[P-YB-20-4] 認知症患者における運動シミュレーション,運動イメージ能力がADLに及ぼす影響
Keywords:認知症, 運動イメージ, ADL
【はじめに,目的】運動イメージ評価のひとつにimagined Time Up and Go test(iTUG)を使用する方法がある。iTUGは,TUGを実施した後に,心的にTUGをイメージさせた際に要した時間と実際のTUG時間との一致率をdelta TUGと表して運動イメージ能力の指標とするものである。先行研究では,健常高齢者のdelta TUGと歩行速度,日常生活遂行度が関連すること,また認知症患者のdelta TUGは低下しないことが報告されている。これまで認知症患者のADLにはバランス能力や実行機能が関連することが示されているが,delta TUGとADLの関係は明らかになっていない。そこで本研究では,認知症患者のdelta TUGとADLとの関連性,さらにTUG実施前に心的にイメージさせるsimulated TUG(sTUG)も併せて測定し,検討した。
【方法】対象は当院に入院中の高齢者42名。認知症診断の有無,Mini Mental State Examination(MMSE)のカットオフ値(23/24点)を基準に,認知症あり群18名(平均年齢83.9±6.1歳,MMSE 21.8±6.1点),認知症なし群24名(平均年齢80.4±8.0歳,MMSE 28.1±1.4点)に分けた。認知機能評価として,MMSEに加え,Frontal Assessment Battery(FAB),Trail Making Test(TMT),ADL評価はFIMを実施した。次にTUG実施前にTUGをイメージしてもらい,その所要時間をsTUGとした。さらにTUG実施後に再度TUGをイメージした時間をiTUGとし,sTUG,iTUG各々について実際のTUGとの一致度をBeauchet(2010)の方法にならい,gamma TUG(運動シミュレーションの指標),delta TUG(運動イメージの指標)として算出した。除外基準は,急性疼痛を有する,TMTが遂行できない,実験の趣旨が理解できない場合とした。結果の解析は,男女比にはカイ二乗検定,その他すべての測定項目については,対応のないt検定を用いて2群間で比較した。次にADLの関連因子を調べるためにFIMと各測定項目との相関分析をピアソンの積率相関係数を用いて行なった。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】2群間で年齢,男女比に有意差はなかった。認知症あり群では認知機能(MMSE,FAB,TMT),運動シミュレーション(gamma TUG),FIMが有意に低下していた(p<0.05)が,TUG,運動イメージ(delta TUG)に有意差はなかった。FIMと有意な相関を示した項目はMMSE(r=0.65),FAB(r=0.48),gamma TUG(r=-0.59),delta TUG(r=-0.60)だった(いずれもp<0.05)。
【結論】認知症あり群は認知症なし群と比較して,認知機能,FIM,さらに運動シミュレーション能力が低下していたが,TUGと運動イメージ能力では差がなかった。また今回の対象者では,運動機能はADLと関連はなかったが,代表的な認知機能の他に,運動シミュレーションと運動イメージ能力といった行為を実行,修正するために重要な認知機能がADLと関連することが明らかになった。
【方法】対象は当院に入院中の高齢者42名。認知症診断の有無,Mini Mental State Examination(MMSE)のカットオフ値(23/24点)を基準に,認知症あり群18名(平均年齢83.9±6.1歳,MMSE 21.8±6.1点),認知症なし群24名(平均年齢80.4±8.0歳,MMSE 28.1±1.4点)に分けた。認知機能評価として,MMSEに加え,Frontal Assessment Battery(FAB),Trail Making Test(TMT),ADL評価はFIMを実施した。次にTUG実施前にTUGをイメージしてもらい,その所要時間をsTUGとした。さらにTUG実施後に再度TUGをイメージした時間をiTUGとし,sTUG,iTUG各々について実際のTUGとの一致度をBeauchet(2010)の方法にならい,gamma TUG(運動シミュレーションの指標),delta TUG(運動イメージの指標)として算出した。除外基準は,急性疼痛を有する,TMTが遂行できない,実験の趣旨が理解できない場合とした。結果の解析は,男女比にはカイ二乗検定,その他すべての測定項目については,対応のないt検定を用いて2群間で比較した。次にADLの関連因子を調べるためにFIMと各測定項目との相関分析をピアソンの積率相関係数を用いて行なった。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】2群間で年齢,男女比に有意差はなかった。認知症あり群では認知機能(MMSE,FAB,TMT),運動シミュレーション(gamma TUG),FIMが有意に低下していた(p<0.05)が,TUG,運動イメージ(delta TUG)に有意差はなかった。FIMと有意な相関を示した項目はMMSE(r=0.65),FAB(r=0.48),gamma TUG(r=-0.59),delta TUG(r=-0.60)だった(いずれもp<0.05)。
【結論】認知症あり群は認知症なし群と比較して,認知機能,FIM,さらに運動シミュレーション能力が低下していたが,TUGと運動イメージ能力では差がなかった。また今回の対象者では,運動機能はADLと関連はなかったが,代表的な認知機能の他に,運動シミュレーションと運動イメージ能力といった行為を実行,修正するために重要な認知機能がADLと関連することが明らかになった。