[P-TK-19-4] 筋萎縮性側索硬化症患者の身体機能および年齢とQOLの関係
Keywords:ALS, QOL, 身体機能
【目的】
筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)は運動神経の変性を起因とした筋力低下をきたす慢性進行性の神経難病で,時間の経過と共に身体能力低下を呈するのが現状である。そのため病態の定期的な把握を行なう必要があり,特にQOLの維持・向上はALS患者において重要課題となることも少なくない。一般的なQOL評価は身体能力と相関する傾向にあるため,このような進行性疾患では実際の生活の質を反映していない場合がある。WHOが推奨しているQOL評価にSEIQoL-DWがある。これは身体能力に相関しにくい評価であり,生活において大事な事柄を5つ抽出し,それぞれに対する重要度と満足度を聴取する質問紙法である。本研究ではこれを用いてQOLに影響を与える要因を分析し介入方法を検討する事を目的とした。
【方法】
市内のALS患者15名(男8名,女7名,平均年齢68.5±10.5歳,罹患期間52.07±39.45ヶ月)を対象とした。QOL評価はSEIQoL-DWを用いた。統計解析は性別,療養環境(入院か在宅か),主介護者の有無,人工呼吸器装着の有無,胃瘻造設の有無,コミュニケーション手段の有無で2群間検定(Mann-Whiteny-U検定)を行ない,QOLに差があるかを検証した。次にALSの身体機能評価であるALSFS-Rや年齢とQOLとの関連性についてSpearman順位相関係数の有意性検定を実施した。
【結果】
対象のSEIQoL-DWの平均点数は49.5±22.70点であり,個人属性及びその他の項目において2群間の有意差は認められなかった(p>0.05)。また,ALSFRS-RとQOLに相関関係は認められなかった(r=-0.07 p=0.788)が,QOLと年齢では負の相関がみられた(r=-0.497 p=0.059)。
【結論】
2群間検定において有意差は認めなかった。また相関検定についてはQOLと身体機能との相関はみられなかったがQOLと年齢では負の相関がみられた。脳卒中患者を対象とした先行研究では身体機能とQOLの間に相関がみられるが,本研究のALS患者ではみられなかった。その要因として脳卒中と比較しALSは病態が緩徐に進行していくことが挙げられる。このため,身体機能低下が生活に影響している事を感じにくい傾向にあると思われる。一方で脳卒中の病態は直下的であり,身体機能が急激に低下することで生活への影響をより強く感じるのではないかと考えた。またALS患者の病態の進行は緩徐な故に,患者本人が病気を受容し病態に応じたQOL目標を設定していることが挙げられ,身体機能レベルがQOLを左右しにくいのではないかと考えた。
次にQOLと年齢との負の相関がみられた要因としては,年齢の上昇による精神的な影響が考えられ,活動意欲の低下,心気状態,社会的役割の損失がQOLに強く影響しているのではないかと考えた。よってALS患者においては医学的治療だけでなく個々の精神的状態や社会的背景を理解し,関わることがQOL向上の一助となるのではないかと考える。
筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)は運動神経の変性を起因とした筋力低下をきたす慢性進行性の神経難病で,時間の経過と共に身体能力低下を呈するのが現状である。そのため病態の定期的な把握を行なう必要があり,特にQOLの維持・向上はALS患者において重要課題となることも少なくない。一般的なQOL評価は身体能力と相関する傾向にあるため,このような進行性疾患では実際の生活の質を反映していない場合がある。WHOが推奨しているQOL評価にSEIQoL-DWがある。これは身体能力に相関しにくい評価であり,生活において大事な事柄を5つ抽出し,それぞれに対する重要度と満足度を聴取する質問紙法である。本研究ではこれを用いてQOLに影響を与える要因を分析し介入方法を検討する事を目的とした。
【方法】
市内のALS患者15名(男8名,女7名,平均年齢68.5±10.5歳,罹患期間52.07±39.45ヶ月)を対象とした。QOL評価はSEIQoL-DWを用いた。統計解析は性別,療養環境(入院か在宅か),主介護者の有無,人工呼吸器装着の有無,胃瘻造設の有無,コミュニケーション手段の有無で2群間検定(Mann-Whiteny-U検定)を行ない,QOLに差があるかを検証した。次にALSの身体機能評価であるALSFS-Rや年齢とQOLとの関連性についてSpearman順位相関係数の有意性検定を実施した。
【結果】
対象のSEIQoL-DWの平均点数は49.5±22.70点であり,個人属性及びその他の項目において2群間の有意差は認められなかった(p>0.05)。また,ALSFRS-RとQOLに相関関係は認められなかった(r=-0.07 p=0.788)が,QOLと年齢では負の相関がみられた(r=-0.497 p=0.059)。
【結論】
2群間検定において有意差は認めなかった。また相関検定についてはQOLと身体機能との相関はみられなかったがQOLと年齢では負の相関がみられた。脳卒中患者を対象とした先行研究では身体機能とQOLの間に相関がみられるが,本研究のALS患者ではみられなかった。その要因として脳卒中と比較しALSは病態が緩徐に進行していくことが挙げられる。このため,身体機能低下が生活に影響している事を感じにくい傾向にあると思われる。一方で脳卒中の病態は直下的であり,身体機能が急激に低下することで生活への影響をより強く感じるのではないかと考えた。またALS患者の病態の進行は緩徐な故に,患者本人が病気を受容し病態に応じたQOL目標を設定していることが挙げられ,身体機能レベルがQOLを左右しにくいのではないかと考えた。
次にQOLと年齢との負の相関がみられた要因としては,年齢の上昇による精神的な影響が考えられ,活動意欲の低下,心気状態,社会的役割の損失がQOLに強く影響しているのではないかと考えた。よってALS患者においては医学的治療だけでなく個々の精神的状態や社会的背景を理解し,関わることがQOL向上の一助となるのではないかと考える。