第52回日本理学療法学術大会

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[P-TK-20] ポスター(地域)P20

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-20-2] 地域在住中高齢者における身体的フレイルに関する一考察

神谷 碧1,4, 池添 冬芽1,4, 磯野 凌1,4, 加藤 丈博1,4, 山縣 桃子1,4, 佐伯 純弥1,4, 田中 真砂世1,4, 正木 光裕2,4, 田原 康玄3,4, 松田 文彦3,4, 坪山 直生1,4, 市橋 則明1,4 (1.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 2.新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所, 3.京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター, 4.ながはま0次コホート研究グループ)

キーワード:身体的フレイル, physical frailty phenotype, 地域在住中高齢者

【はじめに,目的】

身体的フレイルは,一般的にFriedらのphysical frailty phenotypeの5要素(Slowness,Weakness,Exhaustion,Low activity,Weight loss)をもとに評価されることが多い。しかし,これらの各要素で年齢や性別による違いがあるのかといった身体的フレイルの特徴について詳細に検討している報告は少ない。また,フレイルは多角的な介入により健常な状態に戻ることができる「可逆性」が内包されているが,身体的フレイルには特にどのような運動機能低下が関連しているのかは明らかではない。そこで本研究では身体的フレイルに効果的な介入法の開発を目指し,身体的フレイルに関する特徴および運動機能との関連について調査した。




【方法】

対象は60歳以上の滋賀県長浜市在住の中高齢者691名(男性251名,女性440名,68.7±5.3歳)とした。なお,重度の神経学的・整形外科的障害や認知障害を有する者は除外した。

physical frailty phenotypeの各項目の基準は先行研究を参考に次の通りとした。Slowness:通常歩行速度<1.0m/s,Weakness:握力が男性<26kg,女性<18kg,Exhaustion:「何をするのも面倒だ」「何かを始めることがなかなかできない」の2項目のいずれかに週3~4日以上該当,Low activity:「1週間で中等度以上の身体活動を行う日はあるか」「1週間で10分以上続けて歩く日はあるか」の2項目の両方に該当なし,Weight loss:1年間で非意図的な4.5kg以上の体重減少。

運動機能として下肢筋力(股関節屈曲・伸展・外転,膝関節伸展,足関節底屈,足趾屈曲),バランス能力(片脚立位保持時間),下肢筋パワー(5回立ち座り時間),下肢敏捷性(立位ステッピング回数)を評価した。

physical frailty phenotypeの5項目中3項目以上に該当したfrailおよび1~2項目に該当したpre-frailをあわせてフレイル群,該当なしの者を非フレイル群とし,この2群を従属変数,年齢,性別,運動機能を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。




【結果】

フレイル群は200名,非フレイル群は491名であり,2群間に性別の有意差はなく,年齢はフレイル群のほうが有意に高齢であった。

5要素別に比較した結果,Weakness,Weight lossに該当した者は有意に高齢であり,またWeaknessに該当した者は有意に女性が多かった。それ以外の項目では年齢,性別による違いはみられなかった。

多重ロジスティック回帰分析の結果,片脚立位保持時間,股関節伸展筋力,足関節底屈筋力が有意な関連因子として抽出された。




【結論】

地域在住中高齢者の身体的フレイルに関する特徴を調査した結果,Weaknessは高齢および女性,Weight lossは高齢で該当しやすいことが確認された。また,身体的フレイルには運動機能のなかでも特にバランス能力,股伸展・足底屈筋力の低下が関連していることが示唆された。