[P-TK-21-5] 施設入所高齢者の活動性の評価と認知機能,精神機能,身体機能,生活機能,QOL指標の関連と影響を与える因子
Nursing Home Life Space Diameterを用いた施設内活動範囲の評価
キーワード:介護老人保健施設, 活動範囲, 移動
【はじめに,目的】身体的に虚弱となり施設入所されている高齢者において,身体活動を一定以上に保つことが要介護状態の進行予防に役立つ。在宅高齢者に関する活動性の評価指標は確立されているが,身体機能が低下し,車いす生活が主となる要介護の施設入所高齢者の活動性の評価とその関連要因についての検討された報告は少ない。今回,評価指標としてMarry Eらが開発したNursing home life space diameter(NHLSD)を使用し,入所者の活動性が認知機能,精神機能,身体機能,生活機能,QOLと,どのように関連しているのかを明らかにする。
【方法】A介護老人保健施設入所者のうち,ご家族及び本人から参加の同意を得られた高齢者32名を対象とした(年齢86.5±6.6歳,男性5名/女性27名,平均要介護度2.8)。評価項目はNHLSD,Mini-mental state examination(MMSE),Geriatric depression scale short form(GDS-5),やる気スコア,膝伸展筋力,握力,Barthel index(BI),Nurses' observation scales for geriatric patients(NOSGER),health-related quality of life questionnaire for the elderly with dementia in Japan(QOL-D)とした。NHLSDとの関連のある指標を調査したのちに,NHLSDを従属変数,有意な関連のある指標を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を実施し,活動性に影響を与える因子を検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】NHLSDの平均値±標準偏差は36.2±11.5点で,当施設入所者の活動範囲は,全員が居室内・居室外からユニット内を,少なくとも週2回以上移動・活動していた。一方,ユニットを出て施設内で過ごすのは,1週間に1回以下(18人)で,施設外へ移動する方は月に1回以上で5人だった。NHLSDと有意に関連した項目は,BIおよび入浴・排尿を除いた下位項目,膝伸展筋力,握力,NOSGER合計点とその下位項目(道具を用いる日常行動,社会的活動),QOL-D下位項目の陽性感情とコミュニケーション能力であった。重回帰分析の結果,NHLSDの説明因子としてBI合計点(β=0.500,p=0.000),膝伸展筋力(β=0.379,p=0.003),QOL-D下位項目の自発性活動性(β=0.254,p=0.034)が抽出され,予測式は(NHLSD)=3.77+0.261(BI合計点)+0.958(膝伸展筋力)+0.701(QOL-D自発性活動性)となり自由度調整済み決定係数はR2=0.688だった。
【結論】老健施設入所者の活動実態として,居室からユニット内で過ごす方がほとんどであることが明らかとなった。施設入所高齢者の活動性に影響を及ぼす因子は日常生活活動自立度,膝伸展筋力,自発性であり,活動性を増やすためには自発性を引き出すような環境づくり,動機づけ,プログラムの検討が必要と考えられる。今後は継時的な評価を行い,活動性の増減による影響の検討や,身体活動による活動性の効果検証を行っていきたい。
【方法】A介護老人保健施設入所者のうち,ご家族及び本人から参加の同意を得られた高齢者32名を対象とした(年齢86.5±6.6歳,男性5名/女性27名,平均要介護度2.8)。評価項目はNHLSD,Mini-mental state examination(MMSE),Geriatric depression scale short form(GDS-5),やる気スコア,膝伸展筋力,握力,Barthel index(BI),Nurses' observation scales for geriatric patients(NOSGER),health-related quality of life questionnaire for the elderly with dementia in Japan(QOL-D)とした。NHLSDとの関連のある指標を調査したのちに,NHLSDを従属変数,有意な関連のある指標を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を実施し,活動性に影響を与える因子を検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】NHLSDの平均値±標準偏差は36.2±11.5点で,当施設入所者の活動範囲は,全員が居室内・居室外からユニット内を,少なくとも週2回以上移動・活動していた。一方,ユニットを出て施設内で過ごすのは,1週間に1回以下(18人)で,施設外へ移動する方は月に1回以上で5人だった。NHLSDと有意に関連した項目は,BIおよび入浴・排尿を除いた下位項目,膝伸展筋力,握力,NOSGER合計点とその下位項目(道具を用いる日常行動,社会的活動),QOL-D下位項目の陽性感情とコミュニケーション能力であった。重回帰分析の結果,NHLSDの説明因子としてBI合計点(β=0.500,p=0.000),膝伸展筋力(β=0.379,p=0.003),QOL-D下位項目の自発性活動性(β=0.254,p=0.034)が抽出され,予測式は(NHLSD)=3.77+0.261(BI合計点)+0.958(膝伸展筋力)+0.701(QOL-D自発性活動性)となり自由度調整済み決定係数はR2=0.688だった。
【結論】老健施設入所者の活動実態として,居室からユニット内で過ごす方がほとんどであることが明らかとなった。施設入所高齢者の活動性に影響を及ぼす因子は日常生活活動自立度,膝伸展筋力,自発性であり,活動性を増やすためには自発性を引き出すような環境づくり,動機づけ,プログラムの検討が必要と考えられる。今後は継時的な評価を行い,活動性の増減による影響の検討や,身体活動による活動性の効果検証を行っていきたい。