第52回日本理学療法学術大会

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[P-YB-07] ポスター(予防)P07

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-07-1] 血液腫瘍疾患へのリハビリテーション効果

宮下 崇, 岡崎 雅樹, 向嶋 啓介, 矢部 信明 (福井赤十字病院)

キーワード:がんリハビリテーション, 血液腫瘍, 運動機能

はじめに

血液腫瘍疾患は化学療法を長期間施行する例が多く,様々な有害事象が生じて身体活動量低下が生じ問題となることが多い。血液腫瘍に対するリハビリテーション介入は移植前後の報告が多く,一般的な入院治療時の効果を報告したものは多くない。本研究の目的は当院での血液腫瘍患者に対するリハビリテーションの効果を,運動機能,日常生活動作能力の面から検討することである。

方法

2014年9月から2016年9月の期間中,血液腫瘍疾患に対してがん算定でリハビリテーションを行ったものを対象とした。転帰が死亡となったもの,身体機能評価が未実施のものは除外した。がん患者の全身状態・機能障害の評価として,Performance Status(以下PS),日常生活動作評価尺度であるFunctional Independence Measure(以下FIM)を用い,開始時,終了時で点数を比較した。身体機能評価は,10m歩行,3m timed up& go test(以下TUG),片脚立ち,6分間歩行テスト,握力を,計測が可能となった時点と終了時に測定した。運動療法介入は,ストレッチング,筋力トレーニング,歩行練習,バランス練習,有酸素運動等を個別に組み合わせて行った。統計処理は対応のあるt検定を用いて行い,有意水準は危険率5%未満とした。

結果

対象となる患者数は20例で,男性7名,女性13名,年齢は71.2±10.2歳であった。疾患内訳は,悪性リンパ腫19例(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫14例,濾胞性リンパ腫4例,血管免疫芽球性T細胞リンパ腫1例),白血病1例であった。治療内容は全例が各疾患に対応した化学療法を施行され,3例は放射線治療が追加された。体重は治療開始前が55.6±10.4kg,治療終了時が51.3±10.5kgと有意な低下を示した(P<0.01)。PSは開始時1.9±1.0から終了時1.8±0.8と有意差を認めなかった。FIMは95.9±20.7点から113.6±11.8点で有意差を認め(P<0.01),運動項目が63.4±18.3から79.3±10.2と有意な改善を示し,認知項目では有意差を認めなかった。身体機能評価では10m歩行が9.5±3.3秒から8.7±3.5秒,TUGが12.4±5.4秒から10.9±4.7秒,片脚立ちが14.6±17.0秒から19.0±20.5秒と改善傾向であったが有意差は認めなかった。6分間歩行テストは348.1±59.8mから396.0±66.0mと有意な改善を認めた(P<0.05)。一方,握力は23.1±8.9kgから20.8±8.7kgと有意な低下を認めた(P<0.05)。

結論

歩行速度,バランス能では有意差はないが改善傾向を示し,運動耐容能,FIMで有意な改善が認められた。筋力低下の原因としては,摂食量低下による体重減少に伴う筋萎縮が考えられる。強力な化学療法による体重減少で筋力の低下は避けられないが,運動耐容能を初めとした身体のパフォーマンスが向上したことで日常生活動作能力の改善につながったと考えられる。血液腫瘍疾患に対しての治療中に,リハビリテーションを実施することで身体機能を向上させて日常生活動作能力を改善させる可能性が示唆される。