The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-17] ポスター(予防)P17

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-17-1] 転倒恐怖感を有する独居高齢女性は食多様性が制限されている

城岡 秀彦1,2, 西口 周3, 鈴木 祐介2, 田坂 精志朗2, 青山 朋樹2 (1.東京湾岸リハビリテーション病院, 2.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 3.東京工科大学医療保健学部理学療法学科)

Keywords:食多様性, 転倒恐怖感, 地域在住高齢者

【はじめに,目的】

高齢者において,多様な食品を摂取することは,栄養状態を保ち,運動機能や認知機能低下を予防すると考えられている。過去の報告では,食多様性の制限因子は,年齢,文化,居住環境,経済力などが挙げられている。しかし,これらの要素は理学療法による介入は難しい。そこで我々は,理学療法により改善可能である転倒恐怖感に着目し,転倒恐怖感を有する高齢者は食多様性が低く,その傾向は独居高齢者で顕著であると仮説を立てた。本研究の目的は,独居高齢女性において,転倒恐怖感と食多様性の関連性を検討することである。



【方法】

要介護認定を受けていない地域在住の65歳以上の高齢女性428名に対して測定会を実施し,データに欠損がなく,且つMini-Mental State Examination(MMSE)が24点以上である360名(うち独居女性103人)を解析対象とした。食品摂取の多様性は,11-item Food Diversity Score Kyoto(FDSK-11)に含まれている11食品群(穀物・いも類・肉類・魚介類・卵・乳製品・野菜・海藻類・豆類・ナッツ類・果実類)の半年間の摂取頻度について,「殆ど食べない」「週に1~2日」「週に3-5日」「週に6~7日」の4択形式にて尋ねることにより評価し,食多様性の合計点数を算出した(11点~44点)。そして,四分位法により,対象者を食多様性高値群(32点以上),低値群(31点以下)の2群に分けた。転倒恐怖感は,「普段の生活で転倒に対して恐怖感を感じますか」という2択式質問により評価した。統計解析は,まず独居女性103人に対して,転倒恐怖感あり群・なし群における食多様性低値群への該当割合の差をカイ二乗検定にて検討した。次に,従属変数に食多様性を,独立変数に転倒恐怖感の有無を,調整変数に年齢,BMI,MMSE点数を投入したロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。また,独居ではない女性257名に対しても同様のカイ二乗検定,ロジスティック回帰分析を行った。



【結果】

独居の高齢女性103名のうち,転倒恐怖感を有する者は49名であった。独居の高齢女性に対するカイ二乗検定の結果,転倒恐怖感あり群は,なし群と比較して食多様性低値群への該当割合が有意に高かった(有り群:42.9%,無し群:24.1%,p=0.04)。また,ロジスティック回帰分析の結果,転倒恐怖感を有する独居高齢女性は食多様性が制限されていた(OR:2.47,95%CI:1.05-5.84,p=0.04)。一方で,独居ではない高齢女性においては,転倒恐怖感と食多様性との関連はみられなかった。



【結論】

本研究より,転倒恐怖感を有する独居高齢女性は,食品摂取の多様性が制限されていることが明らかとなった。転倒恐怖感を有することにより活動範囲の狭小化が生じ,それが食多様性を制限していると考えられる。独居高齢者に対して転倒恐怖感を抑制するための運動療法を実施することにより,多様な食品摂取へとつながる可能性がある。