The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-08] ポスター(予防)P08

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-08-1] 勤労者の筋量減少が筋力と運動機能に与える影響

安田 広江 (秋田労災病院中央リハビリテーション部)

Keywords:勤労者, サルコペニア, 運動機能

【はじめに,目的】

超高齢化社会を迎え,サルコペニアによる身体機能低下が大きな問題となっている。高齢者を対象とした筋肉量と機能に関する研究は増えているが,若い世代の調査研究はまだ少ない。本研究では,青壮年勤労者を対象に筋肉量と筋力・身体機能の関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】

当院では「労災疾病臨床研究補助金事業」として,平成27年11月から市内の青壮年勤労者の血液データ,筋肉量,脊椎アライメント,運動機能等のデータベースを作成している。

本研究では平成28年9月末までに評価した244名(男性179名,女性65名)を対象とした。対象者の筋肉量,握力,体幹・下肢等尺性筋力,運動機能(Functional Reach Test(以下FRT),歩行速度,Timed Up and Go(以下TUG))を計測した。筋肉量はDXA法で得られた四肢の除脂肪除骨重量を身長の2乗で除した値(Skeltal Muscle Index以下SMI)を用いた。体幹筋力はストレインゲージにより背筋の等尺性筋力を,下肢筋力は徒手筋力計測器により股関節屈筋・膝関節伸展筋の等尺性筋力を計測した。

SMIを基に,Sanadaが提示する日本人のカットオフ値を基準に,筋肉量の正常群,プレサルコペニア群,サルコペニア群の3群に分け,各群間で筋力,身体機能を比較した。統計処理はSPBS V9.6を使用し,一元配置分散分析を行い,有意差のあったものに対してScheffeの多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。

【結果】

対象者は年齢42±12.6歳(男性38±12.3歳,女性42±12.9歳)であった。SMI平均値は男性8.01±0.96 kg/m2,女性6.21±0.91 kg/m2であった。男性は正常群101名,プレサルコペニア群59名,サルコペニア群19名,女性は正常群28名,プレサルコペニア群26名,サルコペニア群11名であった。サルコペニア・プレサルコペニア群を合わせた低筋量者が男性で43.5%,女性では56.9%存在した。

3群間の比較の結果,男性では,握力は3群間で有意差が見られた。背筋力で正常群がサルコペニア群・プレサルコペニア群より有意に高かった。一方,股関節屈筋力ではプレサルコペニア群が正常群に勝っていた。女性では握力と背筋には差がなく,筋力では股関節屈筋力でサルコペニア群が正常群より高かった。男女ともに膝伸展筋力,FRT,歩行速度,TUGでは差が無かった。

【結論】

今回の調査の結果,青壮年において男性で半数近く,女性では半数以上がサルコペニア・プレサルコペニアに相当する低筋量値を示した。筋肉量と筋力の関係では,男性で握力・背筋力に筋肉量の影響が見られたが,身体機能では差がなく,女性では筋肉量の筋力への影響も少なかったことより,青壮年期においては,筋肉量減少が筋力及び身体機能に与える影響は小さいことが判明した。若年期では維持された筋力や機能が,今後加齢に伴い容易に低下することも予想され,高齢期に起こる機能低下がより早期に生じたり,転倒リスクの増加やADL低下が危惧される。