[P-YB-02-1] 健康増進事業参加者への理学療法介入における介入効果の評価分析
Keywords:健康増進教室, 理学療法介入, 縦断的評価
【はじめに,目的】
地域で暮らす高齢者を支える役割の1つに,介護予防を目的とした健康増進事業がある。これまで健康増進事業における理学療法の効果は,運動機能の向上や生活活動能力などで評価されることが多かった。また,理学療法評価においては,生理学的,運動学的,神経学的評価はほぼ確立されているものの,生化学的評価はカルテから血液データ等の情報を得るのが一般的である。本研究の目的は,健康増進事業に参加する高齢者に対して,その介入効果を唾液分析やその他の心理的要因,社会生活背景を含め,調査・分析することである。
【方法】
研究対象者は平成28年6月28日~平成28年9月30日に健康増進教室に参加された地域在住一般高齢者延べ48名とした。同意が得られた対象者に対して,健康増進教室の開始時および最終時に,体力測定および質問紙調査を実施した。また,これら対象者のうち6名については,理学療法介入の即時効果について,実施期間の中で5回を抽出し,各回における同様の測定および唾液採取を実施し,その1回ごとの変化を調査した。この5回に関しては,理学療法士がそれぞれ異なった介入プログラム(認知運動機能,脳トレ,筋力増強トレーニング等)を実施し,それぞれの反応について主観的および客観的評価を行った。
【結果】
3か月間の中長期理学療法介入により,うつ傾向が維持・改善された参加者は58.8%であった。また,運動に対する自己効力感は有意に上昇した(p=0.035)。異なる介入プログラム実施前後の短期的な変化では,筋トレやストレッチを実施した初回のみ主観的運動体験尺度のうち心理的ストレスが上昇する傾向がみられ(p=0.07),認知運動機能トレーニングでは,心理的ストレスが軽減する傾向がみられた(p=0.06)。脳トレでは,主観的運動体験尺度のうち疲労度が低下する傾向がみられ(p=0.07),精神的安寧度は有意に低下した。ストレッチングや認知運動機能トレーニングでは実施後に運動に対する自己効力感が有意に上昇した(p<0.01)。理学療法介入前後における唾液分泌量は体力測定でのみ有意に上昇したが,唾液アミラーゼ活性はストループテストや脳トレによって有意に低下した。また,介入後において唾液中のトータルタンパク量は低下する傾向がみられた。
【結論】
本研究結果から,介入の種類により主観的運動体験尺度の各因子に異なる影響が生じることがわかった。また,短期介入によって運動に対する自己効力感を高めるためには,身体活動を取り入れたプログラムが重要であると考えられ,長期介入によっては,さらに運動に対する自己効力感を高める可能性が示唆された。唾液中のトータルタンパク量は減少傾向を示したが,これは唾液分泌量が介入後に増加する傾向がみられ,そのことにより相対的にトータルタンパク量が低下したのかもしれない。今後,詳細な蛋白成分を免疫学的側面から調査していければと考える。
地域で暮らす高齢者を支える役割の1つに,介護予防を目的とした健康増進事業がある。これまで健康増進事業における理学療法の効果は,運動機能の向上や生活活動能力などで評価されることが多かった。また,理学療法評価においては,生理学的,運動学的,神経学的評価はほぼ確立されているものの,生化学的評価はカルテから血液データ等の情報を得るのが一般的である。本研究の目的は,健康増進事業に参加する高齢者に対して,その介入効果を唾液分析やその他の心理的要因,社会生活背景を含め,調査・分析することである。
【方法】
研究対象者は平成28年6月28日~平成28年9月30日に健康増進教室に参加された地域在住一般高齢者延べ48名とした。同意が得られた対象者に対して,健康増進教室の開始時および最終時に,体力測定および質問紙調査を実施した。また,これら対象者のうち6名については,理学療法介入の即時効果について,実施期間の中で5回を抽出し,各回における同様の測定および唾液採取を実施し,その1回ごとの変化を調査した。この5回に関しては,理学療法士がそれぞれ異なった介入プログラム(認知運動機能,脳トレ,筋力増強トレーニング等)を実施し,それぞれの反応について主観的および客観的評価を行った。
【結果】
3か月間の中長期理学療法介入により,うつ傾向が維持・改善された参加者は58.8%であった。また,運動に対する自己効力感は有意に上昇した(p=0.035)。異なる介入プログラム実施前後の短期的な変化では,筋トレやストレッチを実施した初回のみ主観的運動体験尺度のうち心理的ストレスが上昇する傾向がみられ(p=0.07),認知運動機能トレーニングでは,心理的ストレスが軽減する傾向がみられた(p=0.06)。脳トレでは,主観的運動体験尺度のうち疲労度が低下する傾向がみられ(p=0.07),精神的安寧度は有意に低下した。ストレッチングや認知運動機能トレーニングでは実施後に運動に対する自己効力感が有意に上昇した(p<0.01)。理学療法介入前後における唾液分泌量は体力測定でのみ有意に上昇したが,唾液アミラーゼ活性はストループテストや脳トレによって有意に低下した。また,介入後において唾液中のトータルタンパク量は低下する傾向がみられた。
【結論】
本研究結果から,介入の種類により主観的運動体験尺度の各因子に異なる影響が生じることがわかった。また,短期介入によって運動に対する自己効力感を高めるためには,身体活動を取り入れたプログラムが重要であると考えられ,長期介入によっては,さらに運動に対する自己効力感を高める可能性が示唆された。唾液中のトータルタンパク量は減少傾向を示したが,これは唾液分泌量が介入後に増加する傾向がみられ,そのことにより相対的にトータルタンパク量が低下したのかもしれない。今後,詳細な蛋白成分を免疫学的側面から調査していければと考える。