第52回日本理学療法学術大会

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[P-YB-11] ポスター(予防)P11

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-11-3] 心大血管リハビリ対象者における屋外活動の効果
POMS2成人用短縮版を使用して

曽根 典法1, 藤平 保茂2 (1.舞鶴共済病院リハビリテーション科, 2.大阪河﨑リハビリテーション大学理学療法学専攻)

キーワード:心大血管リハ, POMS, 野外心リハ

【はじめに,目的】

心大血管リハビリを施行する施設で,屋外活動の報告がある。当院でも外来患者を対象に年に数回の屋外歩行を行なっている。
過去の参加者へのアンケートより屋外活動では運動よりも患者同士の情報交換など精神的な効果を期待する傾向があった。そこで今回,気分プロフィール検査(POMS2)を用いて,本活動の効果判定を試みた。

【方法】

屋外活動は,当院から約1.5km先の公園を目的地とする往復約3kmの歩行を行なった。
スタッフは医師・看護師・理学療法士・臨床検査技師各1名,計4名で対応した。
目的地では,80kcalおやつの試食や,グループに分かれての情報交換等を30分程度行なった。
検査対象として,屋外歩行に参加した15名のうち,同意の得られた6名とした。
内訳は男性5名,女性1名。平均年齢68.2歳(50~84歳)であった。
屋外活動前1週間以内の外来リハビリ直後に事前検査を施行。そして,屋外活動直後に再度検査を施行した。
気分状態の測定にはMcNair.D.M.らの開発し,横山らが監訳した日本語版気分プロフィール検査(Profile of Mood States 2nd edition成人用短縮版,以下POMS2)を用いた。
評価の尺度は怒り-敵意(AH),混乱-当惑(CB),抑うつ-落込み(DD),疲労-無気力(FI),緊張-不安(TA),活気-活力(VA),友好(F)の7項目で広範な気分状態を網羅する。
またAH+CB+DD+FI+TA-VAをTMD(Total Mood Disturbance,総合的気分状態)得点とする。これは,苦痛や情動障害の程度の指標になるとされる。
手順として検査結果の素得点をT得点に換算する。これは測定基準を正規化し,平均値を50,標準偏差を10とする得点である。各尺度のT得点に対し統計処理を行なった。
検定はWilcoxonの符号付き順位和検定を用いた。
また,特に活動前後で分散の差が大きかったAH,CBについて等分散性の検定を行なった。
検定はF検定を用いた。
いずれも有意水準を5%とした。
検定の多重性の問題を避けるためにBonferroniの方法で補正し有意水準を0.5%とした。統計処理にはstatcel2を用いた。

【結果】

各平均値を事前・事後で示す。AH:47.3・39.5。CB:51.7・43.2。DD:51.5・46.3。FI:45.2・42.2。TA:45.7・43.8。VA:54.2・53.2。F:57.2・54.3。TMD:46.5・41.3。次に各p値を示す。AH:p=0.068,CB:p=0.068,DD:p=0.066,FI:p=0.273,TA:p=0.588,VA:p=1,F:p=0.144,TMD:p=0.168。
F検定,p値,AH:p=0.00085。CB:p=0.0162。
検定の結果,AHのF検定のみ有意差を認めた。
これは,AHの尺度のばらつきが減り,40点付近に集約される。つまり,怒り-敵意が改善したことを示す。
運動は普段の外来リハビリで施行している。外出や他の患者とのコミュニケーションが良い効果を生んだと考える。

【結論】

POMS2成人用短縮版を用いて,屋外活動の効果判定を試みた。
怒り-敵意(AH)尺度の改善に効果を認めた。
屋外の軽い運動と,患者間のコミュニケーションの効果を示すと考える。