The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-10] ポスター(予防)P10

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-10-2] スポーツ導入まで支援した大腿切断後の一症例

俵 紘志 (福山市民病院リハビリテーション科)

Keywords:大腿切断, 障がい者スポーツ, うつ

【はじめに,目的】

交通事故外傷後は心的外傷後ストレス障害(以下,PTSD)や抑うつ状態を発症することがあり,下肢切断者においては,高位切断ほど体脂肪量が多く生活習慣病合併のリスクが高いといわれている。一般的に,抑うつ状態や生活習慣病には運動が有効とされているが,障がいのある在宅生活者は,健常者と比較して日々のエネルギー消費量が少なく,スポーツ活動を通した運動の機会も限られている現状がある。
今回,交通外傷により右大腿切断を呈した一症例の入院から退院後の外来リハビリテーションに関わる中で,スポーツ導入までを支援したので,考察を加え報告する。

【方法】

20歳代,男性。妻・子との3人暮らし。通勤時の交通外傷による右大腿切断。特記すべき既往歴なし。合併障害として右大腿・会陰部・臀部・肛門周囲軟部損傷,骨盤開放骨折(両恥坐骨・仙骨),壊死性筋膜炎。
〈理学療法開始時評価〉
意識レベルはJCSII-30,ICUにて人工呼吸器挿管・鎮静管理中。
断端長は13.8cm。著明な低栄養状態と両上下肢MMT1~2レベルのICU-AW呈していた。
〈入院中の経過〉
受傷同日に右下腿切断術と骨盤創外固定術,人工肛門増設術施行,11病日に右大腿切断術施行された。27病日に人工呼吸器抜管し,59病日に絞扼性イレウスに対し解除術施行,82病日に一般病棟転床し,195病日に自宅退院した。
理学療法は,17病日目にベッド上での残存肢機能練習より開始した。創部の治癒を優先させるため,積極的な離床は許可されず,56病日より車いす離床開始,65病日より平行棒内立位,77病日より平行棒内歩行,88病日より松葉枝歩行開始した。
〈退院時評価〉
両上肢,左下肢MMT5レベル。車いす自走自立,両ロフストランド杖にて歩行自立。
〈退院後の経過〉
退院後間もなく急激な体重増加(退院時+4.0kg)が認められた。
279病日に右大腿骨追加切除(断端長;12.5cm)施行され,362病日には人工肛門閉鎖術・ストマ縫合閉鎖術施行した。今後,専門病院での義足作成予定あり,コンディショニング目的で当院外来リハビリフォロー中。
減量を目的としたスポーツ導入だが,精神的効果をみるため,スポーツ導入前後で日本版自己評価式抑うつ性尺度(以下,SDS)を使用した抑うつ性の評価を実施。また,事故後のPTSDの評価は臨床心理士に依頼した。

【結果】

臨床心理士の評価ではPTSDの可能性は低いとされた。SDSはスポーツ導入前後で50点から39点であった。スポーツ導入から半年で体重は退院時と同じ状態にまで戻った。

【結論】

障がいのある在宅生活者のスポーツ導入は抑うつ状態や生活習慣病の予防・改善の一つとなることが推察された。また,日々のエネルギー消費量が少ない障がい者に対して,スポーツに関する情報提供を行えるよう,地域のスポーツ施設と連携をとり支援していくことも必要と思われた。