[P-YB-01-1] 運動器疾患患者に対する水中運動療法が静的・動的バランス能力に及ぼす影響
Keywords:運動器疾患, 水中運動, バランス機能
【はじめに,目的】
当院では,転倒予防,介護予防,活動性向上などを目的に運動器疾患を有する地域在住高齢者に対して月2回のプール教室を開催している。水中運動は,運動器疾患患者が陸上では行えない運動が長時間可能であり,また水の特性を利用した多くの感覚刺激がバランス機能改善に有用であると報告されている。本研究では,バランス機能改善を取り入れた水中運動療法が静的あるいは動的バランス能力に及ぼす即時効果について検討した。
【方法】
運動器疾患を有し当院のプール教室に通う参加者の内,データ収集が可能であった10名(男性2名,女性8名,平均年齢65.1±8.2歳,平均BMI:22.3±3.8)を対象とした。対象者は脊椎や下肢関節に疾患を有し,ADLは自立しているが日常の生活で疼痛を訴えていた。水中運動内容は,20分間の水中歩行を行った後,20分間の筋力強化,バランス運動,リラクゼーションを行った。バランス能力の測定にはゼブリス社製重心動揺計を使用し,水中運動療法開始30分前および終了直後に開眼静止立位と動的なバランス能力の指標としてCross testを測定した。開眼静止立位は,開脚10cmの立位をとり目線の高さで3m前方の指標を注視させ,30秒間測定した。Cross testは,安静立位を4秒間とった後,左右前後方向へ4秒かけて重心を最大限に移動させ静止立位姿勢へと戻り,最後に4秒間の静止立位をとり終了とした。静的バランス能力の評価項目として総軌跡長,矩形面積,左右方向中心変位,前後方向中心変位,下肢荷重率とした。Cross testから左右,前後方向への最大移動距離を評価した。統計学的検定には,SPSSを使用してウイルコクソンの符号付順位検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
静的バランス能力において,水中運動後には総軌跡長が有意に減少した(前:915.7±212.8mm,後:793.4±124.1mm,p<0.05)。矩形面積は水中運動前後で有意な変化が見られなかった。左右方向への中心変位は水中運動後に有意に減少した(前:14.5±10.6 mm,後:6.0±7.7 mm,p<0.01)。水中運動前は右下肢への荷重率が56.9%であったが,水中運動後には53.1%に変化した。動的バランス能力には有意な変化は認められなかった。
【結論】
今回,短時間の水中運動療法により即時的に静的バランスの改善を示した。水中運動療法は水の物理的特性を利用した運動療法であり,陸上で筋力強化やバランス練習の難しい運動器疾患患者でも浮力により体重が軽減され,背筋群や下肢筋群の緊張が解かれ,脊柱の運動が円滑になり左右対称的にバランスの取れた筋力増強運動が可能となる。また,水中では視覚,固有感覚,迷路受容器の刺激から多くの感覚入力が得られ,バランス機能に必要な感覚と運動の統合や運動学習が行える。そのため,水中という特殊な環境での運動は姿勢の安定性向上に効果があり,バランス能力改善に即時的な効果が期待できると思われる。
当院では,転倒予防,介護予防,活動性向上などを目的に運動器疾患を有する地域在住高齢者に対して月2回のプール教室を開催している。水中運動は,運動器疾患患者が陸上では行えない運動が長時間可能であり,また水の特性を利用した多くの感覚刺激がバランス機能改善に有用であると報告されている。本研究では,バランス機能改善を取り入れた水中運動療法が静的あるいは動的バランス能力に及ぼす即時効果について検討した。
【方法】
運動器疾患を有し当院のプール教室に通う参加者の内,データ収集が可能であった10名(男性2名,女性8名,平均年齢65.1±8.2歳,平均BMI:22.3±3.8)を対象とした。対象者は脊椎や下肢関節に疾患を有し,ADLは自立しているが日常の生活で疼痛を訴えていた。水中運動内容は,20分間の水中歩行を行った後,20分間の筋力強化,バランス運動,リラクゼーションを行った。バランス能力の測定にはゼブリス社製重心動揺計を使用し,水中運動療法開始30分前および終了直後に開眼静止立位と動的なバランス能力の指標としてCross testを測定した。開眼静止立位は,開脚10cmの立位をとり目線の高さで3m前方の指標を注視させ,30秒間測定した。Cross testは,安静立位を4秒間とった後,左右前後方向へ4秒かけて重心を最大限に移動させ静止立位姿勢へと戻り,最後に4秒間の静止立位をとり終了とした。静的バランス能力の評価項目として総軌跡長,矩形面積,左右方向中心変位,前後方向中心変位,下肢荷重率とした。Cross testから左右,前後方向への最大移動距離を評価した。統計学的検定には,SPSSを使用してウイルコクソンの符号付順位検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
静的バランス能力において,水中運動後には総軌跡長が有意に減少した(前:915.7±212.8mm,後:793.4±124.1mm,p<0.05)。矩形面積は水中運動前後で有意な変化が見られなかった。左右方向への中心変位は水中運動後に有意に減少した(前:14.5±10.6 mm,後:6.0±7.7 mm,p<0.01)。水中運動前は右下肢への荷重率が56.9%であったが,水中運動後には53.1%に変化した。動的バランス能力には有意な変化は認められなかった。
【結論】
今回,短時間の水中運動療法により即時的に静的バランスの改善を示した。水中運動療法は水の物理的特性を利用した運動療法であり,陸上で筋力強化やバランス練習の難しい運動器疾患患者でも浮力により体重が軽減され,背筋群や下肢筋群の緊張が解かれ,脊柱の運動が円滑になり左右対称的にバランスの取れた筋力増強運動が可能となる。また,水中では視覚,固有感覚,迷路受容器の刺激から多くの感覚入力が得られ,バランス機能に必要な感覚と運動の統合や運動学習が行える。そのため,水中という特殊な環境での運動は姿勢の安定性向上に効果があり,バランス能力改善に即時的な効果が期待できると思われる。