The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-23] ポスター(予防)P23

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-23-5] 要支援・要介護高齢者における転倒歴の違いによる歩行の特性

加藤 康太1, 畠中 泰彦2, 齋藤 恒一2 (1.主体会病院, 2.鈴鹿医療科学大学)

Keywords:転倒歴, 歩行, 下肢筋力

【はじめに,目的】

日本における65歳以上の高齢者人口は年々増加傾向にあり,それに伴いなんらかの支援や介護が必要な状態である要支援・要介護高齢者の数も年々増加している。その原因の一つとして転倒やそれによる骨折が挙げられており,転倒を予防することは介護予防において重要な課題である。高齢者の転倒はその約60%が歩行中に発生すると言われているため,高齢者の歩行に焦点を当てた転倒予防が必要である。しかし,転倒と歩行の関係について詳細に調査したものは少なく,具体的な介入方法の検討には至っていない。

そこで本研究は,要支援・要介護高齢者における転倒歴の違いによる歩行の特性について明らかにすることを目的に比較・検討した。



【方法】

対象は,通所リハビリテーション利用者のうち,65歳以上で歩行が自立している者(杖の使用を含む)28名とした(男性11名,女性17名,平均年齢82.9±5.2歳)。

方法は,対象者に過去1年間の転倒歴,歩行の特性,下肢筋力および歩行速度を聴取・測定した。歩行の特性については,ビデオカメラ4台,床反力計1台,および三次元動作解析システムを使用し,1歩行周期中の股関節,膝関節,足関節の関節角度および関節モーメントをそれぞれ算出した。また,下肢筋力については,筋力計を使用し,股関節屈曲・伸展,膝関節伸展,足関節底屈の等尺性筋力をそれぞれ測定した。歩行速度は10m通常歩行速度を測定した。

統計処理は,Mann-WhitneyのU検定を用いて,転倒歴の有無における関節角度,関節モーメント,下肢筋力,および歩行速度の比較を行った。なお,有意水準は5%未満とした。



【結果】

過去1年間に転倒を経験した者(以下,転倒群)は11名,転倒を経験しなかった者(以下,非転倒群)は17名であった。

転倒群と非転倒群を比較した結果,各関節モーメントにおいては有意な差はみられなかったが,転倒群の方が非転倒群よりも弱い傾向であった。下肢筋力においては転倒群の股関節伸展筋力(0.40±0.19kgf/kg)が非転倒群(0.26±0.08kgf/kg)に比べ,有意に高値であり(p<0.05),その他の下肢筋力においても転倒群の方が強い傾向であった。



【結論】

転倒歴の有無における関節角度,関節モーメント,下肢筋力,および歩行速度の比較を行ったところ,ほとんどの項目において有意な差はみられなかった。これは,本研究の対象者が身体機能の似た集団であった可能性が考えられ,本研究の非転倒群においても今後転倒する可能性があると考えられる。

また,関節モーメントは転倒群の方が非転倒群よりも弱い傾向となったが,下肢筋力では転倒群の方が非転倒群よりも強い傾向となった。このことから,本研究の結果は静的な場面における筋力評価だけでなく,動的な場面での筋力評価(動作分析)が転倒の危険性を見分けるために重要であることを示唆していると考えた。