[P-TK-16-2] ライフゴール概念を用いた目標設定により上肢機能改善につながった慢性期脳卒中患者1症例
Keywords:ライブゴール概念, 目標設定, 外来理学療法
【目的】
理学療法において,患者の要望と目標設定の合致が治療への参加意欲を維持する一つの方法であるとされている。近年,理学療法士と患者間の目標を共有するツールとして,ライフゴール概念が報告されている。この概念は患者の最も関心のある生活領域を評価し,直接または間接的にリハビリテーションへ応用するものであり,参加意欲を高めるとされている。しかし,参加意欲の向上が身体機能面に及ぼす効果を検討した報告は見当たらず,今回は脳卒中患者1症例に対して目標を共有することによって参加意欲の向上を図り,身体機能面への効果を調べることを目的とした。
【方法】
症例は,発症から6年が経過した脳卒中左片麻痺患者の67歳の男性である。麻痺側の手指屈筋痙性に対するボトックス治療後に週1回の外来理学療法を開始した。初期評価では,Bruunstrom Recovery Stage(BRS)が,上肢-III,手指-IIIであり,麻痺側上肢関節可動域は,手関節背屈45°,母指掌側外転60°であった。Modified Ashworth Scale(MAS)は,左肘関節屈曲2・伸展2,手関節背屈3・指伸展3であった。ボトックス治療後の2ヶ月間は,手指屈筋痙性が緩和され,自主練習に積極的に取り組めていた。しかし,痙性が治療前の状態に戻るにつれ,手指・手関節の痛みの訴えが多くなり,手指伸展・手関節背屈を伴う運動への集中力は低下し,自主練習の実施も困難となった。この時点の参加意欲を示すPittsburgh Rehabilitation Participation Scale(PRPS)は3/6であり参加意欲の低下がみられた。そこで,理学療法士と患者間の目標共有のためにRivermead Life Goals Questionnaireを用いて評価を行った。評価より患者の趣味のゴルフクラブを握り振る動作を目標と定めた。この目標に対して,肘関節屈曲・伸展,手指伸展,手関節背屈の関節可動域改善及び痙性減弱に向けてゴルフクラブを使用した動作指導を1ヶ月間実施した。
【結果】
ゴルフクラブ把持は痛みも少なく病前から慣れた動作であり,当時の手指・手関節の運動感覚を想起して試行錯誤する姿勢がみられた。また,30分以上集中しての実施が可能で,3週後には手指の痙性減弱とともに把持する際の前腕回外,手関節背屈・橈屈,指伸展の動きが見られ出した。PRPSは6/6となり参加意欲が向上し,自主練習も実施するように変化してきた。また,目標共有後1ヶ月の時点でBRSに変化はないが,関節可動域は手関節背屈55°,母指掌側外転80°となり,MASは左肘関節屈曲1・伸展1,手関節背屈2,指伸展2へと改善が得られた。
【結論】
症例は,介入当初は目標設定が不明確であり積極的に手指の運動に取り組めなかった。ライフゴール概念を用いた目標共有により患者の参加意欲が向上し,動作の反復及び自主練習の継続が可能となった結果,身体機能面の改善に結びついたと考える。ライフゴール概念を用いた目標共有は,参加意欲の向上のみならず身体機能面の改善にも効果を高める可能性がある。
理学療法において,患者の要望と目標設定の合致が治療への参加意欲を維持する一つの方法であるとされている。近年,理学療法士と患者間の目標を共有するツールとして,ライフゴール概念が報告されている。この概念は患者の最も関心のある生活領域を評価し,直接または間接的にリハビリテーションへ応用するものであり,参加意欲を高めるとされている。しかし,参加意欲の向上が身体機能面に及ぼす効果を検討した報告は見当たらず,今回は脳卒中患者1症例に対して目標を共有することによって参加意欲の向上を図り,身体機能面への効果を調べることを目的とした。
【方法】
症例は,発症から6年が経過した脳卒中左片麻痺患者の67歳の男性である。麻痺側の手指屈筋痙性に対するボトックス治療後に週1回の外来理学療法を開始した。初期評価では,Bruunstrom Recovery Stage(BRS)が,上肢-III,手指-IIIであり,麻痺側上肢関節可動域は,手関節背屈45°,母指掌側外転60°であった。Modified Ashworth Scale(MAS)は,左肘関節屈曲2・伸展2,手関節背屈3・指伸展3であった。ボトックス治療後の2ヶ月間は,手指屈筋痙性が緩和され,自主練習に積極的に取り組めていた。しかし,痙性が治療前の状態に戻るにつれ,手指・手関節の痛みの訴えが多くなり,手指伸展・手関節背屈を伴う運動への集中力は低下し,自主練習の実施も困難となった。この時点の参加意欲を示すPittsburgh Rehabilitation Participation Scale(PRPS)は3/6であり参加意欲の低下がみられた。そこで,理学療法士と患者間の目標共有のためにRivermead Life Goals Questionnaireを用いて評価を行った。評価より患者の趣味のゴルフクラブを握り振る動作を目標と定めた。この目標に対して,肘関節屈曲・伸展,手指伸展,手関節背屈の関節可動域改善及び痙性減弱に向けてゴルフクラブを使用した動作指導を1ヶ月間実施した。
【結果】
ゴルフクラブ把持は痛みも少なく病前から慣れた動作であり,当時の手指・手関節の運動感覚を想起して試行錯誤する姿勢がみられた。また,30分以上集中しての実施が可能で,3週後には手指の痙性減弱とともに把持する際の前腕回外,手関節背屈・橈屈,指伸展の動きが見られ出した。PRPSは6/6となり参加意欲が向上し,自主練習も実施するように変化してきた。また,目標共有後1ヶ月の時点でBRSに変化はないが,関節可動域は手関節背屈55°,母指掌側外転80°となり,MASは左肘関節屈曲1・伸展1,手関節背屈2,指伸展2へと改善が得られた。
【結論】
症例は,介入当初は目標設定が不明確であり積極的に手指の運動に取り組めなかった。ライフゴール概念を用いた目標共有により患者の参加意欲が向上し,動作の反復及び自主練習の継続が可能となった結果,身体機能面の改善に結びついたと考える。ライフゴール概念を用いた目標共有は,参加意欲の向上のみならず身体機能面の改善にも効果を高める可能性がある。