[P-YB-19-1] 当院救命ICUにおける理学療法士の専属配置とカンファレンスへの参加
―早期介入・早期離床への効果の検討―
Keywords:救命ICU, 専属理学療法士, カンファレンス
【はじめに,目的】
当院高度救命救急センターは,ドクターヘリを運用して埼玉県全域の重症外傷患者をカバーしており,20床の救命ICUを有している。リハビリテーション部では,2016年3月1日より救命ICUにおける早期介入と早期離床の促進,効率的な理学療法(PT)の実施のために2名の理学療法士の専属配置と救命カンファレンスへの参加を開始した。本研究の目的は,理学療法士の専属配置と救命カンファレンスへの参加前後での早期介入・早期離床への効果について調査し,救命ICUにおける理学療法の現状と今後の課題点について明らかにすることである。
【方法】
対象は,2015年と2016年の3月1日から8月31日に当院救命ICUへ入室した救命救急センター・ER科の患者のうち,理学療法の処方があったものとした。調査項目は,年齢,疾患分類,重症度(APACHEIIscore,ISS),PT依頼件数,ICU入室からPT開始までの日数,ICU入室から離床(車いす,起立,歩行)までの日数,処置・ケアでのPTコストなし日数,ventilator free days,ICU在室日数,肺合併症罹患率,褥瘡発生率,せん妄発生率,在院日数,退院時Barthel Index,転帰(自宅退院,転院,死亡),退院時の歩行自立率とした。統計学的分析は,各調査項目に対して2015年のpre群と2016年のpost群の2群間を比較検討した。有意水準は,5%とした。
【結果】
各調査項目の結果(pre群・post群)は,年齢(中央値)は64歳・63歳,疾患分類は外傷が最も多く両群とも約70%を占めていた。APACHE II scoreは26点・25点,ISSは26点・26点であった。依頼件数は20件・61件,ICU入室からPT開始までの期間は6日・3日,処置・ケアでのPTコストなし日数は4日(20%)・13日(21%),ICU入室から離床までの日数は,車いすで10日・5日,起立で12日・5日,歩行で21日・7日,ventilator free daysは22日・23日であった。ICU在室日数は10日・10日,肺合併症は4名(20%)・13名(21%),褥瘡発生率は5名(25%)・7名(12%),せん妄発生率は6名(30%)・17名(29%),在院日数は52日・40日,退院時Barthel Indexは10点・75点,転帰は自宅退院で3名(15%)・21名(34%),転院で15名(75%)・34名(56%),死亡で2名(10%)・6名(10%),退院時歩行自立は5名(25%)・28名(46%)であった。pre群とpost群間は,ICU入室からPT開始までの日数,ICU入室から車いす・起立・歩行までの日数,退院時Barthel Indexに有意差(p<0.05)を認めた。
【結論】
理学療法士の専属配置とカンファレンス参加により,PT依頼件数の増加・早期介入・早期離床が可能となり,退院時のADL向上に有効であった可能性が示唆された。しかしながら,ICU滞在中の二次的合併症予防への対応が今後の課題点である。
当院高度救命救急センターは,ドクターヘリを運用して埼玉県全域の重症外傷患者をカバーしており,20床の救命ICUを有している。リハビリテーション部では,2016年3月1日より救命ICUにおける早期介入と早期離床の促進,効率的な理学療法(PT)の実施のために2名の理学療法士の専属配置と救命カンファレンスへの参加を開始した。本研究の目的は,理学療法士の専属配置と救命カンファレンスへの参加前後での早期介入・早期離床への効果について調査し,救命ICUにおける理学療法の現状と今後の課題点について明らかにすることである。
【方法】
対象は,2015年と2016年の3月1日から8月31日に当院救命ICUへ入室した救命救急センター・ER科の患者のうち,理学療法の処方があったものとした。調査項目は,年齢,疾患分類,重症度(APACHEIIscore,ISS),PT依頼件数,ICU入室からPT開始までの日数,ICU入室から離床(車いす,起立,歩行)までの日数,処置・ケアでのPTコストなし日数,ventilator free days,ICU在室日数,肺合併症罹患率,褥瘡発生率,せん妄発生率,在院日数,退院時Barthel Index,転帰(自宅退院,転院,死亡),退院時の歩行自立率とした。統計学的分析は,各調査項目に対して2015年のpre群と2016年のpost群の2群間を比較検討した。有意水準は,5%とした。
【結果】
各調査項目の結果(pre群・post群)は,年齢(中央値)は64歳・63歳,疾患分類は外傷が最も多く両群とも約70%を占めていた。APACHE II scoreは26点・25点,ISSは26点・26点であった。依頼件数は20件・61件,ICU入室からPT開始までの期間は6日・3日,処置・ケアでのPTコストなし日数は4日(20%)・13日(21%),ICU入室から離床までの日数は,車いすで10日・5日,起立で12日・5日,歩行で21日・7日,ventilator free daysは22日・23日であった。ICU在室日数は10日・10日,肺合併症は4名(20%)・13名(21%),褥瘡発生率は5名(25%)・7名(12%),せん妄発生率は6名(30%)・17名(29%),在院日数は52日・40日,退院時Barthel Indexは10点・75点,転帰は自宅退院で3名(15%)・21名(34%),転院で15名(75%)・34名(56%),死亡で2名(10%)・6名(10%),退院時歩行自立は5名(25%)・28名(46%)であった。pre群とpost群間は,ICU入室からPT開始までの日数,ICU入室から車いす・起立・歩行までの日数,退院時Barthel Indexに有意差(p<0.05)を認めた。
【結論】
理学療法士の専属配置とカンファレンス参加により,PT依頼件数の増加・早期介入・早期離床が可能となり,退院時のADL向上に有効であった可能性が示唆された。しかしながら,ICU滞在中の二次的合併症予防への対応が今後の課題点である。