[P-TK-19-3] 診断直後の筋萎縮性側索硬化症(ALS)者に理学療法士が関わる有効性
Keywords:筋萎縮性側索硬化症, 連携, 予後予測
【はじめに,目的】筋萎縮性側索硬化症は多様に進行し,支援の方向性を定めるのに難渋することが多い。今回,行政の福祉サービスで派遣されるリハビリテーション専門職として,診断直後の症例に関わり,多機関・多職種と支援を行なった。診断直後から理学療法士が関わる有効性と必要な連携について再考し報告する。
【方法】球麻痺症状を初発とする71歳,女性。診断直後の介入時には右足背屈の抗重力運動が困難であった以外は筋力低下を認めず,ADL自立,家事も担っていた。概ね3ヶ月ごとに新たな生活課題が出現し,地域支援者の依頼で訪問支援を行なった。課題に合わせて必要な職種と同行訪問し,リハビリテーションの視点から地域支援者の役割と課題解決に向けた助言を行なった。
【結果】支援開始~2ヶ月:区役所保健師,包括支援センター職員と訪問し,介護保険や難病サービスを含めた在宅生活の支援体制の整備を実施。同時に,独歩可能ではあるものの右足部下垂を認めたため,歩行の安定性向上を目的に,主治医に報告し軟性下肢装具を導入した。支援開始後4~5ヶ月:頸部保持力低下を認め,訪問看護師と同行訪問し,頸椎カラーを検討。家事動作に支障があり日常使いには至らなかったため,易疲労を予防するため安楽な姿勢での休憩時間を設定した。支援開始後8~9ヶ月:移動能力の低下を認め,ケアマネジャー,訪問看護師と同行訪問。介助歩行可能だったが,今後の介助量増加と姿勢保持能力低下に備えリクライニング車椅子を情報提供。本人が希望するトイレ利用においては,車椅子では便器に接近できず,住宅改修も困難であるとの評価結果から,ポータブルトイレの情報提供も行なった。ベッドで過ごす時間が増加しており,訪問看護師による機能維持的トレーニングを導入して活動性維持に配慮した。支援開始後13~15ヶ月:歩行に重介助を要するようになり,情報提供していたリクライニング車椅子を導入。排泄は,車椅子導入とともにポータブルトイレ導入を家族が選択した。同時期に移乗の安定性向上のため硬性下肢装具を導入した。支援開始から16ヶ月後:人工呼吸器は装着しない意向で,呼吸困難のため死去。
【結論】本症例では移動形態の変化等を予測し,必要な支援について事前に情報提供したことで,本人・家族が自身で問題解決の時期や方法を検討する時間が確保できたこと,また,支援者が支援すべきこととその時期を予測できたことが有効であったと考える。リハビリテーション専門職は,予後予測,二次障害予防の視点から支援の時期や内容を提案することが可能であり,生活障害が明らかでない診断直後においてもリハビリテーション専門職の介入は必要である。医療機関と区役所,介護保険機関は診断直後から双方向の連絡を取り,予後予測に基づいた円滑な支援を組み立ていくことが望まれる。
【方法】球麻痺症状を初発とする71歳,女性。診断直後の介入時には右足背屈の抗重力運動が困難であった以外は筋力低下を認めず,ADL自立,家事も担っていた。概ね3ヶ月ごとに新たな生活課題が出現し,地域支援者の依頼で訪問支援を行なった。課題に合わせて必要な職種と同行訪問し,リハビリテーションの視点から地域支援者の役割と課題解決に向けた助言を行なった。
【結果】支援開始~2ヶ月:区役所保健師,包括支援センター職員と訪問し,介護保険や難病サービスを含めた在宅生活の支援体制の整備を実施。同時に,独歩可能ではあるものの右足部下垂を認めたため,歩行の安定性向上を目的に,主治医に報告し軟性下肢装具を導入した。支援開始後4~5ヶ月:頸部保持力低下を認め,訪問看護師と同行訪問し,頸椎カラーを検討。家事動作に支障があり日常使いには至らなかったため,易疲労を予防するため安楽な姿勢での休憩時間を設定した。支援開始後8~9ヶ月:移動能力の低下を認め,ケアマネジャー,訪問看護師と同行訪問。介助歩行可能だったが,今後の介助量増加と姿勢保持能力低下に備えリクライニング車椅子を情報提供。本人が希望するトイレ利用においては,車椅子では便器に接近できず,住宅改修も困難であるとの評価結果から,ポータブルトイレの情報提供も行なった。ベッドで過ごす時間が増加しており,訪問看護師による機能維持的トレーニングを導入して活動性維持に配慮した。支援開始後13~15ヶ月:歩行に重介助を要するようになり,情報提供していたリクライニング車椅子を導入。排泄は,車椅子導入とともにポータブルトイレ導入を家族が選択した。同時期に移乗の安定性向上のため硬性下肢装具を導入した。支援開始から16ヶ月後:人工呼吸器は装着しない意向で,呼吸困難のため死去。
【結論】本症例では移動形態の変化等を予測し,必要な支援について事前に情報提供したことで,本人・家族が自身で問題解決の時期や方法を検討する時間が確保できたこと,また,支援者が支援すべきこととその時期を予測できたことが有効であったと考える。リハビリテーション専門職は,予後予測,二次障害予防の視点から支援の時期や内容を提案することが可能であり,生活障害が明らかでない診断直後においてもリハビリテーション専門職の介入は必要である。医療機関と区役所,介護保険機関は診断直後から双方向の連絡を取り,予後予測に基づいた円滑な支援を組み立ていくことが望まれる。