[P-YB-17-5] 回復期病棟入院中の高齢整形疾患患者における転倒恐怖感とADLの経過と関連について
Keywords:転倒恐怖感, ADL, 高齢者
【はじめに，目的】
高齢者の在宅生活の問題として転倒恐怖感が注目されている。転倒恐怖感の存在はQOLの低下のみならず，日常生活における身体活動量低下を引き起こし，廃用症候群の原因となると報告されている。転倒恐怖感は，自己効力感や身体運動機能・活動量との関連が指摘されているが，その介入方法についての報告は少なく，転倒恐怖感の報告は地域在住高齢者に対するものが多い。そのため，本研究では，回復期病棟入院中の転倒恐怖感とADLの経過，それぞれの関連を調査することを目的とした。
【方法】
対象は65歳以上の転倒により下肢，脊椎骨折を呈した患者20名（男性2名，女性18名，平均年齢80.7歳±5.0）である。また，転倒恐怖感があり研究内容を理解でき，荷重制限なく歩行練習を行っていた者とした。転倒恐怖感の指標として，14項目の活動を転倒することなく行う自信の程度を測定する尺度であるModified-Fall Efficacy Scale（以下M-FES）を用いた。対象者に0点（全く自信がない）～10点（完全に自信がある）より決定し，合計点数（0～140点）が低い程，転倒恐怖感が強いことを示す。ADLの指標としては入退院時点のFunctional Independence Measure（以下FIM）の点数を用いた。M-FES，FIMの経過は入退院のそれぞれ2週間以内に評価を実施し，改善度は退院時と入院時の得点の差から算出した。方法は，入退院時点のM-FESを対応のあるt検定，FIMをWilcoxonの符号付順位和検定，M-FES，FIMの改善度をPearsonの相関係数を用いて統計学的に解析した。また，有意水準は5%未満とした。
【結果】
入退院時点のM-FES，FIMを比較した結果，いずれも有意差が認められた。（P＜0.01）。M-FESの平均値は入院時74.4点から退院時95.1点，FIMの平均値は90.1点から110.2点であった。M-FES，FIMの改善度との相関係数を求めた結果，有意な相関を認めなかった。
【結論】
本研究の結果から，高齢整形疾患患者に対する当院での介入は，ADLと転倒恐怖感いずれも改善しており，効果があることが示唆された。対象者への主な介入としては，歩行練習（100%），起立・立位保持練習（70%），筋力練習（65%），関節可動域練習（65%）であった。これらの介入方法は，地域在住高齢者ではない回復期病棟入院中の高齢整形疾患患者の転倒恐怖感を軽減させる可能性が考えられる。一方で，M-FES，FIMの改善度との関連性は認められなかった。これは，Petrellaらが報告している大腿骨頚部骨折後に集中的なリハビリテーションプログラムを受けた高齢者を調査した結果，FESとADLの変化との間に有意な相関がみられなかったことを支持している。転倒恐怖感は様々な要因の影響を受けることが考えられ，今回の研究結果は一要因に過ぎず，身体的な変化に着目した介入方法では転倒恐怖感が軽減できない可能性が考えられる。我々は患者の転倒恐怖感を評価し，M-FESの10点未満の下位項目を確認し，介入・効果判定をすることが重要であると考える。
高齢者の在宅生活の問題として転倒恐怖感が注目されている。転倒恐怖感の存在はQOLの低下のみならず，日常生活における身体活動量低下を引き起こし，廃用症候群の原因となると報告されている。転倒恐怖感は，自己効力感や身体運動機能・活動量との関連が指摘されているが，その介入方法についての報告は少なく，転倒恐怖感の報告は地域在住高齢者に対するものが多い。そのため，本研究では，回復期病棟入院中の転倒恐怖感とADLの経過，それぞれの関連を調査することを目的とした。
【方法】
対象は65歳以上の転倒により下肢，脊椎骨折を呈した患者20名（男性2名，女性18名，平均年齢80.7歳±5.0）である。また，転倒恐怖感があり研究内容を理解でき，荷重制限なく歩行練習を行っていた者とした。転倒恐怖感の指標として，14項目の活動を転倒することなく行う自信の程度を測定する尺度であるModified-Fall Efficacy Scale（以下M-FES）を用いた。対象者に0点（全く自信がない）～10点（完全に自信がある）より決定し，合計点数（0～140点）が低い程，転倒恐怖感が強いことを示す。ADLの指標としては入退院時点のFunctional Independence Measure（以下FIM）の点数を用いた。M-FES，FIMの経過は入退院のそれぞれ2週間以内に評価を実施し，改善度は退院時と入院時の得点の差から算出した。方法は，入退院時点のM-FESを対応のあるt検定，FIMをWilcoxonの符号付順位和検定，M-FES，FIMの改善度をPearsonの相関係数を用いて統計学的に解析した。また，有意水準は5%未満とした。
【結果】
入退院時点のM-FES，FIMを比較した結果，いずれも有意差が認められた。（P＜0.01）。M-FESの平均値は入院時74.4点から退院時95.1点，FIMの平均値は90.1点から110.2点であった。M-FES，FIMの改善度との相関係数を求めた結果，有意な相関を認めなかった。
【結論】
本研究の結果から，高齢整形疾患患者に対する当院での介入は，ADLと転倒恐怖感いずれも改善しており，効果があることが示唆された。対象者への主な介入としては，歩行練習（100%），起立・立位保持練習（70%），筋力練習（65%），関節可動域練習（65%）であった。これらの介入方法は，地域在住高齢者ではない回復期病棟入院中の高齢整形疾患患者の転倒恐怖感を軽減させる可能性が考えられる。一方で，M-FES，FIMの改善度との関連性は認められなかった。これは，Petrellaらが報告している大腿骨頚部骨折後に集中的なリハビリテーションプログラムを受けた高齢者を調査した結果，FESとADLの変化との間に有意な相関がみられなかったことを支持している。転倒恐怖感は様々な要因の影響を受けることが考えられ，今回の研究結果は一要因に過ぎず，身体的な変化に着目した介入方法では転倒恐怖感が軽減できない可能性が考えられる。我々は患者の転倒恐怖感を評価し，M-FESの10点未満の下位項目を確認し，介入・効果判定をすることが重要であると考える。