The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-24] ポスター(予防)P24

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-24-3] 介護職員の腰痛回避行動の実施に影響する身体・心理社会的要因の検討

溝口 桂1, 野村 卓生2 (1.JA山口厚生連周東総合病院リハビリテーション科, 2.関西福祉科学大学保健医療学部理学療法学専攻)

Keywords:介護職員, 腰痛回避行動, 腰痛

【はじめに】職場における腰痛の発生には身体的要因のみでなく心理社会的要因が関与するため,腰痛予防を目的とした理学療法介入を検討する上で心理社会的要因にも注目することが必要である。先行研究では,腰痛回避行動の実施には心理社会的要因の一つである「自尊心」の影響などが報告されているが,その他の心理社会的要因に関しての検討は十分でない。我々は過去に介護職員の腰痛回避行動の実施に与える身体的要因,心理社会的要因について横断的に検討したが,対象であった介護職員における腰痛回避行動についての認知・認識度が一定でなかったことなどから明白な結論が得られなかった。本研究では前回の研究での対象を縦断的に調査し,腰痛回避行動の重要性を認識した対象における腰痛回避行動の実施状況から,その行動を実施する身体・心理社会的要因を検討した。


【対象と方法】対象は腰痛予防教室に参加した介護職員94名(年齢44.5±8.6歳)である。対象は過去に我々が実施した腰痛教室で事後調査に同意が得られ,腰痛回避行動について一定の認識が得られた対象である。腰痛予防教室から3か月後に,アンケート調査を行い,腰痛回避行動の実施状況と身体・心理社会的要因を調査した。腰痛回避行動の実施は,姿勢・動作の注意,腰痛予防ベルトの使用,腰痛体操,事前体操と定義し,その実践度を「0」から「10」までの11段階の尺度で評価した。身体的要因はVAS,腰痛歴,腰痛による機能障害(RDQ)を調査した。心理社会的要因はSF-8,心理学的要因として自尊心(SES)と健康統制感(MHLC)を調査した。また,一般事項として,年齢,性別,身長,体重,経験年数を調査した。分析方法は,まず,単変量解析により腰痛回避行動の実施と身体・心理社会的要因,一般事項の関連を検討した。ついで,関連のある変数を選択し,腰痛回避行動の実施を目的変数,身体・心理社会的要因,一般事項を説明変数とした重回帰分析を行った。尚,分散拡大要因(VIF)が2.0以上は多重共線性の問題から説明変数から除外した。統計ソフトはSPSS ver.15.0を使用し,有意水準は5%とした。


【結果】単変量解析の結果,腰痛回行動の実践度と関連のあった項目は経験年数,VAS,SF8の項目「健康状態」,SES,MHLCの下位項目Internal-HLCであった。重回帰分析の結果,腰痛回避行動の実践度に影響を与える要因として第1にIHLC,第2に経験年数が選択され,決定係数R2は0.71となった。


【結論】腰痛と心理学的要因について,これまで様々な研究がなされてきが,多くの研究対象は急性腰痛で受診を必要とした患者レベルのものが多く,腰痛予防として受診前の無症状な人々を対象とした研究は少ない。人は刺激に対する反応だけでなく行動を予測し基準や目標を設定し行動する。この行動のための自己調整能力は腰痛回避行動と関連する事が示唆され方法論的観点以外にも着目して行く事は産業保健分野における一助となる。