[P-YB-11-2] 骨折連鎖の予防を目的とした退院先への適切な情報提供を目指して
~退院先別の骨粗鬆症・転倒リスクの検討~
Keywords:骨粗鬆症リエゾンサービス, 大腿骨近位部骨折, 連携
【はじめに,目的】
近年骨粗鬆症による骨折リスクと骨折発生数の低減を目的に骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)が様々な形で行われている。急性期病院におけるOLSのひとつに短い入院期間の中で骨粗鬆症に対する評価を行い,次の施設へその内容を伝達し,連携を図ることがある。その中でもし退院先の違いにより骨粗鬆症および転倒リスクの違いが存在すれば,その情報を提供することで二次骨折の予防がより可能になると考えた。そこで,今回は大腿骨近位部骨折症例に対して,退院先別による骨粗鬆症および転倒リスクの違いの有無を明確にすることを目的に調査を行った。
【方法】
対象は当院で大腿骨近位部骨折に対して手術を施行した447例のうち,入院中死亡例や合併症発生例などを除いた358例とした。調査項目は,個人属性として性別,年齢,BMI,医学属性として骨折型,術式,受傷前の所在,大腿骨近位部骨折の既往歴の有無,術後在院日数,DXAの実施有無,心身・身体属性として歩行能力(受傷前,退院時),握力,健側の下腿周径(ともに術前,術後14日目),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とした。検討は対象者を自宅退院群(自宅群),病院転院群(病院群),施設転院群(施設群)の3群に分類し,各項目を比較した。統計手法は,対応のない一元配置分散分析またはKruskal-Wallis検定を行い,有意性が認められた場合は多重比較検定(Scheffe法)を行った。カテゴリー変数はχ2乗検定を行った。
【結果】
年齢は自宅群73.0歳(41例),病院群84.0歳(232例),施設群86.7歳(85例)とすべての群間で有意差を認め,施設群は女性が95.3%と有意に多かった。また,施設群は受傷前も施設に入所していたものが92.9%と有意に多く,反対側の大腿骨近位部骨折の既存骨折が23.5%と有意に多いうえ,術後在院日数は14.0日と自宅群や病院群(ともに17.0日)より有意に短かった。心身・身体属性は,歩行能力が受傷前・退院時ともに施設群は歩行器または車椅子を使用しているものが有意に多く,自宅群では支持物を使用せず歩行しているものが多かった。握力や下腿周径,HDS-Rはすべて施設群が自宅群,病院群に比べて有意に低値となった。
【結論】
諸家の報告では,骨粗鬆症リスクとして高齢,女性,脆弱性骨折の既往などが,転倒リスクとして,高齢,下肢筋力,歩行能力,認知機能,バランス能力などが挙げられている。今回,施設群は高齢女性が多く,認知機能が低下しており,歩行能力が不良で,下肢筋力と関係があるといわれる握力や下腿周径において低値であることから骨粗鬆症および転倒リスクが非常に高い状態であった。また,施設群は受傷前も施設に入所していたものが多く,術後早期に骨折前と同じ状況を繰り返す可能性の高い元の施設に戻る傾向があった。したがって,施設群は骨折連鎖の予防のためにも,他群より詳細な情報提供が必要であると思われた。
近年骨粗鬆症による骨折リスクと骨折発生数の低減を目的に骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)が様々な形で行われている。急性期病院におけるOLSのひとつに短い入院期間の中で骨粗鬆症に対する評価を行い,次の施設へその内容を伝達し,連携を図ることがある。その中でもし退院先の違いにより骨粗鬆症および転倒リスクの違いが存在すれば,その情報を提供することで二次骨折の予防がより可能になると考えた。そこで,今回は大腿骨近位部骨折症例に対して,退院先別による骨粗鬆症および転倒リスクの違いの有無を明確にすることを目的に調査を行った。
【方法】
対象は当院で大腿骨近位部骨折に対して手術を施行した447例のうち,入院中死亡例や合併症発生例などを除いた358例とした。調査項目は,個人属性として性別,年齢,BMI,医学属性として骨折型,術式,受傷前の所在,大腿骨近位部骨折の既往歴の有無,術後在院日数,DXAの実施有無,心身・身体属性として歩行能力(受傷前,退院時),握力,健側の下腿周径(ともに術前,術後14日目),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とした。検討は対象者を自宅退院群(自宅群),病院転院群(病院群),施設転院群(施設群)の3群に分類し,各項目を比較した。統計手法は,対応のない一元配置分散分析またはKruskal-Wallis検定を行い,有意性が認められた場合は多重比較検定(Scheffe法)を行った。カテゴリー変数はχ2乗検定を行った。
【結果】
年齢は自宅群73.0歳(41例),病院群84.0歳(232例),施設群86.7歳(85例)とすべての群間で有意差を認め,施設群は女性が95.3%と有意に多かった。また,施設群は受傷前も施設に入所していたものが92.9%と有意に多く,反対側の大腿骨近位部骨折の既存骨折が23.5%と有意に多いうえ,術後在院日数は14.0日と自宅群や病院群(ともに17.0日)より有意に短かった。心身・身体属性は,歩行能力が受傷前・退院時ともに施設群は歩行器または車椅子を使用しているものが有意に多く,自宅群では支持物を使用せず歩行しているものが多かった。握力や下腿周径,HDS-Rはすべて施設群が自宅群,病院群に比べて有意に低値となった。
【結論】
諸家の報告では,骨粗鬆症リスクとして高齢,女性,脆弱性骨折の既往などが,転倒リスクとして,高齢,下肢筋力,歩行能力,認知機能,バランス能力などが挙げられている。今回,施設群は高齢女性が多く,認知機能が低下しており,歩行能力が不良で,下肢筋力と関係があるといわれる握力や下腿周径において低値であることから骨粗鬆症および転倒リスクが非常に高い状態であった。また,施設群は受傷前も施設に入所していたものが多く,術後早期に骨折前と同じ状況を繰り返す可能性の高い元の施設に戻る傾向があった。したがって,施設群は骨折連鎖の予防のためにも,他群より詳細な情報提供が必要であると思われた。