっぷ, 2.社会福祉法人若竹大寿会介護老人保険施設リハリゾート青葉, 3.合同会社リハビリコンパス地域リハビリケアセンターこんぱす春日部, 4.学校法人康学舎上尾中央医療専門学校)

キーワード:尿失禁, 老健式活動能力指標, 地域包括ケアシステム

【はじめに】

過活動膀胱における尿失禁等のトラブルは,日常生活範囲の縮小及びQOLへ多大な影響を与える。超高齢社会を迎えている日本において,60歳以上では50%以上に尿失禁があると報告されている。排尿障害は羞恥心を伴うことが多く,治療に結びつきにくく,隠れた阻害因子となり易い。理学療法士の役割として,排尿障害の改善を図るとともに,その先にある社会参加を実現することが求められている。本研究は,尿失禁の程度に対して,日常生活の活動範囲の関連する項目を明確にし,社会参加を目指す上での介入の一助とすることを目的とした。

【方法】

対象は,通所サービスを利用している要支援および要介護高齢者で,本研究の説明を行い,同意の得られた16名(男性7名,女性9名)とした。年齢は83.08±6.42歳,平均介護度は1.24,HDS-Rは26.5±3.32点であった。調査項目は,国際失禁会議質問票短縮版(International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form以下,ICIQ-SF)及び老健式活動能力指標を用い,その回答を得た。調査期間は,平成28年8月下旬~9月上旬に実施し,調査項目を配布し,後日回収する手法をとった。統計方法は,ICIQ-SFの合計点数を従属変数とし,老健式活動能力指標の各項目を独立変数とした重回帰分析を実施した。さらに,ICIQ-SFで加点のあった12名を対象に同様の統計方法にて実施した。統計処理は,R version2.8.1を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

ICIQ-SF合計点数に対して,老健式活動能力指標の各項目は関連性を持たなかった。次に,ICIQ-SFで加点のあったグループのみ着目すると,多重共線性は認められず,ICIQ-SF合計点数=11+-6×「新聞を読みますか(問7)」であった。分散分析票の結果は有意で(P<0.036),R2は0.63であり,適合性は高いと判断した。

【結論】

尿失禁の程度に対して,老健式活動範囲指標の項目との関連性は,今回の研究では認められなかった。尿失禁に課題がある場合,新聞を読んでいるほど,その程度は軽くなることが示唆された。新聞による情報は高齢者にとって健康を維持し,社会参加を促す一助となると考える。しかし,超高齢社会の日本において,新聞を含むたくさんの健康に関する情報が氾濫している。理学療法士の役割は,個々人の機能評価に合わせた情報を整理し,アプローチを伝えることが求められる。さらに,地域包括ケアシステムの視点から,地域住民に対して尿失禁の予防を促すことは,社会参加制限に起因する廃用症候群や軽度認知機能障害などの出現を予防し,健康な地域を作る一助となると考える。総合事業等では,自助や互助を考え,参加者が自宅に帰り,得た情報を再確認及び共有できるよう配慮すると効果的である。最後に,尿失禁を加齢に伴う継続的課題と捉え,次世代へ啓発することは必要である。その世代へは,経済産業省の進めるIoTを視野に推進することも一つの方法である。