[P-YB-13-5] 奈良県の小学校における運動器検診の取り組みと今後の課題
Keywords:運動器検診, 小学校, 体力低下
【はじめに,目的】
近年,子供の体力低下が社会的問題として取り上げられており,文部科学省によると昭和60年頃と比較すると低水準であると報告されている。また,運動器の10年・日本協会(以下:運動器の10年)では,子供の体力低下の原因は運動不足と運動過多に二極化していると言われている。それらのことから,小学校における運動器検診が今年度より必須となり,全国で様々な動きがみられる。大阪では,大阪府理学療法士会が会を挙げて運動器検診に取り組んでおり,理学療法士が検診に参加できるよう研修と登録制度が設けられている。奈良でも以前より理学療法士が積極的に学校と関わり,体力テストや運動器検診に関わっている。
そこで,今回は奈良の一部の小学校で行われた運動器検診の結果を踏まえ,今後理学療法士が運動器検診に参加する意義を検討した。
【方法】
対象は奈良県下の小学校4校の四年生,五年生,六年生258名とした。方法は全国で行われている運動器検診に準じて奈良県により作成された運動器に関する保健調査票による保護者のチェックを実施し,そこで抽出された生徒に対して各学校の養護教諭,学校医による運動器検診を実施した。
【結果】
四年生,五年生,六年生258名のうち38名(14.7%)が家族により何らかの項目にチェックが入り,そのうち14名(5%)が学校医によって経過観察および二次検診該当者と判断された。また,14名のうち9名(64%)が運動部に所属していた。
【結論】
運動器の10年では1~2割程度の生徒が身体の問題を抱えていると推定しており,今回の調査では5%程度であったため,運動器の10年の推定を下回る結果となった。また,体力低下は,運動不足と運動過多の二極化がみられていると報告しているが,今回の結果からは運動過多と考えられる生徒がやや多かった。運動器の10年の報告と異なる結果となった要因としては,保健調査票の判断内容に少し不明確な点があり,保護者によるチェックの時点で取りこぼしが起きている可能性があること,学校医による検診の判断基準が定まっていないこと,調査した小学校における学校医に内科医が多く,運動器の問題に対する判断にバラつきがみられた可能性などが考えられる。現状では上記の点から生徒の運動器に関する問題を正確に捉えるのは困難ではないかと考える。また,検診をスクリーニングと捉えると本来は生徒全員を対象としてチェックするのが望ましいが,学校医が生徒全員を対象に運動器検診を行うのは現実的ではない。そこで,我々理学療法士が医師の検診に先立って生徒全員のチェックをすることや保健調査票や評価基準の改訂に関わることなど,学校や医師会と組織的に積極的な連携を取るよう働きかけることで,運動器検診の質を向上させ,子供の障害予防に寄与できる可能性があると考えられる。
近年,子供の体力低下が社会的問題として取り上げられており,文部科学省によると昭和60年頃と比較すると低水準であると報告されている。また,運動器の10年・日本協会(以下:運動器の10年)では,子供の体力低下の原因は運動不足と運動過多に二極化していると言われている。それらのことから,小学校における運動器検診が今年度より必須となり,全国で様々な動きがみられる。大阪では,大阪府理学療法士会が会を挙げて運動器検診に取り組んでおり,理学療法士が検診に参加できるよう研修と登録制度が設けられている。奈良でも以前より理学療法士が積極的に学校と関わり,体力テストや運動器検診に関わっている。
そこで,今回は奈良の一部の小学校で行われた運動器検診の結果を踏まえ,今後理学療法士が運動器検診に参加する意義を検討した。
【方法】
対象は奈良県下の小学校4校の四年生,五年生,六年生258名とした。方法は全国で行われている運動器検診に準じて奈良県により作成された運動器に関する保健調査票による保護者のチェックを実施し,そこで抽出された生徒に対して各学校の養護教諭,学校医による運動器検診を実施した。
【結果】
四年生,五年生,六年生258名のうち38名(14.7%)が家族により何らかの項目にチェックが入り,そのうち14名(5%)が学校医によって経過観察および二次検診該当者と判断された。また,14名のうち9名(64%)が運動部に所属していた。
【結論】
運動器の10年では1~2割程度の生徒が身体の問題を抱えていると推定しており,今回の調査では5%程度であったため,運動器の10年の推定を下回る結果となった。また,体力低下は,運動不足と運動過多の二極化がみられていると報告しているが,今回の結果からは運動過多と考えられる生徒がやや多かった。運動器の10年の報告と異なる結果となった要因としては,保健調査票の判断内容に少し不明確な点があり,保護者によるチェックの時点で取りこぼしが起きている可能性があること,学校医による検診の判断基準が定まっていないこと,調査した小学校における学校医に内科医が多く,運動器の問題に対する判断にバラつきがみられた可能性などが考えられる。現状では上記の点から生徒の運動器に関する問題を正確に捉えるのは困難ではないかと考える。また,検診をスクリーニングと捉えると本来は生徒全員を対象としてチェックするのが望ましいが,学校医が生徒全員を対象に運動器検診を行うのは現実的ではない。そこで,我々理学療法士が医師の検診に先立って生徒全員のチェックをすることや保健調査票や評価基準の改訂に関わることなど,学校や医師会と組織的に積極的な連携を取るよう働きかけることで,運動器検診の質を向上させ,子供の障害予防に寄与できる可能性があると考えられる。