The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-15] ポスター(予防)P15

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-15-1] 地域在住高齢者のがん罹患に関する自己報告の妥当性検証

井平 光1, 牧野 圭太郎2,3, 木原 由里子2, 志水 宏太郎2, 山口 亨2, 伊藤 一成2, 田井 啓太2, 牧迫 飛雄馬3, 島田 裕之3, 古名 丈人2 (1.国立がん研究センター社会と健康研究センター疫学研究部, 2.札幌医科大学大学院保健医療学研究科, 3.国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター予防老年学研究部)

Keywords:がんサバイバー, 虚弱高齢者, 陽性的中率

【はじめに,目的】

がん罹患の高齢化を背景に,高齢がん罹患者の運動機能に着目した報告が増加している。実際に,高齢がん罹患者の歩行機能や筋力が低下していることが示されており,この対象への改善策が課題となっている。これらの報告のなかで,がんの罹患を判断するために,基本的には調査時の自己報告によって得られた情報を採用する場合が多い。しかしながら,その自己報告が正確なものであるかどうかは検証が必要であり,特に高齢者のがん罹患に関する妥当性の検証はなされていない。本研究では,75歳以上の地域在住高齢者を対象に,がん罹患に関する自己報告の妥当性を検証し,自己報告の有無による縦断的な機能変化を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は,測定調査会に参加した75歳以上の地域在住高齢者411名のうち,がん罹患に関する調査データに不備のあった1名を除外した410名(男性169名,女性241名,平均年齢80.0±4.1歳)とした。ベースライン時におけるがんの自己報告については,がん罹患の有無,罹患時期,がんの種類などを面接聴取した。また,がんの発症を同定するために,後期高齢者医療制度における診療報酬請求(レセプト)情報を活用した。さらに,機能指標として運動機能,認知機能,および健康関連指標を測定した。統計解析は,レセプト情報によってがん罹患を同定された者のうち,がんの罹患を自ら報告した高齢者の陽性的中率を算出し,自己報告による妥当性を検証した。また,がん罹患者を自己報告群と非自己報告群に分類し,2群間の各変数を比較した。さらに,2群間における各機能の縦断的変化についても検討した。


【結果】

レセプト情報によると,ベースライン調査の時点でがんに罹患していた者は51名だった。このうち,がんに罹患したことを自ら報告した高齢者は28名であり,陽性的中率は54.9%だった。報告群と非報告群の比較では,年齢(p=0.710)と性別(p=0.601)に有意な差は認められなかった。また,測定したすべての変数で有意な差は認められなかった。さらに,二元配置分散分析の結果からも,交互作用の見られた項目はなかった。


【結論】

国立がん研究センターによると,40~69歳を対象とした自己報告によるがん罹患の陽性的中率は53%であった。本研究においても同等の結果が得られ,がん罹患に関しては自己報告による調査だけでは正確に把握することが難しいことを示唆するものであった。理由として,高齢者のなかにはがんに対して誤った理解や病識を有している方がおり,自らをがん罹患者と表出することに抵抗感がある可能性が挙げられた。また,自己報告の有無によって諸機能の差異は認められず,将来的な機能低下に影響を及ぼすことも明らかにされなかった。今後は,がん罹患の陽性的中率を上げる工夫をするとともに,虚弱な高齢がん罹患者に対して機能向上を目的としたアプローチを検討する必要がある。