The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-08] ポスター(予防)P08

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-08-4] サルコペニアと転倒発生
地域住民コホート調査GAINA studyでの2年間前向き研究

松本 浩実1, 和田 崇1, 尾崎 まり1, 萩野 浩1,2 (1.鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.鳥取大学医学部保健学科)

Keywords:転倒, サルコぺニア, 前向き調査

【目的】サルコぺニアが地域住民における転倒発生危険因子であるか2年間の前向き調査で明らかにすること。

【方法】

平成26年度鳥取県日野郡日野町において実施した地域住民コホート調査GAINA study第1回目参加者223名(年齢73.6歳,男性82名,女性141名)を対象とした。取り込み基準は1)運動検査が実施可能,2)我々の調査アンケートに自己記入可能かつ3)本研究への参加同意したものとし,除外規定は要介護認定者とした。研究デザインは前向きコホート研究であり,このベースラインに登録された223名の住民のうち平成27年,28年のフォローアップ調査が可能であった住民における2年間での転倒発生を追跡調査した。ベースライン調査にて基本属性ならびに,ベースライン調査以前の転倒歴,変形性膝関節症,骨粗鬆症,変形性腰椎症の診断歴を聴取した。ロコモティブシンドローム(ロコモ)の有無は自己記入式質問紙ロコモ5を用いて行い,6点以上を「ロコモ」と定義した。痛みの評価としてVisual Analouge Scale(VAS),定量的超音波法を用いた骨量測定,インピーダンス法による筋肉量測定,歩行分析装置を用いた歩行速度計測を実施した。サルコぺニアはAsian Working Group for Sarcopeniaの定義にて,補正四肢骨格筋量低下(男性7.0 kg/m2未満,女性5.7 kg/m2未満)のある者のうち,握力低下(男性26 kg未満,女性18 kg未満)もしくは歩行速度低下(<0.8 m/s)のあるものをサルコペニアと定義した。転倒は2年間のフォローアップ期間で1回でも転倒したものを「転倒群」,転倒の無かったものを「非転倒群」として群わけした。2群間の変数をカイ二乗検定,対応のないT検定にて比較した。転倒の有無を従属変数,サルコぺニアの有無を独立変数とし,年齢,性別,BMI,過去の転倒歴,単変量解析にてp値0.05未満の変数で調整した二項ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

ベースライン調査に登録された223名中,60歳未満の10名,介護認定もしくは死亡した9名は対象から除外した。さらに42名はフォローアップが不可能であった。最終的に162名(年齢74.2歳,男性59名,女性103名)を調査対象とした。2年間での転倒頻度は30.8%であり,そのうち3名が骨折した。非転倒群と転倒群の変数比較では過去の転倒歴(8.0% vs 40.0%),ロコモの有無(12.5% vs 28.0%),VAS値(7mmvs 21mm),サルコぺニアの有無(2.7% vs 12.0%)に有意な差があった。その他の変数には有意な群間差はなかった。ロジスティック回帰分析にてサルコぺニア(Odds:7.25,95%CI:1.33-39.56)は有意に転倒を予測した。



【結論】

年齢や転倒歴で調整してもサルコぺニアが転倒に関与したことは,筋肉量低下を起因とした運動機能低下のあるものは将来,転倒しやすいことを示している。前向き調査によってサルコぺニアが未来の転倒を予測したことは,それが地域住民において転倒,骨折の原因となることの裏付けとなった。