[P-YB-21-1] 褥婦903名の産後及び1ヶ月健診時遷延する妊娠期マイナートラブルの実態調査とその関連要因の分析
キーワード:産後, 骨盤輪不安定症, 骨盤底機能不全
【はじめに,目的】妊娠・分娩により腰痛・骨盤痛をはじめとする骨盤輪不安定症や排泄障害といったマイナートラブルを生じる褥婦は多い。これら骨盤輪不安定症に焦点を当てた研究(Norenら;2002,Ostgaardら;1997)や尿失禁に焦点を当てた妊娠期・産褥期の研究(Torrisiら;2012)は散見されるが,同一対象者における両者の関連を分析した報告は少ない。我々は第75回公衆衛生学会において褥婦の75.7%が産後マイナートラブルを抱える現状が明らかにし,更に,妊娠期マイナートラブルのある者はない者より産後マイナートラブルが3倍も多いことを報告した。しかしここでは妊娠期マイナートラブルの内訳を言及するには至らなかった。本研究の目的は,産後マイナートラブルに関連する妊娠期マイナートラブルの詳細を明らかにし,遷延するマイナートラブル予防・改善のための疫学的知見を得ることである。
【方法】対象者は産科医院において2014年11月から2016年3月末までに分娩した褥婦903名であった。1ヶ月健診時に自記式質問紙調査を実施し,妊娠中,産後,および1ヶ月健診時のマイナートラブルの有無を調査した。ここでいうマイナートラブルとは腰痛,恥骨痛,殿部・骨盤痛,尾骨痛,頸部・肩の凝り,尿失禁,ガス失禁,便失禁,便秘である。1ヶ月健診時まで遷延する産後マイナートラブルの有無を従属変数,妊娠期のマイナートラブルそれぞれの有無を独立変数,年齢,胎児体重を調整変数として多重ロジスティック回帰分析(尤度比による変数増加法)を行った。
【結果】対象者の平均年齢±SDは31.6±4.4歳,出産歴は第1子が49.1%で平均分娩週数は39週,自然分娩が62.7%を占め平均分娩時間±SDは9.2±7.2時間,子の平均出生体重±SDは3083.3±374.4gであった。妊娠中に腰痛・骨盤帯疼痛と何らかの骨盤底機能不全が併存した割合は42.0%,骨盤帯疼痛のみが30.0%,骨盤底機能不全のみは13.5%であった。1ヶ月健診時まで遷延する産後マイナートラブルの有無に関連が示唆される変数は,妊娠中の腰痛(OR0.61,95%CI 0.46-0.81,p<0.01),恥骨痛(OR0.61,95%CI 0.44-0.84,p<0.01),殿部・骨盤痛(OR0.40,95%CI 0.27-0.59,p<0.01),頸部・肩の凝り(OR0.29,95%CI 0.20-0.42,p<0.01),便秘(OR0.71 95%CI 0.52-0.95 p<0.05)で,尾骨痛,尿失禁,ガス失禁,便失禁は残らなかった。これによる判別的中率は66.5%であった。
【結論】1ヶ月健診時まで遷延する産後マイナートラブルの要因として,妊娠中の頸部・肩の凝り,便秘と,腰痛,恥骨痛,殿部・骨盤痛といった骨盤輪不安定症の関連が明らかとなった。これらは総じて運動器の症候と捉えることもできる。今後医師,助産師との連携の元,理学療法士が妊娠期からマイナートラブルの評価を行い,これらの症候を呈する症例に早期介入を行うことで,産後及び1ヶ月健診時まで遷延する褥婦のマイナートラブルを予防できる可能性が示唆された。
【方法】対象者は産科医院において2014年11月から2016年3月末までに分娩した褥婦903名であった。1ヶ月健診時に自記式質問紙調査を実施し,妊娠中,産後,および1ヶ月健診時のマイナートラブルの有無を調査した。ここでいうマイナートラブルとは腰痛,恥骨痛,殿部・骨盤痛,尾骨痛,頸部・肩の凝り,尿失禁,ガス失禁,便失禁,便秘である。1ヶ月健診時まで遷延する産後マイナートラブルの有無を従属変数,妊娠期のマイナートラブルそれぞれの有無を独立変数,年齢,胎児体重を調整変数として多重ロジスティック回帰分析(尤度比による変数増加法)を行った。
【結果】対象者の平均年齢±SDは31.6±4.4歳,出産歴は第1子が49.1%で平均分娩週数は39週,自然分娩が62.7%を占め平均分娩時間±SDは9.2±7.2時間,子の平均出生体重±SDは3083.3±374.4gであった。妊娠中に腰痛・骨盤帯疼痛と何らかの骨盤底機能不全が併存した割合は42.0%,骨盤帯疼痛のみが30.0%,骨盤底機能不全のみは13.5%であった。1ヶ月健診時まで遷延する産後マイナートラブルの有無に関連が示唆される変数は,妊娠中の腰痛(OR0.61,95%CI 0.46-0.81,p<0.01),恥骨痛(OR0.61,95%CI 0.44-0.84,p<0.01),殿部・骨盤痛(OR0.40,95%CI 0.27-0.59,p<0.01),頸部・肩の凝り(OR0.29,95%CI 0.20-0.42,p<0.01),便秘(OR0.71 95%CI 0.52-0.95 p<0.05)で,尾骨痛,尿失禁,ガス失禁,便失禁は残らなかった。これによる判別的中率は66.5%であった。
【結論】1ヶ月健診時まで遷延する産後マイナートラブルの要因として,妊娠中の頸部・肩の凝り,便秘と,腰痛,恥骨痛,殿部・骨盤痛といった骨盤輪不安定症の関連が明らかとなった。これらは総じて運動器の症候と捉えることもできる。今後医師,助産師との連携の元,理学療法士が妊娠期からマイナートラブルの評価を行い,これらの症候を呈する症例に早期介入を行うことで,産後及び1ヶ月健診時まで遷延する褥婦のマイナートラブルを予防できる可能性が示唆された。