第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会企画 » 特別講演

[RS-3] 特別講演 肺がんに対する呼吸理学療法

2017年5月13日(土) 16:50 〜 17:50 A2会場 (幕張メッセ国際会議場 国際会議室)

司会:小川 智也(公立陶生病院中央リハビリテーション部)

日本呼吸理学療法学会企画

[RS-3] 肺がんに対する呼吸理学療法

岡山 太郎 (静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科)

肺がんは,全がん腫の中で最も死亡数が多く,罹患数は大腸がん,胃癌に続く第3位である。年間約113000人が肺癌と診断され,約74000人が死亡している。肺がんは難治癌であり,5年生存率は男性で27%,女性でも半数以下である。診断時,手術適応があるのは,全体の30~40%である。手術適応がなくても,化学放射線治療(非小細胞肺癌 III期)によって根治の可能性はあるものの,IV期症例を含めた内科患者の予後は厳しい。しかし,分子標的薬や免疫治療薬の出現によって進行肺がん患者の予後は劇的に改善されている。

肺がん患者に対する周術期理学療法の目的は,呼吸合併症および退院後の身体活動低下を防ぐことであるが,肺がん術後は早期に退院となってしまうため,自立歩行獲得後,それ以上の運動負荷をかけるべきか否か,どこで終了としたら良いか悩むことは多い。術前運動療法の実施や術当日の歩行練習など新しい試みが散見されるが,先ずは自施設のマンパワーに応じた過不足ない周術期管理体制を整え,その上で特にハイリスク症例に対しては重点的に対応出来るシステムの構築が必要である。

内科症例に対するリハビリは,骨・脳転移で肺癌と診断された所謂“IV期スタート症例”か,治療経過と共に衰弱が進み,PSの改善や退院支援を目的とした依頼が多いと思われる。化学療法継続か緩和治療に専念するのか,脳・骨転移がある場合は,局所に対する治療と安静度はどうなっているか,方針は自宅退院か転院か緩和ケア病棟転科転棟かなど確認すべきことは多い。患者背景,治療内容,方針,病勢などを理解し,心理支持に努めながらその都度目標を設定する必要がある。がんの進行と共に状態悪化を認める場合は,希望を失わない形で運動プログラムを修正し,リスクを回避する力も求められる。

当日は,先行研究や症例を交えながら,外科,内科症例に対する理学療法の在り方,問題点についてフロアの皆様と共に考えたい。