[P-YB-10-1] 歩行が自立していない慢性期脳卒中患者における筋力と筋量および筋内脂肪量との関連
Keywords:慢性期脳卒中, 筋力, 筋量
【はじめに,目的】
歩行が自立した慢性期脳卒中患者において,筋量の増大および筋内脂肪量の減少は,筋力の向上に繋がることが明らかとなっている(Ryan, et al., 2011)。一方,臨床では歩行が自立していない慢性期脳卒中患者を対象とすることが多いが,それら患者において,筋力と筋量および筋内脂肪量との間に関連が存在するかどうかは不明である。これら関連を明らかにすることは,歩行が自立していない脳卒中患者に対する効果的な理学療法プログラムの立案に対して,有益な知見を付加することとなると考える。本研究の目的は,歩行が自立していない慢性期脳卒中患者における筋力と筋量および筋内脂肪量との関連を明らかにすることである。
【方法】
対象は,発症から6カ月以上経過した歩行が自立していない脳卒中患者28名とした。認知症と失語症を有する者および麻痺側下肢に随意性がない者は除外した。歩行非自立者は,Functional independence measure歩行スコアにおいて5点以下に該当する者とした。評価項目は,麻痺側と非麻痺側の大腿四頭筋の筋力,筋量,筋内脂肪量およびFugl-Meyer Assessment(FMA)下肢スコアとした。筋力は,徒手保持型筋力測定器を用いて測定された等尺性筋力とした。大腿四頭筋の筋量と筋内脂肪量は,超音波画像診断装置のBモード法で撮影された横断面画像の筋厚と筋輝度から評価した。筋厚と筋輝度の計測には,Image J softwareを用いた。筋厚は,大腿直筋と中間広筋の筋厚の合計値とし,筋輝度は,大腿直筋と中間広筋の輝度の平均値とした。筋輝度は,8 bit gray-scaleを用いて数値化した。筋輝度は筋内脂肪量が多いと高値となり,少ないと低値を示すことで評価される(Pillen, et al., 2006)。統計解析は,麻痺側筋力を従属変数,麻痺側筋厚,筋輝度,FMA下肢スコアを独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。併せて,非麻痺側筋力を従属変数,非麻痺側筋厚,筋輝度を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
麻痺側筋力に寄与する有意な変数として,麻痺側筋輝度(標準偏回帰係数=-0.50)とFMA下肢スコア(標準偏回帰係数=0.42)が採択された(決定係数=0.34)。非麻痺側筋力に寄与する有意な変数としては,非麻痺側筋厚(標準偏回帰係数=0.77)が採択された(決定係数=0.59)。
【結論】
歩行が自立していない慢性期脳卒中患者の麻痺側下肢の筋力は,中枢性運動麻痺よりも筋内脂肪量の説明力がより高くなった。非麻痺側下肢の筋力は,筋内脂肪量よりも筋量の説明力が高い結果となった。歩行が自立していない慢性期脳卒中患者に対する理学療法プログラムの立案を考える上では,非麻痺側では筋量,麻痺側では中枢性運動麻痺だけではなく,筋内脂肪量の変化を含めた理解が求めれるのではと考える。
歩行が自立した慢性期脳卒中患者において,筋量の増大および筋内脂肪量の減少は,筋力の向上に繋がることが明らかとなっている(Ryan, et al., 2011)。一方,臨床では歩行が自立していない慢性期脳卒中患者を対象とすることが多いが,それら患者において,筋力と筋量および筋内脂肪量との間に関連が存在するかどうかは不明である。これら関連を明らかにすることは,歩行が自立していない脳卒中患者に対する効果的な理学療法プログラムの立案に対して,有益な知見を付加することとなると考える。本研究の目的は,歩行が自立していない慢性期脳卒中患者における筋力と筋量および筋内脂肪量との関連を明らかにすることである。
【方法】
対象は,発症から6カ月以上経過した歩行が自立していない脳卒中患者28名とした。認知症と失語症を有する者および麻痺側下肢に随意性がない者は除外した。歩行非自立者は,Functional independence measure歩行スコアにおいて5点以下に該当する者とした。評価項目は,麻痺側と非麻痺側の大腿四頭筋の筋力,筋量,筋内脂肪量およびFugl-Meyer Assessment(FMA)下肢スコアとした。筋力は,徒手保持型筋力測定器を用いて測定された等尺性筋力とした。大腿四頭筋の筋量と筋内脂肪量は,超音波画像診断装置のBモード法で撮影された横断面画像の筋厚と筋輝度から評価した。筋厚と筋輝度の計測には,Image J softwareを用いた。筋厚は,大腿直筋と中間広筋の筋厚の合計値とし,筋輝度は,大腿直筋と中間広筋の輝度の平均値とした。筋輝度は,8 bit gray-scaleを用いて数値化した。筋輝度は筋内脂肪量が多いと高値となり,少ないと低値を示すことで評価される(Pillen, et al., 2006)。統計解析は,麻痺側筋力を従属変数,麻痺側筋厚,筋輝度,FMA下肢スコアを独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。併せて,非麻痺側筋力を従属変数,非麻痺側筋厚,筋輝度を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
麻痺側筋力に寄与する有意な変数として,麻痺側筋輝度(標準偏回帰係数=-0.50)とFMA下肢スコア(標準偏回帰係数=0.42)が採択された(決定係数=0.34)。非麻痺側筋力に寄与する有意な変数としては,非麻痺側筋厚(標準偏回帰係数=0.77)が採択された(決定係数=0.59)。
【結論】
歩行が自立していない慢性期脳卒中患者の麻痺側下肢の筋力は,中枢性運動麻痺よりも筋内脂肪量の説明力がより高くなった。非麻痺側下肢の筋力は,筋内脂肪量よりも筋量の説明力が高い結果となった。歩行が自立していない慢性期脳卒中患者に対する理学療法プログラムの立案を考える上では,非麻痺側では筋量,麻痺側では中枢性運動麻痺だけではなく,筋内脂肪量の変化を含めた理解が求めれるのではと考える。