[RS-4-2] 外科周術期症例
外科周術期における理学療法は,呼吸器や心大血管,消化器といった胸腹部外科領域を主たる対象とし,術前から術後までの一連の過程で適用される。外科周術期における理学療法の最大の目的は,術後に生じる新たな合併症の予防,および術前ADLの早期再獲得であり,加えて,術後に低下する身体運動機能や健康関連QOLの回復促進も重要な役割となる。近年では,低侵襲手術や縮小手術の普及など手術手技の進歩,術中・術後の全身管理の発展を背景に,後期高齢患者や術前の全身状態不良患者,多くの併存症を有する患者など,以前では手術適応とならなかった高リスク患者へも適応範囲を拡大している。こうした高リスク患者においては,術後の重篤な合併症の発症,あるいは予測外の身体運動機能およびADL能力の低下が生じ,回復に難渋する症例も少なくなく,理学療法士が果たす役割はより重要となる。そのため,理学療法士は,各患者で異なるリスクを理解し,症例ごとに介入の必要性や実施頻度,プログラム内容を検討する必要がある点が,現在の外科周術期理学療法の特徴と言える。外科周術期における理学療法は,術後回復強化プログラムの中核を担い,最もエビデンスが確立されている早期離床を中心に構成され,必要に応じて排痰手技などの呼吸理学療法の併用あるいは,術前(呼吸法)指導などが推奨されている。また,最近では適応患者の高齢化から,術後経過に影響を及ぼすサルコペニアやフレイルなど高齢者特有の問題が外科周術期においても注目され,これに対する術前の運動療法導入の必要性も提唱されている。本セッションでは,胸腹部外科領域の代表的症例を通じて,外科周術期における理学療法の評価や問題点の抽出,術後理学療法の進め方など,基本的な内容を提示させて頂く予定である。加えて,近年の研究報告を踏まえ,外科周術期における理学療法の今日的意義とそのあり方に関して聴衆の皆様と議論できればと考える。