The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-20] ポスター(予防)P20

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-20-1] 短期間低頻度の運動介入は地域在住高齢者の認知機能を改善させるのか?
教室開催回数の違いによる検証

倉地 洋輔1, 柳原 順子2, 鈴木 美穂2, 井上 優3 (1.からだ康房, 2.町田市堺第二高齢者支援センター, 3.吉備国際大学福祉研究所)

Keywords:認知機能, 介護予防, 地域在住高齢者

【はじめに,目的】認知症は社会的にも大きな影響を与えることから,認知症予防のための様々な取り組みが各地で行われている。近年,運動が認知症発症リスクの軽減や認知機能低下の抑制に有効であることが報告されている。しかし,介入効果を認めたプログラムの多くは期間が6か月以上で週3回以上で実施されており,地域介護予防教室(以下,教室)で同程度の開催期間,頻度での実施は容易ではない。我々は昨年度の本学会において,地域在住高齢者を対象に週1回計8回の複合運動プログラムを提供する教室を開催し,即時再生機能にのみ改善を認めたことを報告した。この結果は限定的であり,介入効果を担保するためには適切な実施回数に関する追加検証が必要である。そこで本研究は,低頻度で開催される教室の開催回数の違いが認知機能の変化に与える影響を検証することを目的とした。


【方法】2015年から2016年に東京都M市の2地区(A地区およびB地区)における教室に参加した地域在住高齢者を対象とした。A地区の対象者は13名(年齢71.9±6.5歳),B地区の対象者は10名(年齢70.4±4.4歳)で,A地区,B地区の介入回数はそれぞれ全8回,全10回とした。介入プログラムは,ウォーミングアップ,筋力トレーニング,スクエアステップエクササイズ,コグニサイズとし,理学療法士とスクエアステップ指導員が指導した。評価は初回と最終回に行い,認知機能評価項目は,記憶と前頭葉に関する検査を実施した。記憶は日本語版Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsycological Statusを用いて10単語の即時再生・遅延再生テスト,前頭葉検査は実行機能として山口式漢字符号判定テスト(YKSST),言語流暢性として語想起テストを行った。教室参加前後の2群間比較には,参加前の各指標得点による介入効果への影響を排除するため,各指標の初期値を共変量とする共分散分析を行い,事後検定にBonfferoni法を用いた。統計学的解析には統計ソフトIBM SPSS statistics ver.21を用い,有意水準は5%とした。


【結果】運動介入前のA地区とB地区の参加者の年齢,身体特性,認知機能に有意差はなかった。介入の結果,A地区では即時再生テストが24.5±10.0点から27.0±10.7点へと有意な改善を認めたが,YKSST,語想起テスト,遅延再生機能テストには有意な改善を認めなかった。B地区では,10単語即時再生テストは27.2±2.9点から31.2±2.5点,YKSSTは43.9±5.3点から47.7±5.3点,語想起テストは10.4±1.1点から12.3±1.2点へと有意な改善を認め,10単語遅延再生テストは7.3±0.8から7.4±1.2と有意差は認めなかった。


【結論】地域在住高齢者を対象とした短期間低頻度の教室において,開催回数が8回より10回の方が複数の認知機能項目に改善を認めた。本研究結果から週1回という低頻度の教室を開催する場合は,少なくとも10回の開催が認知機能の改善に望ましいことが示唆された。