The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-18] ポスター(予防)P18

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-18-2] 歩行時スマートフォンSNS操作における視覚認知の垂直格差について

新崎 泰恵1, 造田 允人1, 髙見 彰淑2 (1.弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻, 2.弘前大学大学院保健学研究科)

Keywords:転倒リスク, 視覚認知, 複数課題

【目的】

スマートフォンでSNS操作しながら歩くことは,複数課題遂行であり,転倒や衝突など影響が出ると考えられる。加えて,操作姿勢を観ると視線が固定され,多くは下方注視傾向となる。これにより上方の空間認知の欠落が考えられる。そこで本研究の目的は,視覚情報認知における垂直方向の上・下格差について,歩容変化とともに検討するものである。

【方法】

対象者は,スマートフォンを普段利用している21名(男性12名,女性9名,年齢20.3±1.0歳)とした。

歩行路は72m2の部屋に1周30mの四辺形で3周させた。測定方法は(a)快適歩行(b)電話をしながらの歩行(c)スマートフォンを使って文字を打つ操作(以下,文字操作)をしながらの3条件である。(b)(c)では容易に解答できる設問10項目準備し,歩行中に解答してもらった。また,視覚情報の認知の検討として,(c)では歩行路中に1桁の数字を4カ所に設置し,歩行後に何の数字があったかを解答してもらった。この際,肩峰の高さ(以下,上方)に2カ所,膝関節裂隙の高さ(以下,下方)に2カ所設置した。3周するため3度確認の機会がある。測定項目は,①歩行速度,歩幅,歩行率を算出②4カ所の数字の正誤を測定した。解析は各3条件で多重比較し,上下の正答は独立2群検定を実施した(Tukey,t検定)。また計測後,VAS(100mm)を利用し,快適歩行を50mmとして歩きにくさについて聴取した。いずれの解析も有意水準は5%未満とした。

【結果】

文字操作では,速度,歩幅が有意に減少(p<0.05)した。歩きにくさ(VAS)では,(b)電話53.1±13.4mm(c)文字操作81.5±16.6mmと有意に,文字操作で歩きにくいと自覚していた(p<0.05)。また,空間認知において誤答数(見落とし含む)の全体の平均値は4問中1.3±1.2個だった。上下に区別すると,上方の誤答数の平均値は2問中0.9±0.8個,下方は0.4±0.7個となり,上方の誤答数の方が下方に比べ有意に多い結果となった(p<0.05)。3度確認する機会があったことを鑑みると,約半数で認識できず,かなりの見落としが判明した。なお,電話は快適歩行と有意な差はなかった。

【結論】

文字操作で速度,歩幅が減少したことから,両側同時接地時間を長くし,危機回避に対応していると推測される。また文字操作し歩行した際の視覚情報の認知については,上方・下方共に低下していた。よって段差につまずくことや衝突といったリスク等が考えられる。特に上方の方がエラーや見落としが多く,文字操作することで,人や上方の障害物等に衝突したり,信号機未確認などのリスクがある。さらに,歩きにくさを自覚しているにもかかわらず実行した場合は,よりリスクが助長されることも考えられた。