[P-YB-12-1] 介護度の異なる要支援高齢者の身体組成の縦断的変化
Keywords:要支援高齢者, 身体組成, 筋量
【はじめに,目的】
わが国では高齢社会が進展し,年々要介護認定を受ける高齢者が増え,医療保険のみならず介護保険での医療費が高くなっている。このため介護予防に対する関心が高まり,介護予防における理学療法の必要性が注目されている。しかし,介護予防において理学療法の必要性を述べるに当たり,要支援者の身体組成をもとに報告した例は少ないように見受けられる。本研究では,要支援認定を受け基本的な日常生活が概ね自立している高齢者を対象に身体組成の測定を1年間行い,要支援者の身体組成の特性を調べた。そして,介護度別での下肢・体幹を中心に筋量の違いを明らかにし,介護予防理学療法の必要性を明らかにすることを目的に行った。
【方法】
対象は,当院介護予防通所リハビリテーション利用者女性18名で介護度の内訳は要支援1が10名,要支援2が8名である。属性は要支援1(年齢80.1±5.2歳,身長147.2±4.0cm,体重50.5±6.8kg,Body Mass Index(BMI)23.2±2.3kg/m2),要支援2(年齢81.6±5.9歳,身長150.4±5.8cm,体重55.2±8.7kg,BMI24.3±2.7 kg/m2)(平均±標準偏差)で有意差は認められなかった。対象者にはフィジョンMD((株)フィジョン社製)を用い,初回の測定を1Mとし,3か月毎に3M・6M・9M・12Mと合計5回の筋量(全身筋肉量・左右大腿・左右下腿・左右体幹)を測定し,1年間における身体組成の経過を追った。
解析は,属性における各項目と要支援1と要支援2とで評価月毎に各部位の筋肉量をMann-WhitneyのU検定を用いて行った。また,各介護度別にFriedman検定を行い,有意差が認められた場合にはWilcoxonの符号付順位検定で多重比較を行った。使用統計ソフトはSPSS statistics 23を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
要支援1と要支援2の比較では,体幹筋量の6M(支援1:6.6±0.8kg,支援2:5.8±0.8kg)でのみ差がみられた。介護度の縦断的変化では,要支援1の下腿筋量と,要支援2の全身筋量および大腿筋量で有意差が認められ,要支援2の全身筋量において,1M(15.3±2.7kg)に比べ9M(14.3±2.0kg)で有意に低下していた。
【結論】
要支援1に比べて要支援2では他部位の筋量よりも体幹部で差がみられ,姿勢保持能力などに影響を及ぼすと考えられ,動作の不安定性が増す可能性が考えられる。介護度別では,各部位の筋量の変化には特徴があり,特に要支援2では全身・大腿筋量で有意差が示されたことは,加齢以外の要因で筋量が低下する可能性が考えられ,介護度の違いにより,その変化に差があることが示唆される。また,全身筋量では有意に低下する傾向もみられ,要支援2の方がより要介護状態になる可能性が高いことが明らかとなった。これより,要支援者への理学療法を考えたときに,下肢のみならず,体幹部へのアプローチを積極的に行うことで介護予防への効果が期待できるのではないかと考えられる。
わが国では高齢社会が進展し,年々要介護認定を受ける高齢者が増え,医療保険のみならず介護保険での医療費が高くなっている。このため介護予防に対する関心が高まり,介護予防における理学療法の必要性が注目されている。しかし,介護予防において理学療法の必要性を述べるに当たり,要支援者の身体組成をもとに報告した例は少ないように見受けられる。本研究では,要支援認定を受け基本的な日常生活が概ね自立している高齢者を対象に身体組成の測定を1年間行い,要支援者の身体組成の特性を調べた。そして,介護度別での下肢・体幹を中心に筋量の違いを明らかにし,介護予防理学療法の必要性を明らかにすることを目的に行った。
【方法】
対象は,当院介護予防通所リハビリテーション利用者女性18名で介護度の内訳は要支援1が10名,要支援2が8名である。属性は要支援1(年齢80.1±5.2歳,身長147.2±4.0cm,体重50.5±6.8kg,Body Mass Index(BMI)23.2±2.3kg/m2),要支援2(年齢81.6±5.9歳,身長150.4±5.8cm,体重55.2±8.7kg,BMI24.3±2.7 kg/m2)(平均±標準偏差)で有意差は認められなかった。対象者にはフィジョンMD((株)フィジョン社製)を用い,初回の測定を1Mとし,3か月毎に3M・6M・9M・12Mと合計5回の筋量(全身筋肉量・左右大腿・左右下腿・左右体幹)を測定し,1年間における身体組成の経過を追った。
解析は,属性における各項目と要支援1と要支援2とで評価月毎に各部位の筋肉量をMann-WhitneyのU検定を用いて行った。また,各介護度別にFriedman検定を行い,有意差が認められた場合にはWilcoxonの符号付順位検定で多重比較を行った。使用統計ソフトはSPSS statistics 23を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
要支援1と要支援2の比較では,体幹筋量の6M(支援1:6.6±0.8kg,支援2:5.8±0.8kg)でのみ差がみられた。介護度の縦断的変化では,要支援1の下腿筋量と,要支援2の全身筋量および大腿筋量で有意差が認められ,要支援2の全身筋量において,1M(15.3±2.7kg)に比べ9M(14.3±2.0kg)で有意に低下していた。
【結論】
要支援1に比べて要支援2では他部位の筋量よりも体幹部で差がみられ,姿勢保持能力などに影響を及ぼすと考えられ,動作の不安定性が増す可能性が考えられる。介護度別では,各部位の筋量の変化には特徴があり,特に要支援2では全身・大腿筋量で有意差が示されたことは,加齢以外の要因で筋量が低下する可能性が考えられ,介護度の違いにより,その変化に差があることが示唆される。また,全身筋量では有意に低下する傾向もみられ,要支援2の方がより要介護状態になる可能性が高いことが明らかとなった。これより,要支援者への理学療法を考えたときに,下肢のみならず,体幹部へのアプローチを積極的に行うことで介護予防への効果が期待できるのではないかと考えられる。