[P-YB-04-2] 二次の介護予防事業における農村部と市街部高齢者の違いと介入効果の検討
Keywords:介護予防, 介入, 運動習慣
【はじめに,目的】
我が国では高齢化が急速に進み,2025年には高齢者人口も3,500万人に達すると見込まれている。特に都市部においては高齢者数が増加するという課題に直面しており,高齢者の地域特性に合った介護予防が理学療法士(以下PT)に求められると予測される。
そこで本研究は,山梨県A市の特定高齢者に対する介護予防において,農村部と市街部間での高齢者の特性の相違と介入効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,二次の介護予防に参加し,本研究に同意が得られた農村部18人,市街部10人の28名とした。対象者には自主運動を指導し,初期時と10週後の終了時に,握力,長座体前屈,片脚立ち,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間,Timed Up & Go(以下TUG)の6項目を測定した。
分析は,6項目について農村部と市街部間で差の検定を行った。さらに,介入効果の違いを明らかにするため,農村部と市街部について,初期時と最終時の測定結果による差の検定を行った。差の検定にはStudentのt検定,Mann-WhitneyのU検定,Welchのt検定,Wilcoxon符号付順位和検定,対応のあるt検定を用い,有意水準を5%とした。
【結果】
農村部18名(男性5名,女性13名,平均年齢79.9±4.51歳),市街部10名(男性2名,女性8名,平均年齢78.6±4.88歳)であった。農村部と市街部の年齢(Studentのt検定p=0.50)には統計学的有意差は認められなかった。また,初期時の握力,長座体前屈,片脚立ち,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間,TUGの6項目すべてにおいて農村部と市街部間では有意差は認められなかった。
介入効果について,農村部は握力,長坐体前屈,片脚立ちには有意な改善は認められなかったが,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間,TUGには有意に改善(対応のあるt検定p<0.01)が認められた。市街部は6項目全てにおいて有意な差は認められなかった。
【結論】
農村部と市街部間では,年齢や6項目に差はなかったが,介入効果においては,久米ら(2010)による先行研究と同様に,農村部において有意な差が認められた。その理由は運動習慣だと考える。農村部は,現在も農業を就労している方が多く,生活の中で運動習慣が身についている。それに比べ市街部では,日常での運動習慣が乏しいため,自主的に運動することが少なく介入効果に差が表れたと考える。
水本ら(2012)は,運動習慣の有無は就業や外出頻度に影響すると述べており,細井ら(2011)は,運動の継続には行動科学の理論が有効であると述べている。市街部のように特定の就業を持たない地域高齢者への介入では,いかに外出頻度を増加させるかと,行動科学の理論を用いた運動習慣の定着を図ることが必要であると考えられた。
本研究は,対象が特定地域である点で限界があるが,地域特性に合致した介入で介護予防を行う必要性が示唆された点で意義深いものといえる。今後はデータ数を増やし,要因の検討も行っていきたい。
我が国では高齢化が急速に進み,2025年には高齢者人口も3,500万人に達すると見込まれている。特に都市部においては高齢者数が増加するという課題に直面しており,高齢者の地域特性に合った介護予防が理学療法士(以下PT)に求められると予測される。
そこで本研究は,山梨県A市の特定高齢者に対する介護予防において,農村部と市街部間での高齢者の特性の相違と介入効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,二次の介護予防に参加し,本研究に同意が得られた農村部18人,市街部10人の28名とした。対象者には自主運動を指導し,初期時と10週後の終了時に,握力,長座体前屈,片脚立ち,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間,Timed Up & Go(以下TUG)の6項目を測定した。
分析は,6項目について農村部と市街部間で差の検定を行った。さらに,介入効果の違いを明らかにするため,農村部と市街部について,初期時と最終時の測定結果による差の検定を行った。差の検定にはStudentのt検定,Mann-WhitneyのU検定,Welchのt検定,Wilcoxon符号付順位和検定,対応のあるt検定を用い,有意水準を5%とした。
【結果】
農村部18名(男性5名,女性13名,平均年齢79.9±4.51歳),市街部10名(男性2名,女性8名,平均年齢78.6±4.88歳)であった。農村部と市街部の年齢(Studentのt検定p=0.50)には統計学的有意差は認められなかった。また,初期時の握力,長座体前屈,片脚立ち,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間,TUGの6項目すべてにおいて農村部と市街部間では有意差は認められなかった。
介入効果について,農村部は握力,長坐体前屈,片脚立ちには有意な改善は認められなかったが,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間,TUGには有意に改善(対応のあるt検定p<0.01)が認められた。市街部は6項目全てにおいて有意な差は認められなかった。
【結論】
農村部と市街部間では,年齢や6項目に差はなかったが,介入効果においては,久米ら(2010)による先行研究と同様に,農村部において有意な差が認められた。その理由は運動習慣だと考える。農村部は,現在も農業を就労している方が多く,生活の中で運動習慣が身についている。それに比べ市街部では,日常での運動習慣が乏しいため,自主的に運動することが少なく介入効果に差が表れたと考える。
水本ら(2012)は,運動習慣の有無は就業や外出頻度に影響すると述べており,細井ら(2011)は,運動の継続には行動科学の理論が有効であると述べている。市街部のように特定の就業を持たない地域高齢者への介入では,いかに外出頻度を増加させるかと,行動科学の理論を用いた運動習慣の定着を図ることが必要であると考えられた。
本研究は,対象が特定地域である点で限界があるが,地域特性に合致した介入で介護予防を行う必要性が示唆された点で意義深いものといえる。今後はデータ数を増やし,要因の検討も行っていきたい。