[P-YB-22-5] 高齢者の脊柱後彎変形による下肢筋力とADLとの関連
キーワード:円背, 下肢筋力, 高齢者
【はじめに,目的】
脊柱後彎変形は代表的な加齢変化の一つであり,安藤は疫学調査を行った結果,高齢者の61%に脊柱後彎姿勢を認めたと報告している。臨床において脊柱後彎変形を呈し,起立・歩行動作やADL能力が低下している症例を散見する。脊柱後彎変形を呈したものは体幹の動きを制限し起立・歩行動作に影響していると考え,本研究は脊柱後彎と起立・歩行動作,ADLとの関連を調査することを目的とした。
【方法】
対象は当園利用者の32名(男性18名,女性14名,平均年齢85.06歳±7.71)とし,中枢神経疾患を有するものは除外した。評価項目は脊柱後彎,等尺性膝伸展筋力,歩行速度,5回起立テスト,ADLの計5項目とした。脊柱後彎の評価はMilneの円背指数(kyphosis index:以下KI)を算出し,KI13未満を非円背群(n=15),KI13以上を円背群(n=17)と分類した。等尺性膝伸展筋力はHand Held Dynamometerを用いて左右各2回測定し最大値を採用したものをトルク体重比に換算し,左右両側平均値(Nm/kg)とした。歩行速度は助走区間を前後2mに設けた10m歩行を最大歩行速度で2回測定し,最大値を歩行速度(m/sec)に換算し,ADLはFIMの運動項目のスコアを算出した。分析は各評価項目間の相関関係についてはSpearmanの順位相関係数を用い,円背群と非円背群の各評価項目における差の検定にはMann-Whitney検定を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
Spearmanの順位相関の結果KIは各評価項目と相関を認めなかった。歩行速度は浴槽移乗を除くADL項目に相関を認め,5回起立テストは各ADL項目と相関を認めた。その他項目で有意な相関は認めなかった。Mann-Whitney検定による円背群と非円背群の比較では各評価項目に有意差を認めなかった。
【結論】
歩行速度や5回起立テストといった下肢機能のパフォーマンスがADL自立において重要であり,今回着目した脊柱後彎に関しては起立・歩行動作やADLに対する直接的な影響は少なく下肢の筋力低下の方が阻害要因となりやすいと示唆された。しかし脊柱後彎変形と動作に関する報告もあり,黒川は歩行時の円背姿勢が骨盤後傾を有意に増大させ,立脚後期に重心が立脚側後方へ偏位した状態となり股関節外転モーメントが減少し,歩行のエネルギー効率を悪化させると報告している。このことから脊柱後彎変形を有するものに対する治療として下肢筋力の評価と筋力増強を図ることが重要であるが,脊柱後彎変形による立位や歩行への影響を理解した上で介入を図る事がADL自立にあたり重要と考える。
脊柱後彎変形は代表的な加齢変化の一つであり,安藤は疫学調査を行った結果,高齢者の61%に脊柱後彎姿勢を認めたと報告している。臨床において脊柱後彎変形を呈し,起立・歩行動作やADL能力が低下している症例を散見する。脊柱後彎変形を呈したものは体幹の動きを制限し起立・歩行動作に影響していると考え,本研究は脊柱後彎と起立・歩行動作,ADLとの関連を調査することを目的とした。
【方法】
対象は当園利用者の32名(男性18名,女性14名,平均年齢85.06歳±7.71)とし,中枢神経疾患を有するものは除外した。評価項目は脊柱後彎,等尺性膝伸展筋力,歩行速度,5回起立テスト,ADLの計5項目とした。脊柱後彎の評価はMilneの円背指数(kyphosis index:以下KI)を算出し,KI13未満を非円背群(n=15),KI13以上を円背群(n=17)と分類した。等尺性膝伸展筋力はHand Held Dynamometerを用いて左右各2回測定し最大値を採用したものをトルク体重比に換算し,左右両側平均値(Nm/kg)とした。歩行速度は助走区間を前後2mに設けた10m歩行を最大歩行速度で2回測定し,最大値を歩行速度(m/sec)に換算し,ADLはFIMの運動項目のスコアを算出した。分析は各評価項目間の相関関係についてはSpearmanの順位相関係数を用い,円背群と非円背群の各評価項目における差の検定にはMann-Whitney検定を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
Spearmanの順位相関の結果KIは各評価項目と相関を認めなかった。歩行速度は浴槽移乗を除くADL項目に相関を認め,5回起立テストは各ADL項目と相関を認めた。その他項目で有意な相関は認めなかった。Mann-Whitney検定による円背群と非円背群の比較では各評価項目に有意差を認めなかった。
【結論】
歩行速度や5回起立テストといった下肢機能のパフォーマンスがADL自立において重要であり,今回着目した脊柱後彎に関しては起立・歩行動作やADLに対する直接的な影響は少なく下肢の筋力低下の方が阻害要因となりやすいと示唆された。しかし脊柱後彎変形と動作に関する報告もあり,黒川は歩行時の円背姿勢が骨盤後傾を有意に増大させ,立脚後期に重心が立脚側後方へ偏位した状態となり股関節外転モーメントが減少し,歩行のエネルギー効率を悪化させると報告している。このことから脊柱後彎変形を有するものに対する治療として下肢筋力の評価と筋力増強を図ることが重要であるが,脊柱後彎変形による立位や歩行への影響を理解した上で介入を図る事がADL自立にあたり重要と考える。