The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-22] ポスター(予防)P22

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-22-1] 転倒回避ステップのバランス回復能力と下肢筋力およびRFDとの関係

越智 亮, 大澤 竜也, 杉山 友斗, 中村 翔太 (星城大学リハビリテーション学部)

Keywords:ステップ, バランス回復, Rate of force development

【はじめに,目的】

つまずき等のきっかけ後,下肢を大きく踏み出すこと(以下,ステップ)で転倒を回避することができる。バランス喪失からステップで回復するには,下肢を素早く踏み出すために,最大筋力のみならず,適切なタイミングに素早く関節モーメントを産出する能力も必要となる。これまでバランス回復能力と下肢筋力の関係は明らかにされているが,RFDとの関係については検討されておらず,不明なままである。本研究の目的は,Tether-Release法で評価されるバランス回復能力と,下肢筋群の最大筋力およびRFDとの関連性を,若年者を対象に検証することである。


【方法】

対象は健常若年者40名(男性20名,女性20名,年齢20~22歳,平均身長163.6cm,平均体重57.5kgとした。MMTの方法で股屈曲・伸展,膝屈曲・伸展,足背屈・底屈の等尺性最大筋力を発揮させ,トルクカーブを計測した。足底屈のみMMTとは異なる方法を用い,股屈曲90°長座位で足底にロードセルを設置した。3回計測し,トルクカーブのピークが最大のものをデータとした。トルクカーブは10msの移動平均法で平滑化し,ピークを最大筋力(Nm/kg)とした。さらに,筋力発揮開始からピークまで10ms毎のトルク上昇量(傾き)を算出し,その中の最大値をinstantaneous Rate of Force Development(以下,iRFD)とした。ステップ誘発は,被験者に牽引ケーブルで背部を牽引した状態で身体を前傾させ,検査者が牽引を解放した後にステップさせる方法とした。初期身体前傾角度(床からの垂直軸と,肩峰―腓骨外果を結んだ線のなす角)を徐々に大きくしていき,一歩のバランス回復に失敗した一段階前の身体前傾角度をバランス回復能力とした。バランス回復能力を目的変数,下肢の各最大筋力およびiRFDを説明変数とし,ステップワイズによる重回帰分析を行った。サブ解析としてバランス回復能力が最も高い者から第1四分位までの10名を高能力群,第3四分位から最低値までの10名を低能力群として,各最大筋力,iRFDの群間比較を行った。


【結果】

バランス回復能力に関連のある因子として抽出されたのは股屈曲筋力のみであった(標準化偏回帰係数0.577,p<0.01,自由度調整済み決定係数0.315)。高能力群と低能力群のバランス回復能力はそれぞれ37.9±2.5°と26.8±1.9°で,両群の男性数は8名と3名であった。高能力群と低能力群で有意差を認めたものは股屈曲筋力(3.2±0.6 Nm/kgと2.5±0.4 Nm/kg,p<0.01),股伸展iRFD(735±276 Nm/sと503±185 Nm/s,p<0.05),足底屈iRFD(577±213 Nm/sと377±198 Nm/s,p<0.05)で,いずれも高能力群が高値であった。


【結論】

より大きく身体が傾斜した状態から素早くステップでバランス回復するために,股屈曲筋力が大きな役割を持つ。バランス回復能力を向上させるために,最大筋力だけでなく,股伸展と足底屈の筋力を素早く産出する能力も必要であることが示唆された。