[P-YB-16-5] 緊張性頭痛に対して生活指導が奏功した症例の経験
Keywords:緊張性頭痛, 慢性痛, 生活指導
【はじめに,目的】
本邦における緊張性頭痛の有病率は人口の約20%であることが報告されている。緊張性頭痛症例において,痛みだけでなく日常生活動作及び生活の質の低下も問題となっている。このような症例に対し,薬物療法や筋緊張緩和のためのマッサージなどが行われているが治療に抵抗する症例も存在する。諸外国においては,運動療法あるいは徒手療法により緊張性頭痛症例の痛みの頻度,強度が減少したことや日常生活動作の改善が報告されている。しかし,本邦において,緊張性頭痛は生活の質を低下させる問題であるにも関わらず,理学療法の効果について経時的な評価は行われていない。また,どのような理学療法が有効であるかは未だ明らかではない。今回,緊張性頭痛に対し,頚部のリラクセーションや姿勢改善を目的とした理学療法では改善しなかったが,生活指導を中心とした理学療法によって疼痛の軽減が認められた症例について報告する。
【方法】
症例は慢性的な頭頚部痛を有する頸椎症患者で80代女性であった。薬物療法はセレコキシブ100mg,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液4単位,レバミピド100mgが処方された。薬物療法に加え,12週間,週1-2回の頻度で,1回60分の理学療法を実施した。それぞれの介入前後に,頭痛日数,疼痛強度としてNumeric rating scale(NRS),頭痛評価としてHeadache Impact Test(HIT),身体機能評価として頸部の関節可動域テスト(Range of Motion:ROM)及び7段階の患者満足度評価を行った。理学療法内容は,期間Aでは頚部他動運動,頚部リラクセーション及び座位姿勢調整課題を8週間実施し,期間Bでは生活指導,自主運動を4週間実施した。期間AとBの間に4週間のウォッシュアウト期間を設けた。
【結果】
期間Aの頭痛日数は介入前後とも14日,NRSは介入前6,介入後5,HITは介入前40,介入後45であった。頚部のROMは介入前後とも屈曲は60°,伸展は50°,右回旋は45°,左回旋は45°であり介入前後で改善を認めなかった。また,患者満足度は「変化なし」であった。期間Bでは頭痛日数は介入前(ウォッシュアウト後)14日,介入後3日,NRSは介入前6,介入後3,HITは介入前45,介入後38であった。頚部ROMは屈曲は介入前55°,介入後60°,伸展は介入前45°,介入後50°,右回旋は介入前25°,介入後45°,左回旋は介入前45°,介入後50°であり,介入後に若干の改善を認めた。また,患者満足度は「改善した」であった。
【結論】
本研究では4週間のウォッシュアウト期間を設けることで,期間Aの継続効果を可能な範囲で減弱させて,異なる理学療法の効果の違いを比較した。結果,本症例においては,従来の緊張性頭痛に対して有効であると報告されてきた理学療法よりも生活指導を実施することが奏功した。このことは,近年,慢性痛の理学療法で重要視されている受動的な治療よりも主体的な治療の有効性を緊張性頭痛においても支持したと考えられる。
本邦における緊張性頭痛の有病率は人口の約20%であることが報告されている。緊張性頭痛症例において,痛みだけでなく日常生活動作及び生活の質の低下も問題となっている。このような症例に対し,薬物療法や筋緊張緩和のためのマッサージなどが行われているが治療に抵抗する症例も存在する。諸外国においては,運動療法あるいは徒手療法により緊張性頭痛症例の痛みの頻度,強度が減少したことや日常生活動作の改善が報告されている。しかし,本邦において,緊張性頭痛は生活の質を低下させる問題であるにも関わらず,理学療法の効果について経時的な評価は行われていない。また,どのような理学療法が有効であるかは未だ明らかではない。今回,緊張性頭痛に対し,頚部のリラクセーションや姿勢改善を目的とした理学療法では改善しなかったが,生活指導を中心とした理学療法によって疼痛の軽減が認められた症例について報告する。
【方法】
症例は慢性的な頭頚部痛を有する頸椎症患者で80代女性であった。薬物療法はセレコキシブ100mg,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液4単位,レバミピド100mgが処方された。薬物療法に加え,12週間,週1-2回の頻度で,1回60分の理学療法を実施した。それぞれの介入前後に,頭痛日数,疼痛強度としてNumeric rating scale(NRS),頭痛評価としてHeadache Impact Test(HIT),身体機能評価として頸部の関節可動域テスト(Range of Motion:ROM)及び7段階の患者満足度評価を行った。理学療法内容は,期間Aでは頚部他動運動,頚部リラクセーション及び座位姿勢調整課題を8週間実施し,期間Bでは生活指導,自主運動を4週間実施した。期間AとBの間に4週間のウォッシュアウト期間を設けた。
【結果】
期間Aの頭痛日数は介入前後とも14日,NRSは介入前6,介入後5,HITは介入前40,介入後45であった。頚部のROMは介入前後とも屈曲は60°,伸展は50°,右回旋は45°,左回旋は45°であり介入前後で改善を認めなかった。また,患者満足度は「変化なし」であった。期間Bでは頭痛日数は介入前(ウォッシュアウト後)14日,介入後3日,NRSは介入前6,介入後3,HITは介入前45,介入後38であった。頚部ROMは屈曲は介入前55°,介入後60°,伸展は介入前45°,介入後50°,右回旋は介入前25°,介入後45°,左回旋は介入前45°,介入後50°であり,介入後に若干の改善を認めた。また,患者満足度は「改善した」であった。
【結論】
本研究では4週間のウォッシュアウト期間を設けることで,期間Aの継続効果を可能な範囲で減弱させて,異なる理学療法の効果の違いを比較した。結果,本症例においては,従来の緊張性頭痛に対して有効であると報告されてきた理学療法よりも生活指導を実施することが奏功した。このことは,近年,慢性痛の理学療法で重要視されている受動的な治療よりも主体的な治療の有効性を緊張性頭痛においても支持したと考えられる。