[P-YB-18-5] 再転倒における転倒自己効力感の意義に関する検討
キーワード:高齢者, 転倒自己効力感, 転倒
【はじめに,目的】
高齢者における転倒は様々な因子との関連が報告されており,それらを元に考案されたリスク評価法がすでに実用化されている。中でも転倒自己効力感(Modified Fall Efficacy Scale,以下MFES)は主観的な転倒への不安感を評価する方法として近年注目されているが,転倒既往のある高齢者におけるMFESと各転倒関連因子との関連や,再転倒への影響についての検討は不十分である。我々は転倒既往とMFESの再転倒への影響と,それらと身体・精神機能の関連について検討した。
【対象と方法】
当科に入院または通院中の自立歩行可能な65歳以上で,1年後までフォローし得た連続100例(平均年齢76.6歳)を対象とした。測定項目は,身体計測に加え身体機能として筋力(下肢筋力,握力),バランス機能(片脚立ち時間,重心動揺検査),10m最大歩行速度を測定した。高齢者総合機能評価(CGA)として認知機能検査(MMSE),手段的活動動作,うつ状態(GDS-15)などを評価した。また運動習慣の有無,後ろ向きに1年間の転倒有無を聴取した。転倒リスク評価として転倒リスク指標(FRI)と転倒自己効力感(MFES)を評価した。1年後に同様の検査を行い,ベースラインにおける転倒既往の有無とMFES低値(41点以下)の有無により4群(I群:転倒既往無/MFES低値無,II群:転倒既往有/MFES低値無,III群:転倒既往無/MFES低値有,IV群:転倒既往有/MFES低値有)に分け,各群間における1年間の転倒有無,MFES総スコア,身体・精神機能との関連を検討した。
【結果】
II群とIV群ではIV群が1年間の再転倒と関連し(p=0.05),I群とII群ではII群が1年間の転倒と関連した(p<0.05)。I群とIII群では新規転倒と関連せず,I群とII群,III群とIV群では転倒既往がある方が転倒と関連した(I<II p<0.05,III<IV p<0.01)。1年後の身体・精神機能との関連については,III群のみ筋力,歩行速度,MMSEと有意に関連が認められ,1年間転倒しなかった場合のMFESはIII群で有意に改善が認められた。一方,IV群では身体機能との関連は認められなかったが,GDS-15と有意な関連が認められた。
【結論】
転倒既往がある場合,MFESが低いことが1年間の再転倒と関連した。転倒既往は転倒リスク因子の上位であり,既に転倒リスクが高い人の再転倒には心理的要因が影響することが示唆された。転倒既往のない場合は,MFESは新規転倒と関連を認めなかったことから,転倒自体とは転倒既往がより強く影響することが示唆された。
今回,身体・精神機能が低いことと転倒恐怖感は関連を示した。転倒予防のアプローチとして,転倒既往があり自己効力感も低い場合は,心理面への介入が有用であり,転倒既往がない場合は,転倒リスク評価を行うことが,転倒予防の意識向上や自発的な身体機能維持に繋がることが示唆された。また転倒を予防できたことがさらなる自己効力感の向上,身体認知機能の維持向上に繋がると考えられた。
高齢者における転倒は様々な因子との関連が報告されており,それらを元に考案されたリスク評価法がすでに実用化されている。中でも転倒自己効力感(Modified Fall Efficacy Scale,以下MFES)は主観的な転倒への不安感を評価する方法として近年注目されているが,転倒既往のある高齢者におけるMFESと各転倒関連因子との関連や,再転倒への影響についての検討は不十分である。我々は転倒既往とMFESの再転倒への影響と,それらと身体・精神機能の関連について検討した。
【対象と方法】
当科に入院または通院中の自立歩行可能な65歳以上で,1年後までフォローし得た連続100例(平均年齢76.6歳)を対象とした。測定項目は,身体計測に加え身体機能として筋力(下肢筋力,握力),バランス機能(片脚立ち時間,重心動揺検査),10m最大歩行速度を測定した。高齢者総合機能評価(CGA)として認知機能検査(MMSE),手段的活動動作,うつ状態(GDS-15)などを評価した。また運動習慣の有無,後ろ向きに1年間の転倒有無を聴取した。転倒リスク評価として転倒リスク指標(FRI)と転倒自己効力感(MFES)を評価した。1年後に同様の検査を行い,ベースラインにおける転倒既往の有無とMFES低値(41点以下)の有無により4群(I群:転倒既往無/MFES低値無,II群:転倒既往有/MFES低値無,III群:転倒既往無/MFES低値有,IV群:転倒既往有/MFES低値有)に分け,各群間における1年間の転倒有無,MFES総スコア,身体・精神機能との関連を検討した。
【結果】
II群とIV群ではIV群が1年間の再転倒と関連し(p=0.05),I群とII群ではII群が1年間の転倒と関連した(p<0.05)。I群とIII群では新規転倒と関連せず,I群とII群,III群とIV群では転倒既往がある方が転倒と関連した(I<II p<0.05,III<IV p<0.01)。1年後の身体・精神機能との関連については,III群のみ筋力,歩行速度,MMSEと有意に関連が認められ,1年間転倒しなかった場合のMFESはIII群で有意に改善が認められた。一方,IV群では身体機能との関連は認められなかったが,GDS-15と有意な関連が認められた。
【結論】
転倒既往がある場合,MFESが低いことが1年間の再転倒と関連した。転倒既往は転倒リスク因子の上位であり,既に転倒リスクが高い人の再転倒には心理的要因が影響することが示唆された。転倒既往のない場合は,MFESは新規転倒と関連を認めなかったことから,転倒自体とは転倒既往がより強く影響することが示唆された。
今回,身体・精神機能が低いことと転倒恐怖感は関連を示した。転倒予防のアプローチとして,転倒既往があり自己効力感も低い場合は,心理面への介入が有用であり,転倒既往がない場合は,転倒リスク評価を行うことが,転倒予防の意識向上や自発的な身体機能維持に繋がることが示唆された。また転倒を予防できたことがさらなる自己効力感の向上,身体認知機能の維持向上に繋がると考えられた。