The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-16] ポスター(予防)P16

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-16-3] 地域在住高齢者における腰痛によるADL低下と転倒の関連についての前向き調査
地域住民コホート調査GAINA study

和田 崇1, 松本 浩実1, 谷島 伸二2, 尾崎 まり3, 萩野 浩3,4 (1.鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.鳥取大学医学部附属病院整形外科, 3.鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション科, 4.鳥取大学医学部保健学科)

Keywords:地域在住高齢者, 腰痛, 転倒

【はじめに,目的】

腰痛は心理面に悪影響を与えることでactivities of daily living(ADL)や活動性を低下させ,運動機能を低下させるといった悪循環を生じさせることから,転倒との関連が示唆されている。しかし,腰痛によるADL低下がある例で転倒リスクが上昇するかどうかについては定かでない。本研究の目的は地域在住高齢者において腰痛によるADL低下が転倒リスクとなり得るか2年間の前向き調査によって明らかにすることである。

【方法】

平成26年度鳥取県日野郡日野町における特定健診及び後期高齢者健診受診者で我々の研究に参加同意した223名を対象とした。ベースラインでは基本属性,過去1年間の転倒歴を聴取した。運動評価は筋量測定,握力測定,歩行分析を行った。足腰の痛みはvisual analogue scale(VAS)を用いて評価した。腰痛によるADL低下についてはoswestry disability index(ODI)を用い「性生活」の項目を除外した9項目にて合計点を満点の45で除し,0-100%で評価した。2年間のフォローアップ期間中の転倒歴を「非転倒群」,「1回転倒群」,「複数回転倒群」の3群にカテゴリ化した。転倒歴3群とベースラインにおける各変数の関連を一元配置分散分析,Kruskal-Wallis検定,カイ二乗検定にて解析した。転倒歴3群を従属変数,ODIを独立変数とし,年齢,性別,ベースラインでの転倒歴,歩行速度で調整した多項ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。

【結果】

ODIを評価し,2年間の転倒回数のフォローアップ調査が可能であったのは154名(平均年齢:73.2±8.0歳,男性56名,女性98名)であった。フォローアップ期間中の転倒頻度は22.7%(35/154名)であり,1回転倒群は11.0%(17名/154名),複数回転倒群は11.7%(18名/154名)であった。非転倒群,1回転倒群,複数回転倒群の比較ではベースラインでの転倒歴(8.4% vs 17.6% vs 55.6%),VAS(7.0mm vs 20.0mm vs 23.0mm),ODI(6.7% vs 15.6% vs 20.0%)に有意差が認められた。多項ロジスティック回帰分析の結果,ベースラインでの転倒歴(Odds:10.64,95%CI:3.17-35.74)とODI(Odds:1.07,95%CI:1.02-1.13)が複数回転倒のリスク因子であった。

【結論】

ODIが複数回転倒に関連したことは,腰痛による運動機能の低下や腰椎疾患による神経症状が転倒リスクを高めている可能性を示唆している。さらに腰痛による活動性低下が,運動機能の低下を助長している可能性もある。転倒リスク評価では運動機能や痛み強度の評価だけでなく,痛みによるADLへの影響についても評価する必要がある。