[P-YB-17-4] 二重課題条件下での段差乗り越え動作における馴化および年齢の影響について
Keywords:二重課題, 段差乗り越え動作, 馴化
【はじめに,目的】
高齢者の転倒は骨折を惹起し,日常生活活動(ADL)を低下させるばかりか高齢者に転倒恐怖感を抱かせ,生命の質(QOL)を低下させることにもつながるおそれがあると報告されている。したがって,転倒の原因を解析し予防することは,高齢者の身体能力やQOLを維持するうえで重要な課題のひとつであると考えられる。
そこで,本研究では,二重課題条件下の段差乗り越え動作における馴化の影響と若年者と高齢者での対応能力の違いを明らかにし,高齢者の転倒予防のための指針とすることを目的とした。
【方法】
1)対象
女性高齢者および女性若年者各11名とした。
2)測定項目
(1)基本属性
年齢,身長,体重,利き足,他動的可動域測定(股・膝・足関節の屈曲/伸展)。高齢者に対して転倒歴の聴取,認知機能評価としてMMSE(Mini-Mental State Examination)を調査した。
(2)またぎ動作能力
助走路は10mとし,高さが10cmの障害物を助走路の先に置いた。
単一課題では,助走路の先に設置してある障害物を越えるよう指示した。
二重課題では,単一課題時の条件に加え計算課題を課した。
馴化を考慮するため,単一課題と二重課題を交互に,各10セットずつ行った。
(3)画像分析
測定は,ビデオカメラを用いて歩行を側面から撮影し,段差を乗り越える際の最終ステップの足尖から段差までの距離,段差乗り越え後の段差から第一ステップ時の踵部までの距離,段差乗り越え時の歩幅,段差に対するトウクリアランスの距離を二次元平面上において画像解析ソフト(ImageJ)を用いて行った。
(4)統計処理
R2.8.1を使用して多元配置分散分析を行い,有意水準5%とした。
【結果】
最終ステップ-段差距離(cm):高齢者28.1±3.1,若年者41.1±5.6;段差-第一ステップ距離(cm):高齢者10.5±2.9,若年者20.9±5.2;歩幅(cm):高齢者41.2±1.4,若年者63.9±1.6;トウクリアランス(cm):高齢者7.4±0.3,若年者10.6±0.8であった。いずれの項目においても,高齢者が有意(いずれもp<0.001)に小さくなっていた。一方,課題数,回数および各因子間において有意差はみられなかった。
【結論】
今回の研究では課題数の増加や段差乗り越え動作の回数を重ねたことによる歩幅・トウクリアランスの対応の変化が無かった。高齢者においては二重課題時においてなんらかの変化があると予想されたが本研究では変化がみられなかった。本研究の対象者は普段から体操などの運動を行っており比較的身体機能が高い高齢者であり,MMSEのテストにおいて認知機能にもほとんど問題がみられなかったことから,計算課題では課題としての負荷が小さかったことが原因として考えられる。
また,段差乗り越え動作時において高齢者は若年者に比べトウクリアランスが低下していることがわかった。このことから,高齢者の躓きによる転倒が多いことは,高齢者の段差に対するトウクリアランスが低くなっていることが一つの要因として推察できる。
高齢者の転倒は骨折を惹起し,日常生活活動(ADL)を低下させるばかりか高齢者に転倒恐怖感を抱かせ,生命の質(QOL)を低下させることにもつながるおそれがあると報告されている。したがって,転倒の原因を解析し予防することは,高齢者の身体能力やQOLを維持するうえで重要な課題のひとつであると考えられる。
そこで,本研究では,二重課題条件下の段差乗り越え動作における馴化の影響と若年者と高齢者での対応能力の違いを明らかにし,高齢者の転倒予防のための指針とすることを目的とした。
【方法】
1)対象
女性高齢者および女性若年者各11名とした。
2)測定項目
(1)基本属性
年齢,身長,体重,利き足,他動的可動域測定(股・膝・足関節の屈曲/伸展)。高齢者に対して転倒歴の聴取,認知機能評価としてMMSE(Mini-Mental State Examination)を調査した。
(2)またぎ動作能力
助走路は10mとし,高さが10cmの障害物を助走路の先に置いた。
単一課題では,助走路の先に設置してある障害物を越えるよう指示した。
二重課題では,単一課題時の条件に加え計算課題を課した。
馴化を考慮するため,単一課題と二重課題を交互に,各10セットずつ行った。
(3)画像分析
測定は,ビデオカメラを用いて歩行を側面から撮影し,段差を乗り越える際の最終ステップの足尖から段差までの距離,段差乗り越え後の段差から第一ステップ時の踵部までの距離,段差乗り越え時の歩幅,段差に対するトウクリアランスの距離を二次元平面上において画像解析ソフト(ImageJ)を用いて行った。
(4)統計処理
R2.8.1を使用して多元配置分散分析を行い,有意水準5%とした。
【結果】
最終ステップ-段差距離(cm):高齢者28.1±3.1,若年者41.1±5.6;段差-第一ステップ距離(cm):高齢者10.5±2.9,若年者20.9±5.2;歩幅(cm):高齢者41.2±1.4,若年者63.9±1.6;トウクリアランス(cm):高齢者7.4±0.3,若年者10.6±0.8であった。いずれの項目においても,高齢者が有意(いずれもp<0.001)に小さくなっていた。一方,課題数,回数および各因子間において有意差はみられなかった。
【結論】
今回の研究では課題数の増加や段差乗り越え動作の回数を重ねたことによる歩幅・トウクリアランスの対応の変化が無かった。高齢者においては二重課題時においてなんらかの変化があると予想されたが本研究では変化がみられなかった。本研究の対象者は普段から体操などの運動を行っており比較的身体機能が高い高齢者であり,MMSEのテストにおいて認知機能にもほとんど問題がみられなかったことから,計算課題では課題としての負荷が小さかったことが原因として考えられる。
また,段差乗り越え動作時において高齢者は若年者に比べトウクリアランスが低下していることがわかった。このことから,高齢者の躓きによる転倒が多いことは,高齢者の段差に対するトウクリアランスが低くなっていることが一つの要因として推察できる。