[P-TK-21-4] 高齢者の即時的な歩行速度向上を目的とした座位の運動方法の検証
Keywords:高齢者, 歩行速度, 座位
【はじめに,目的】高齢者の歩行速度は様々な身体機能と関連があり,簡便な評価方法であることから臨床的意義の高い身体指標である。そのため,高齢者の歩行速度向上は運動療法の主要な目的となる。歩行速度向上を目的とした運動療法では,座位の側方重心移動時に体幹を正中位に保持して立ち直り反応を促す運動(以下,立ち直り運動)が臨床場面で頻繁に行われており,これは座位の側方重心移動時に体幹を正中位に保持する能力は移動能力と関連があるとの報告に基づいていると考えられる。一方,体幹の運動速度に着目した座位の側方重心移動運動であるSeated side tapping(以下,SST)が人工膝関節置換術後患者の歩行速度の向上に効果があるとの報告もあり,どのような座位の運動が高齢者の歩行速度向上に効果的であるかは明らかにされていない。そこで本研究の目的はこれらの座位の運動が高齢者の歩行速度に与える影響を即時効果から検証することとした。
【方法】対象者は屋外独歩・ADLが自立している地域在住の高齢女性25名とした。介入条件は安静,立ち直り運動,SSTの3条件として,各介入の前後に10m最速歩行速度(以下,歩行速度)を測定し,その変化率を求めた。対象者は3種類の介入を別日に行い,介入の順番はランダムに決められたものとした。安静は5分間の座位保持を指示した。立ち直り運動は腕を組んで足底を接地しない座位を開始肢位として,体幹が正中位保持可能な範囲で側方へ重心移動するよう指示した。重心移動した位置で5秒静止し,反対側も同様に行うよう指示した。これを左右へと5分間繰り返した。SSTは座位で両上肢を側方に挙上し,その指先から10cm離した位置にマーカーを設置し,出来るだけ速くマーカーを交互に10回叩くよう指示した。この運動を10回1セットとして5分間繰り返した。各介入の歩行速度の変化率は一元配置分散分析を用いて解析し,5%未満を有意差として,有意差が認められた場合は多変量解析としてBonferroni法を用いた。
【結果】対象者の基本属性は年齢73.3±6.2歳,身長150.6±4.2 cm,体重52.9±9.1 kgであった。各介入の歩行速度は安静前1.74±0.31 m/sec,安静後1.78±0.35 m/sec,立ち直り運動前1.72±0.30 m/sec,立ち直り運動後1.77±0.31 m/sec,SST前1.73±0.37 m/sec,SST後1.85±0.41 m/secであった。各介入の歩行速度の変化率は安静で2.4±4.7%,立ち直り運動で3.1±6.2%,SSTで7.3±6.7%であり,SSTが他の2条件より有意に歩行速度の変化率が大きかった(p<0.05)。
【結論】各介入の歩行速度の変化率を比較した結果,SSTが最も歩行速度を向上させた。また,立ち直り運動と安静の歩行速度の変化率には有意差を認めなかった。よって,高齢者の歩行速度向上に即時的効果を認めた座位の運動は運動速度に着目した側方重心移動運動であり,側方重心移動時に体幹を正中位に保つ,いわゆる立ち直り反応を促す運動は,その効果を認めなかった。
【方法】対象者は屋外独歩・ADLが自立している地域在住の高齢女性25名とした。介入条件は安静,立ち直り運動,SSTの3条件として,各介入の前後に10m最速歩行速度(以下,歩行速度)を測定し,その変化率を求めた。対象者は3種類の介入を別日に行い,介入の順番はランダムに決められたものとした。安静は5分間の座位保持を指示した。立ち直り運動は腕を組んで足底を接地しない座位を開始肢位として,体幹が正中位保持可能な範囲で側方へ重心移動するよう指示した。重心移動した位置で5秒静止し,反対側も同様に行うよう指示した。これを左右へと5分間繰り返した。SSTは座位で両上肢を側方に挙上し,その指先から10cm離した位置にマーカーを設置し,出来るだけ速くマーカーを交互に10回叩くよう指示した。この運動を10回1セットとして5分間繰り返した。各介入の歩行速度の変化率は一元配置分散分析を用いて解析し,5%未満を有意差として,有意差が認められた場合は多変量解析としてBonferroni法を用いた。
【結果】対象者の基本属性は年齢73.3±6.2歳,身長150.6±4.2 cm,体重52.9±9.1 kgであった。各介入の歩行速度は安静前1.74±0.31 m/sec,安静後1.78±0.35 m/sec,立ち直り運動前1.72±0.30 m/sec,立ち直り運動後1.77±0.31 m/sec,SST前1.73±0.37 m/sec,SST後1.85±0.41 m/secであった。各介入の歩行速度の変化率は安静で2.4±4.7%,立ち直り運動で3.1±6.2%,SSTで7.3±6.7%であり,SSTが他の2条件より有意に歩行速度の変化率が大きかった(p<0.05)。
【結論】各介入の歩行速度の変化率を比較した結果,SSTが最も歩行速度を向上させた。また,立ち直り運動と安静の歩行速度の変化率には有意差を認めなかった。よって,高齢者の歩行速度向上に即時的効果を認めた座位の運動は運動速度に着目した側方重心移動運動であり,側方重心移動時に体幹を正中位に保つ,いわゆる立ち直り反応を促す運動は,その効果を認めなかった。