[P-YB-07-3] 当院の周術期がん患者早期退院プログラムにおける身体機能の比較
キーワード:がん, 早期退院, 腹腔鏡手術
【はじめに,目的】
がんの治療手段として手術療法が行われるが,近年は手術に伴う侵襲を少なくする目的で腹腔鏡手術が増えている。当院では腹腔鏡補助下で行われる胃がん,結腸がん,一部の直腸がんの手術について,術後約5日間で退院する早期退院プログラムに取り組んでいる。この取り組みの中で,リハビリテーションでは理学療法士が術前の身体機能評価と,術後の早期離床および身体機能の再評価を行っている。現状では術前後の患者の身体機能が,早期退院プログラム達成の可否に影響を与えるかという点について,明らかになっていない状況であった。本研究は,術前および術後の身体機能が早期退院に影響を与えるか検証することを目的とした。
【方法】
平成27年1月1日~平成28年3月1日で,当院消化器外科で腹腔鏡手術を行った胃がん,結腸がん,直腸がん(人工肛門造設や会陰部切除を伴わない場合)患者で,早期退院プログラムの適応となった85名を抽出した。85名のうち自立歩行が可能で,データ欠損を除外した70名を本研究の対象とした。データ抽出は過去のカルテを遡り,後ろ向きに調査した。対象は男性38名,女性32名,疾患は胃がん27名,結腸がん38名,直腸がん5名であった。術後データは術後5~7日目の値を用いた。
術後5日目に医師から退院許可となった群を早期退院群(31名),6日以降の退院許可となった群を退院遅延群(39名)の2群に分けて比較した。年齢は早期退院群:67.9±9.8歳(男性17名,女性14名),退院遅延群:69.1±10.7歳(男性18名,女性21名)であった。
カルテより術前後のアルブミン値(ALB),ヘモグロビン値,C反応蛋白値(CRP),疼痛(NRS),6分間歩行距離(6MWD)を抽出した。その他,術前の握力,%肺活量,1秒率(Gaensler)を抽出した。6MWDは,術前後での変化率:(術後の値/術前の値)×100を算出した。統計処理は対応のないt検定を行った(有意水準5%未満)。統計ソフトはIBM SPSS23を使用した。
【結果】
群間で男女や疾患の割合に有意差はなかった。早期退院群では,退院遅延群と比較して術後CRPが有意に低く(4.6±3.3 vs 8.4±4.2mg/dl),術後ALB(3.1±0.3 vs 2.8±0.4g/dl),術後6MWD(375.6±91.0 vs 315.9±109.2m),6MWD変化率(80.4±12.8 vs 70.7±20.6%)では有意に高い結果となった。術前の値,疼痛は群間で有意差がなかった。
【結論】
結果より,炎症値が低く,術前からの歩行距離低下の割合が低かった者は早期退院可能であった。今後の展望として,筋力やバランス,呼吸機能の変化を前向き研究として検証し,早期退院の支援において理学療法士がどのような形で関わる必要があるか検討が必要であると考える。
がんの治療手段として手術療法が行われるが,近年は手術に伴う侵襲を少なくする目的で腹腔鏡手術が増えている。当院では腹腔鏡補助下で行われる胃がん,結腸がん,一部の直腸がんの手術について,術後約5日間で退院する早期退院プログラムに取り組んでいる。この取り組みの中で,リハビリテーションでは理学療法士が術前の身体機能評価と,術後の早期離床および身体機能の再評価を行っている。現状では術前後の患者の身体機能が,早期退院プログラム達成の可否に影響を与えるかという点について,明らかになっていない状況であった。本研究は,術前および術後の身体機能が早期退院に影響を与えるか検証することを目的とした。
【方法】
平成27年1月1日~平成28年3月1日で,当院消化器外科で腹腔鏡手術を行った胃がん,結腸がん,直腸がん(人工肛門造設や会陰部切除を伴わない場合)患者で,早期退院プログラムの適応となった85名を抽出した。85名のうち自立歩行が可能で,データ欠損を除外した70名を本研究の対象とした。データ抽出は過去のカルテを遡り,後ろ向きに調査した。対象は男性38名,女性32名,疾患は胃がん27名,結腸がん38名,直腸がん5名であった。術後データは術後5~7日目の値を用いた。
術後5日目に医師から退院許可となった群を早期退院群(31名),6日以降の退院許可となった群を退院遅延群(39名)の2群に分けて比較した。年齢は早期退院群:67.9±9.8歳(男性17名,女性14名),退院遅延群:69.1±10.7歳(男性18名,女性21名)であった。
カルテより術前後のアルブミン値(ALB),ヘモグロビン値,C反応蛋白値(CRP),疼痛(NRS),6分間歩行距離(6MWD)を抽出した。その他,術前の握力,%肺活量,1秒率(Gaensler)を抽出した。6MWDは,術前後での変化率:(術後の値/術前の値)×100を算出した。統計処理は対応のないt検定を行った(有意水準5%未満)。統計ソフトはIBM SPSS23を使用した。
【結果】
群間で男女や疾患の割合に有意差はなかった。早期退院群では,退院遅延群と比較して術後CRPが有意に低く(4.6±3.3 vs 8.4±4.2mg/dl),術後ALB(3.1±0.3 vs 2.8±0.4g/dl),術後6MWD(375.6±91.0 vs 315.9±109.2m),6MWD変化率(80.4±12.8 vs 70.7±20.6%)では有意に高い結果となった。術前の値,疼痛は群間で有意差がなかった。
【結論】
結果より,炎症値が低く,術前からの歩行距離低下の割合が低かった者は早期退院可能であった。今後の展望として,筋力やバランス,呼吸機能の変化を前向き研究として検証し,早期退院の支援において理学療法士がどのような形で関わる必要があるか検討が必要であると考える。