[P-YB-20-3] 高齢者における歩行能力および転倒リスクの検討
二重課題下でのFrail CS-10と10m歩行を用いて
Keywords:二重課題, Frail CS-10, 転倒リスク
【目的】
簡易的な運動機能テストである虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(Frail CS-10)は,歩行速度と有意に関連している(村田ら2010)。このFrail CS-10は,10秒間に椅子から何回立ち上がりを繰り返すことができるかを評価するもので,時間や場所の制限が少なく特別な機器を必要としない。また,このFrail CS-10は,転倒リスクの評価にも有用である(岩瀬ら2014)。さらに,我々もFrailCS-10の回数が3回以下で転倒回数が多くなったことを報告した(石田ら2016)。
近年は,歩行能力の評価に二重課題を用いた(歩行しながら認知課題を課す)研究が散見される。そこで今回は,このFrail CS-10に認知課題を課した二重課題下でのFrail CS-10(DT Frail CS-10)を用いて歩行能力と転倒リスクの検討をした。
【方法】
対象は,2015年3月から9月までの7ヵ月間に当院に入院していた,病棟内自立歩行(杖または独歩)の65歳以上の患者50名(男性18名,女性32名,平均年齢75.3±7.4歳,運動器疾患25名,脳血管疾患25名)であった。
評価項目はDT Frail CS-10,10m歩行,年齢,性別,疾患別,転倒歴(過去2年間の転倒回数)とした。今回の二重課題は,Frail CS-10(運動課題)を実施しながら100-2の減算(認知課題)を行うこととした。なお10m歩行は,自由歩行で計測した。
分析方法は,DT FrailCS-10と10mとの相関関係を調べた。中央値(74.0歳)より年齢が低い群と高い群とに対象者を2群に分類し,DT FrailCS-10と10m歩行との関係を比較した。また,過去2年間に転倒した転倒群と非転倒群の2群(転倒群は26名,非転倒群は24名)に分類し,DT FrailCS-10と10m歩行を比較した。さらに,DT FrailCS-10を中央値(3回)より低い群(2回以下)と高い群(3回以上)とに分け,比較検討をおこなった。
統計処理は,相関関係にスピアマンの順位相関係数,有意差検定にマン・ホイットニーのU検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
DT FrailCS-10と10m歩行とは,有意な相関関係を認めた(rs=-0.394,P=0.006)。
DT FrailCS-10は,年齢が低い群が高い群より回数が有意に多かった(P=0.004)。
DT FrailCS-10は,非転倒群が転倒群より回数が有意に多かった(P=0.029)。
DT FrailCS-10は,中央値より低い群(2回以下)が高い群(3回以上)より対象者の転倒回数が有意に多かった(P=0.035)。
【結論】
今回の研究で,DT FrailCS-10が歩行能力と関連性があり,また転倒リスクとも関連性があることがわかった。さらに,DT Frail CS-10が2回以下で対象者の転倒回数が多くなった。これは,高齢者で病棟内自立歩行レベルであったとしても,DT Frail CS-10が2回以下であれば転倒リスクが高くなると予測される。
これらの結果より,二重課題下でのFrail CS-10は,運動機能面と認知機能面から簡易的に歩行能力の評価ができ,今後転倒リスクの評価の一つとして利用出来ると考える。
簡易的な運動機能テストである虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(Frail CS-10)は,歩行速度と有意に関連している(村田ら2010)。このFrail CS-10は,10秒間に椅子から何回立ち上がりを繰り返すことができるかを評価するもので,時間や場所の制限が少なく特別な機器を必要としない。また,このFrail CS-10は,転倒リスクの評価にも有用である(岩瀬ら2014)。さらに,我々もFrailCS-10の回数が3回以下で転倒回数が多くなったことを報告した(石田ら2016)。
近年は,歩行能力の評価に二重課題を用いた(歩行しながら認知課題を課す)研究が散見される。そこで今回は,このFrail CS-10に認知課題を課した二重課題下でのFrail CS-10(DT Frail CS-10)を用いて歩行能力と転倒リスクの検討をした。
【方法】
対象は,2015年3月から9月までの7ヵ月間に当院に入院していた,病棟内自立歩行(杖または独歩)の65歳以上の患者50名(男性18名,女性32名,平均年齢75.3±7.4歳,運動器疾患25名,脳血管疾患25名)であった。
評価項目はDT Frail CS-10,10m歩行,年齢,性別,疾患別,転倒歴(過去2年間の転倒回数)とした。今回の二重課題は,Frail CS-10(運動課題)を実施しながら100-2の減算(認知課題)を行うこととした。なお10m歩行は,自由歩行で計測した。
分析方法は,DT FrailCS-10と10mとの相関関係を調べた。中央値(74.0歳)より年齢が低い群と高い群とに対象者を2群に分類し,DT FrailCS-10と10m歩行との関係を比較した。また,過去2年間に転倒した転倒群と非転倒群の2群(転倒群は26名,非転倒群は24名)に分類し,DT FrailCS-10と10m歩行を比較した。さらに,DT FrailCS-10を中央値(3回)より低い群(2回以下)と高い群(3回以上)とに分け,比較検討をおこなった。
統計処理は,相関関係にスピアマンの順位相関係数,有意差検定にマン・ホイットニーのU検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
DT FrailCS-10と10m歩行とは,有意な相関関係を認めた(rs=-0.394,P=0.006)。
DT FrailCS-10は,年齢が低い群が高い群より回数が有意に多かった(P=0.004)。
DT FrailCS-10は,非転倒群が転倒群より回数が有意に多かった(P=0.029)。
DT FrailCS-10は,中央値より低い群(2回以下)が高い群(3回以上)より対象者の転倒回数が有意に多かった(P=0.035)。
【結論】
今回の研究で,DT FrailCS-10が歩行能力と関連性があり,また転倒リスクとも関連性があることがわかった。さらに,DT Frail CS-10が2回以下で対象者の転倒回数が多くなった。これは,高齢者で病棟内自立歩行レベルであったとしても,DT Frail CS-10が2回以下であれば転倒リスクが高くなると予測される。
これらの結果より,二重課題下でのFrail CS-10は,運動機能面と認知機能面から簡易的に歩行能力の評価ができ,今後転倒リスクの評価の一つとして利用出来ると考える。