[P-YB-15-4] 当院における退院時の歩行能力と再入院までの在宅日数との関係性
キーワード:歩行能力, 在宅日数, 再入院
【はじめに,目的】
当院では身体機能の維持・向上だけでなく,予防を念頭に置いた理学療法を実施している。しかし歩行能力が向上して退院しても,すぐに再入院してくる患者が多い印象があった。歩行は高齢者の身体活動量を維持するのに導入しやすいといわれており,退院時の歩行能力は退院後の活動量と大きく関係していると考えられる。
ひととのつながりが認知症を発症するリスクを軽減させる因子として注目されている。退院後に外出できるレベルの歩行能力を獲得することは,ひとと会いつながりを維持することを可能とし,認知症の予防につながると考えられた。加えて,身体活動の量は,循環障害,2型糖尿病,骨粗鬆症,癌,うつ病といった疾患と関係しているという報告も散見される。
以上のことから,退院時の歩行能力は自宅での活動量に影響を与え,歩行能力が高い場合は活動量が維持され在宅生活の期間も長期化すると予想された。歩行能力だけが在宅生活を維持するための決定因子ではないが,大きな要因になりうることが伺われた。健康寿命の延伸が社会的に重要な課題となっている今日,予防医学的な視点に立った歩行能力の分析は理学療法士が担うべき役割と考えられた。
そこで当院における再入院までの期間の現状を調査し,退院時の歩行能力と退院後の自宅生活を継続できた期間に関係性があるかを調べることとした
【方法】
対象:2015年4月~2017年5月までに当院に2回以上入院。且つ,連続する2回のうち,先の退院時に自由10m歩行の測定を3回実施していた者。なお,それぞれの入院について契機となった診断は問わないこととした。
方法:後方視的に情報収集。
測定項目:退院から次の入院まで自宅で生活した日数(在宅日数)。歩行速度・歩幅・歩行率,各項目の変動係数(CV)
統計学的処理:Pearsonの相関係数を用いて,在宅日数と歩行能力の各測定項目の相関関係を検証。中央値とヒストグラムを参考に在宅期間を長期群と短期群に分類。相関関係を認めた項目において等分散性の検定(F検定)を実施。その後,対応のないt検定を用いて長期群と短期群との違いについて調査した。統計ソフトはRを使用
【結果】
対象期間中に2回以上入院したものは29名で,そのうち条件を満たした者は17名(男性8名 女性9名,75.6±13.7歳)。在宅日数114.6±121.1日(中央値42.0日)。在宅日数と有意な相関を認めたのは歩幅CV(r2=-0.55,p=0.02)のみであった。歩幅CVの等分散性(F=0.354,p=0.188)を確認後,在宅日数<100日を短期群,それ以上を長期群とし対応のないt検定を実施したところ,有意な差(短期群:6.0% 長期群:2.7%,t=-3.020,df=15,p=0.008)を認めた
【結論】
退院時に,歩幅CVが小さいほうが在宅日数が延長する傾向が示された。歩幅のばらつきを少なくするような理学療法を実施することで医療費抑制の一助を果たせる可能性があると考えられた
当院では身体機能の維持・向上だけでなく,予防を念頭に置いた理学療法を実施している。しかし歩行能力が向上して退院しても,すぐに再入院してくる患者が多い印象があった。歩行は高齢者の身体活動量を維持するのに導入しやすいといわれており,退院時の歩行能力は退院後の活動量と大きく関係していると考えられる。
ひととのつながりが認知症を発症するリスクを軽減させる因子として注目されている。退院後に外出できるレベルの歩行能力を獲得することは,ひとと会いつながりを維持することを可能とし,認知症の予防につながると考えられた。加えて,身体活動の量は,循環障害,2型糖尿病,骨粗鬆症,癌,うつ病といった疾患と関係しているという報告も散見される。
以上のことから,退院時の歩行能力は自宅での活動量に影響を与え,歩行能力が高い場合は活動量が維持され在宅生活の期間も長期化すると予想された。歩行能力だけが在宅生活を維持するための決定因子ではないが,大きな要因になりうることが伺われた。健康寿命の延伸が社会的に重要な課題となっている今日,予防医学的な視点に立った歩行能力の分析は理学療法士が担うべき役割と考えられた。
そこで当院における再入院までの期間の現状を調査し,退院時の歩行能力と退院後の自宅生活を継続できた期間に関係性があるかを調べることとした
【方法】
対象:2015年4月~2017年5月までに当院に2回以上入院。且つ,連続する2回のうち,先の退院時に自由10m歩行の測定を3回実施していた者。なお,それぞれの入院について契機となった診断は問わないこととした。
方法:後方視的に情報収集。
測定項目:退院から次の入院まで自宅で生活した日数(在宅日数)。歩行速度・歩幅・歩行率,各項目の変動係数(CV)
統計学的処理:Pearsonの相関係数を用いて,在宅日数と歩行能力の各測定項目の相関関係を検証。中央値とヒストグラムを参考に在宅期間を長期群と短期群に分類。相関関係を認めた項目において等分散性の検定(F検定)を実施。その後,対応のないt検定を用いて長期群と短期群との違いについて調査した。統計ソフトはRを使用
【結果】
対象期間中に2回以上入院したものは29名で,そのうち条件を満たした者は17名(男性8名 女性9名,75.6±13.7歳)。在宅日数114.6±121.1日(中央値42.0日)。在宅日数と有意な相関を認めたのは歩幅CV(r2=-0.55,p=0.02)のみであった。歩幅CVの等分散性(F=0.354,p=0.188)を確認後,在宅日数<100日を短期群,それ以上を長期群とし対応のないt検定を実施したところ,有意な差(短期群:6.0% 長期群:2.7%,t=-3.020,df=15,p=0.008)を認めた
【結論】
退院時に,歩幅CVが小さいほうが在宅日数が延長する傾向が示された。歩幅のばらつきを少なくするような理学療法を実施することで医療費抑制の一助を果たせる可能性があると考えられた